二章

一節 「絶対的に信じられるものは?」

 絶対と言えるものはなんだろうか。

 誰もが絶対的に信じているものは、親の愛ではないだろうか。

 親は子供を裏切らないと思っている人は多いのではないだろうか。

 僕もそんな風に信じている。

 唯一の無償の愛と呼べるものだと思う。

 僕は一人っ子だ。

 さらにお父さんとお母さんが年を取ってから生まれた子だったから、とても可愛がられ大切にされた。

 僕はその気持ちに応えるために、言うことをしっかり聞いていい子でいることを心掛けていた。

 もちろん反抗期はあったけど、今では親と一緒に出かけたりするのも嫌ではない。

 そんな親ももうすっかり年を取って、少しずつ体も不自由になってきている。

 今度は僕が親の面倒をみたいと思っている。それが今までもらったことへの恩返しだと思っている。

 それが家族のあるべき姿だ。

 僕と親の間には深い絆がある。


 あのあと、彼女を追いかけた。

 今度こそしっかり話を聞きたいと思ったからだ。

「ふーん、じゃあ私の提案を黙って受け入れてくれる?」

 僕の親に対する話を聞いた後で、彼女は楽しそうにそう言った。

 話がかみ合っていない。

 彼女はいつも何かいいことが思いついたようた子供のように話してくる。

 いつの間にか太陽が沈み始めている。

 冬は夜が更けるのが早い。

 夕焼けが赤く町を染め始める。

 町が赤く染まる瞬間が僕は好きだ。

 世界が変わるような気がするから。

「いいですよ。家族の関係が壊れるはずがないですから」

 どんな内容であっても僕はこのことには自信があった。

「じゃあ、今から律の実家にいこうか」

「えっ、なんでですか?」

「黙って受け入れてくれるんでしょ? それから親の前では私の意見に合わせることと何があってもイエスで答えてね」

「提案内容も教えてくれないんですね。まあ、わかりました」

 そうして、僕たちは実家に向かった。

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