二節「必然の出会い」
その瞬間、心が大きく動かされた
運命にも似た感覚を感じた。
何を意味しているか分からないのに、彼女の言葉がすーっつと心の深いところに届いた。
それがなぜだかはわからない。
彼女の声が甘く優しかったからだろうか。
彼女の目がまっすぐできれいだったからだろうか。
僕は彼女と以前どこかで会ったことがあるような錯覚に陥った。
彼女を見つめる。
肩まで伸びた茶色の髪がカールされている。
白い肌が冬を連想させる。
まるで時間が止まっているように感じた。
ただ僕がそう感じていても、時間は実際には止まることなく、しっかり進む。
雪が絶え間なく降っている。
彼女は「またね」とすぐに僕のもとを離れていこうとした。
「ちょっと待ってください、さっきの言葉はどういう意味ですか?」
僕は慌てて、呼び止めた。
なぜそこまで気になったかわからない。
普段の僕ならそんなことはあまり気にしない。
「ふふ、それはまたいつか話すわ。大丈夫、私たちは必ずまた出会うから」
そう言って、彼女は本当に帰っていってしまった。
僕はただ何かもが衝撃的で、追いかけることができなかった。
彼女の後ろ姿を見つめながら、イルミネーションに照らされた雪が素敵だなと感じた。
僕はまた一人になって、考えた。
彼女のいたところは月明かりに照らされていた。
空を見上げ、今日は月がきれいだなと今さらそんなことを思った。
彼女のことが気になって仕方なかった。
猫のようなくりっとした目、すっと整った小さな鼻、幼さの感じるピンクの唇。
控えめに化粧もしていた。
ピンクのニットの服を着て、グレーのミニスカートを履いていた。
彼女の姿を鮮明に思い出すことができた。
そして、なぜだろう、彼女のことを思い出すと心が暖かくなった。
そして彼女は何のために僕の前に現れたのだろう。
そもそも僕が人に興味を持つこと自体が珍しいことだ。
人は嫌いじゃないのに、なぜか興味を持てなかった。
だからいつの間にか他人とは、関わらないように生きてきた。
人との距離感がわからなくて、他人の気持ちがわからなくて今まで失敗ばかりしてきた。
だから、それが僕にとって生きやすい生き方だった。
それなのに、また彼女と会えるかななんて考えている自分がいる。
降り続ける雪を見上げる。
この雪は一体どこから来て、どこに行くのだろうか。
僕を雪だという彼女。
ならば、彼女は一体何だろうか。
そんなロマンチックなことを考えながら僕は家に帰っていった。
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