第23話 新ルール?!

 改めて食堂で他の三人に対しても挨拶をすることになった桃華は、やや緊張しながら席に着いた。

 「村田桃華です!主にはお掃除なんかを担当させてもらいます!あとは、お兄ちゃんのお嫁さん候補もきっちり見させてもらいたいなーとか思ってますよろしくお願いします!」

 桃華の自己紹介を、三人はニコニコしながら聞いてくれたことにユウスケは安堵しつつ、桃華を肘で小突いた。

 「おい、最後の一言は余計だろ!」

 小声で言うユウスケを、からかうように桃華は舌を出して笑った。

 「よろしくね、桃華さん。」

 まず挨拶をしたのはやはりさくらだった。それにみみが、

 「よろしくおねがいしまーす!」

 と元気のよい挨拶を続け、最後に円花が

 「よろしくね。」

 とほほ笑んだ。

 どうやら、昨日ユウスケと話をできたことで大分気持ちが落ち着いたらしく、円花の雰囲気はかなり柔らかくなっていた。思うところはあるものの、他の人たちを敵だとみなすのはやめたようだった。

 「さて、みなさんお揃いのようですから、今後のお話をしましょうか。」

 急にふって湧いて出たのは、早乙女である。この早乙女は、いつもどこからか現れてくる。

 「先週は三人をローテーションしていった形でしたが、いかがでしょうか。」

 早乙女の言葉に、

 「二人で話ができるのは、やはり距離が縮まってよかったわ。」

 とさくらが答えた。

 さくらの言葉に、残りの二人も頷く。

 「なるほど。では、一人ずつとの対面形式は継続する方向で。あとは、残りの四日間ですが、そろそろ皆さん学校も始まることとは思いますし、どういたしましょうか。」

 早乙女の言葉に、ユウスケはドキリとする。ユウスケは、浪人生の身であり、残念なことに学校は始まらないのである。そのことは、まだ三人には打ち明けることができずにいた。

 「えっ、お兄ちゃん学校ないでしょ?」

 そのことを知らずにか、桃華が悪気のなさそうな声を上げる。おい桃華、と突っ込みたくなるが何とか抑える。

 「ああ、その件については、後程またお話し合いをしましょう。」

 オブラートに包んでくれる早乙女に、ユウスケは頭が上がらなかった。三人は不思議そうな顔をしている。

 「そして、残りの四日間についてですが、順位別に割り振る、というのはどうでしょう?」

 早乙女の提案に、場が少し凍り付いたのをユウスケは感じた。

 早乙女は、今はっきりと順位、という言葉を口にした。つまり、この三人のうちのランキングを明確につけろ、ということだった。

 「平日に一緒にお過ごしする、というのも双方ご都合もあるでしょうし、長い時間、というわけにはいきません。取れて夕食の時間くらいになることもあるかと思います。そういった短い時間でも友好的に使うのであれば、可能性の高い方に長い時間を充て、早く決めていただくというのがこちらとしても助かります。」

 ビジネスライクな言い方だが、言っている内容は確かに筋は通っている。

 「村田様も一人で考える時間も必要でしょうから、一位の方は二日分、二位の方は一日分、三位の方はその週はなし、というふうにしましょう。異論のある方、いらっしゃいますか?」

 手を挙げたのは、円花だった。

 「それ、私が不利ですよね…?」

 これまでの態度からして、円花が不利であろうことは一目瞭然だった。本人もそれを自覚して、また、危惧しているようだった。

 「それは、村田様がお決めになることですから何とも。」

 「毎週その順位が変わるチャンスはあるってことよね?」

 口をはさんだのはさくらだ。

 「それはもちろんそうです。毎週最低一日は一緒に過ごす権利というのは保証されます。日曜日の夜にわたくしの方に暫定順位を送信していただき、翌週のスケジュールを発表する、という形です。」

 「自分の立ち位置も分かるし、悪い話じゃないでしょ。」

 そう言ったのは桃華だ。

 こいつはまた、余計なことを…と言いたいところだが、この件に関してユウスケが口をはさむのは憚られてしまう。

 「では、これでいって大丈夫ですか?」

 早乙女の言葉に、抗議する者はいなかった。

「今週分は、後程送信してくださいね。」

 少し気の重いユウスケは、小さくうなずくので精いっぱいだった。

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