第19話 海岸での対話(2)
「政治的な偉人…?」
ユウスケはいまいち話が呑み込めず、円花の方を眉をひそめながら見つめた。
「そう。SSランクの人にあったこと、ある?」
円花はユウスケにそう問いかけた。もちろん、ユウスケにはなかったので、ユウスケは首を横にフルフルと振った。
「私、数人知っているんだけれど。いずれも、世界的に有名なデザイナーだとか、音楽家なんかのアーティストの人が多いの。つまり、SSランクやSランクの人は、文学的だったり芸術的だったりに優れている人が多いのよ。」
「なるほど…。」
前世が、というわりに自分やほかの選ばれた四人の共通点が見つからなかったのはSSSランクであったからこそらしい。
「政治の才能なんてわからないでしょ。ただ人を惹きつけるカリスマ性でもないし、学歴がいいからと言ってうまいとは限らない。だから私たちのランクはきっと現世で見て取れるような特徴がないのね。」
淡々としゃべる円花の言葉に、ユウスケは納得しっぱなしだった。
「これで、政府がSSSランクだけを優遇し、これからの国を立て直していくのに利用しようとしているのが分からない?」
利用しようとしている、という棘のある言い方を円花はした。つまり、彼女は利用されるのを良しとしていないのだ。
「なんとなく、事情は分かるよ。」
ユウスケはついていくのに必死の頭を何とか整理しながら言葉を絞り出した。衝撃的な事実に、指先の感覚はなくなっていた。
「本当に、腐っているわ。」
怒ったかのように円花は言った。
「でも、それならこの選別に参加しないという手もあったんじゃないの…。」
ユウスケは思わず口にしていた。非難する、という意味合いではなく、ただ、無理をしなくてもいいのに、という心配の念から出た言葉だった。
「そうね。でも、私にはこれに参加しなければならない理由があるの。」
「それは教えてくれないの?」
ユウスケの言葉に、円花はうつむいた。長い髪が顔にかかり、どのような表情をしているのかは見えない。
「…。妹さん、Fランクって言ったわよね。Fランクはどういう人たちなのか、予想できる?」
もし、SSSランクが政治的に優れた人たちの集まりなのだとしたら、とユウスケは思いを巡らせる。
ただの罪人なのか?それとも、大量殺人鬼?いや、違うだろう。国が、政治を行う上で最も邪魔な存在…。
「反逆者のリーダー、とか…。」
「大正解。SSSランクについては私の予想も大きいけど、Fランクはそれで正解で間違いないわ。」
風に吹かれて一瞬見えた円花の顔は、とてもさみしそうだった。なぜ彼女がそのような顔をするのか、ユウスケはうすうす気が付いていた。
「ここまで言ったらもう全部話すべきよね。」
円花は一息ついてから、自分に起こったすべてのことを、ゆっくりとかみしめるように話してくれたのだった。
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