第13話 小学生との遊園地デート?!
ロケ以外で遊園地に行ったことが無いと言うみみを遊園地に連れて行くことになったユウスケは、しかし、自分も遊園地に友達と言ったことなどないことに遊園地に到着してから気が付いたのだった。
そもそも遊園地に最後に訪れたのは、家族で訪れた小学生のころ以来だろう。
いったいどうみみをリードしてよいのか、ユウスケは悩ましく考えていた。
「みみ、ずっと乗ってみたかったものがあるの。」
そう言ってみみが最初に指さしたのは、パンダの乗り物だった。パンダの背に乗り、ハンドルでパンダを操作するだけのその乗り物にみみは乗りたいのだという。
「ジェットコースターとか、メリーゴーランドもあるけど…。」
そんな地味な乗り物でいいのか、不安な気持ちでユウスケはみみにそう尋ねた。
「ううん、いいの。ロケでは、そういう派手なのに乗るんだけどね、こういうのは乗れないからずっとこのパンダの背中気になってたの。」
パンダにまたがるみみを見ながら、それならいいけど…とユウスケはもう一度そのパンダが並んでいる広場を見る。
パンダにウサギ、イヌ、ゾウなどの背中に乗れるらしいその広場はほとんど人がおらず、不人気であるようだった。
「ほら早く!ユウスケはウサギだからね!」
強引にみみに腕を引っ張られたユウスケはやれやれ、と観念してウサギにまたがった。
そしてこれが、猛烈に恥ずかしい。
というのも、周囲はみんな小学生やそれ以下の子供たちだけで、いい歳こいてこんなウサギにまたがっている奴は一人もいないからだ。
通りかかった女子高生が、「うっわあの人ウサギさん乗ってるじゃん。」とくすくすと笑う声が聞こえてこの場から消えてなくなりたい気持ちでいっぱいだった。
「ほらもっと楽しまないと!」
パンダが動くたびにわあ、きゃあと声を上げるみみは頬を紅潮させながら言った。昨日の夜見せた悲しそうな顔とは別人のように子供らしいかわいらしい笑顔だ。
「そんなこと言われても…恥ずかしいじゃん!」
ユウスケはそう言いつつも、ウサギをうまく操作しており、誰よりも早く広場を回っていた。
「そんなこと言ってぐるぐる回るのうますぎるよ!」
みみもそう言って笑う。ユウスケもつられて楽しい気分になり、二人のパンダとウサギでの追いかけっこはしばらく続いたのだった。
その後もコーヒーカップや遊園地内のゲームセンターなど、みみは王道の遊園地コースとは外れたところばかり回りたがった。
「すごい、UFOキャッチャーなんてしたことない!ユウスケ、なんでそんなにとるの上手なの?!」
リクエストされた品物をすべて仕留めていくユウスケに、みみは感嘆の声を上げた。
「んー…それは中学の頃何もすることなくてゲーセンで一人に入り浸ってたから…。」
音ゲーに先客がいたときにUFOキャッチャーで時間をつぶしていた日々をユウスケは苦笑いしながら思い出した。
「すごいすごい、みみは一個もとれないのに。」
少し不貞腐れたようにみみは言った。
交互にUFOキャッチャーを操作していたが、みみの番にぬいぐるみが下に落ちてきたことはまだなかった。
「あのパンダさんほしいのになあ。」
みみは残念そうにパンダのぬいぐるみを見つめた。先ほどみみが乗っていたパンダに少し似ている。
「…よし、一緒に獲るか。」
ユウスケはみみの後ろへ移動し、同じ目線から指示を出すことにした。ただし、操作するのはみみだ。
「うん!まずは横にずらすでしょー?」
すぐさま操作を始めようとするみみの手をユウスケは慌てて止める。
「うん。その前に、アームをよく見るんだ。よく見ると、左右対称じゃないのが分かるだろ?」
ユウスケの言葉に、みみは真剣にアームを見つめる。
「ほんとだ。左の方がちょっと内側によってる。」
「そう、つまり、左側のアームの方がきつく閉まってる、ってことなんだ。」
みみが真剣な表情で頷くのが、ガラス越しに見えた。
「つまり、左を主として獲れるように位置を設定すればいい…。」
みみは小さくつぶやく。やはり、子役をしているだけあって理解力はそこらの小学生の比ではないようだ。
「そう。さらに、アームの幅も見る。アームがどれだけ開くかどうか、アームの曲がり具合から予測するんだ。」
「うん…。」
慎重にみみはアームを動かした。
よし、完ぺきな位置だ…。ユウスケも心の中で頷く。
アームが下へと下がり、見事にパンダのタグの部分を掴む。
パンダが運ばれてゆくのを、二人は固唾をのんで見守った。
ゴトン!
勢いのいい音を立てて、パンダは下へと落ちてきた。みみはすぐさまパンダを手に取ると、今日一番の笑顔を見せ、
「見て!みみが獲ったの!」
と高らかに言った。ユウスケもつられて笑顔になる。
自分が獲った大量のぬいぐるみたちの処分については、この際考えないようにしていたが。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます