その頃火災現場では......?

ーーコウヤSideーー


 辺り一面火の海だ。現場検証の前に、魔眼で状況を確認しようと映像を開いたらコレだ。

 ゴォッ、と爆音が体を揺らす。

 「な、なんだ?! どうなってる?」


◇◇火災現場◆◆


 魔眼の火災の映像を見て、取るものもとりあえず、火災現場に駆けつけた。


 「あたり一面焼け野原か......」

 焼け焦げた木片を蹴飛ばす。

 一帯の消火をしてくれた部落の長を呼んだ。


 「これはこれは領主様! ご視察お疲れ様です」

 「あぁーーーこちらこそ消火してくれて、助かったよ。怪我人はいないか?」


 「いえ。とどこおりなくーー」

 何よりだ。

 準備してきた見舞金をそっと手渡す。


 「ありがとう。別途、報奨金を出すよ」

 煤汚れた老人の顔に笑顔がほころぶ。


 「ありがとうございます。私どもでお役に立つことが有れば、なんなりとーー」


 放火か天災か?

 今までこんな火災はあったのか?


 部落の長に話しを聞いても、手掛かりは得られなかった。

 明らかに限定的に燃えているから、シールドで覆って証拠の残りそうなところを焼いたんだろう。


 んーっと渋い顔をしていると、師匠ーーって呼ぶ声がする。

 リュウだ。

 「『風の民』カイさんが呼んでます!」


 部落の長と一緒に歩き出した。

 あたりにはまだわらを焼いた様な焦げ臭い匂いが漂っている。

 大柄なシルエットが二、三人と話し込んでいた。


 「おーい!」

 遠くから声をかける。

 「おお! 御領主様!! 我等が大王よ!

 ーーーいや、婿殿と言ったが良いか?!」

 浅黒い顔を綻ばせる。

 『風の民』主梁のカイだ。


 前回マオ討伐の際、救出の恩義を着て娘のナナミを嫁にと差し出してきた。


 「毎回めんどくさいなカイさん! 嫁はとらんってーーー!! ところでなんか見つかったかい?」

 「ああ、あれを見てくれ!」


 指し示した先にグニャリと折れ曲がったレールがあった。


 「こんなところに鉄道あったのか?」


 「トロッコレールです」

 長が教えてくれた。

 「魔石が取れたからですね。あそこは」 


 「今も取れるのか?」

 「今は魔人が出るからーー近づかない様に

なったです」


 「何? 魔人が出るのか?! 」

 「今でも時々でます。村を襲わなくなったんで何をしてるのかはちょっと......」

 申し訳なさそうに頭を下げる。

 「いや! いいんだ。魔人が出た方が」

 俺の回答が意外だったのか首を傾げた。


 「魔窟ダンジョンの入り口まで案内してくれ」

 魔眼を設置して先に進む。


 入り口で村長に別れを告げ、帰り道の護衛を『風の民』にお願いした。

 今回は用心の為、リョウとカイを連れて魔窟ダンジョンに潜入する。


 「いいか? 今回の目的はあくまで調査だ。

 攻略では無いから危険と判断したら、即撤退する。殿しんがりはおれが勤める。

 それと前回シールドが展開出来なかった。

 魔法が使えなくなる恐れがある。

 装備だけで戦うから点検は念入りに頼む」

 

 さすがにカイとリョウは慣れている様で、武器だけでなく通信石、狼煙石、ポーションを小分けにしてバックパックに詰めた。

 水と食料も三日分準備してある。


 カイが狼煙石の色を示して『風の民』に動き

を指示している。

 例えば白なら救難信号。赤なら緊急退避だ。

 最悪の時は俺たちを見捨ててでも、逃げろってわけだ。

 その際は村人を避難させる先と合流場所まで指示していた。

 そして三日たっても戻らない場合。

 通信役にサイカラへ送る文面を頼んだ。

 魔眼を設置した座標をそれぞれ示してある。


さぁ! 出発だ!!


 歩測と魔窟ダンジョン内部の地図作成の為シェルパ役でハンにも来てもらった。

 時々立ち止まっては方角と距離、天井高を

測っては進む。


 「なんだか面倒臭いな! なんでこんな事してんすか?」

 リョウが尋ねてくる。

 「金属兵が戦える広さがどこまであるか? が今回の観光化のキモなんだ。

 場合によっては拡張するから地図もいる。

 魔口があれば多少掘削しても魔人は湧くだろ?」


 「ふーん?! そんなもんすかね?」


 「さすが我が大王! 魔窟ダンジョンを観光地にしてしまうなぞ、我々では考えも及びませんな! ーーところでナナミの事ですがな! まぁ最近富に美しくなりまして......。

 ーーあれのどこがお気に召さない?!」


 にこやかに殺意を込めるな!? カイ!


 ビクッとリョウが反応する。

 カイの親バカぶりも相変わらずだ。


 「シッ! 静かに!! 索敵に反応があった」

身を潜めるよう身振りで示す。


 魔窟ダンジョンの奥からノソリと動く影があった。

 「待ちくたびれたぜぇ! 勇者さんよ」


 犬歯を剥き出して笑うソイツは虎の獣人だった。


 「ライガだーーー。いろいろ嗅ぎ回られては迷惑なんでな! ここで死んでもらう」

 黒い闘気を叩きつけて来た。

 身の丈二メートルは軽く越す。カーキ色の軍服に包まれているが全身筋肉の鎧だ。


 冷や汗が流れる。

 ヤバいやつだ。


 「ここは俺が引き受ける。みんな逃げろ!」

 俺はミスリルの剣を引き抜いて立ち上がった。


次回 爆破テロ

ゴシマカスに事件が発生!

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