けっこう前、友人ってほどでもない知り合いと飲み会でたまたま話し込んじゃったことがあって
けっこう前、友人ってほどでもない知り合いと飲み会でたまたま話し込んじゃったことがあって。でも共通の話題とかないからエピソードトークみたいなのをぽつぽつ並べる感じになって。さすがにどうかな、って思ったら向こうが変なこと話しはじめて。その人がひいおじいちゃんの死に目に立ち会ったんだって。高校生くらいのとき。結構な長生きで頭もしゃっきりしてたんだけど、やっぱり体力はどうしても落ちて最後は寝たきりになって。それで、亡くなるまでの2週間くらい、親戚がいれかわりたちかわり挨拶に来て、その人が家族と一緒に訪れたときが、運良くというか、運悪くというか、もうぎりぎりかなってときだったらしくて。それなりに会話もできたらしいのよ。まあ、こんだけ生きたら思い残すことはないわね、って気丈な感じで。マジ90歳とか超えてたらしいのよ。自分でも大往生くらいに思ってたらしくて。まあ、もともとさっぱりした性格だったのもあって、そういう話しぶりになってたんだろうって。それでぽつぽつ話を聞いてると、ここ数日は見知らぬ男が夢か現かつかないようなときにふと現れて、わたしがあなたを天国にお連れします、必ず来ますから、待っててくださいね、みたいなことを言うんだって。そりゃあいいや、安心だ、お前らも心配しなくて大丈夫だぞ、とかさ、こんなときに変な冗談言うもんだってその人はきつねにつままれたみたいになったって。残される側への配慮みたいなのもあるんだろうけど。ほんとの最期はびっくりするくらい和やかに、たださーっと静かに、30分くらいかな、じんわり過ごした時間があって。さすがにちょっと居心地悪いけど中座するわけにもいかないし、親なんか結構ぐっと来ちゃってるし。それなりにものわかりのいい子供だったからなんも言わずそこにいたんだって。で、ああいよいよだな、というくらいで、ひいおじいちゃんの目がカッて開いて、「お前じゃない! お前じゃない!」ってかすれた声で叫んで、そのまま息を引き取ったんだって。後味悪いけど確認しようもなくて、軽くトラウマになったらしい。
のっとり @mkdmi
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