第12話 接点
ジークロックは呆然としている。
よっぽど衝撃的だったのだろう。
俺も驚きはしたけど、トゥリノが"創造神"と知っていたからか、ある程度納得はできているのかもしれん。
そんな事を思いながら、何も言わず突っ立っているジークロックを眺める。
「ねぇ、優希?彼はどうしたのかな?」
唐突にトゥリノが聞いてくる。
「さっきのにビックリし過ぎて、気失ったんじゃね?」
「それは困る。でも流石に、さっきのはまずかったかな……」
その言葉を言い終えた直後、ジークロックの口が開いた。
「なぁ、ちっこいの」
トゥリノは短く発されたその言葉に反応する。
「何?」
「何だ、今のは?」
そう言って、かなり真剣な顔でトゥリノの肩を物凄い力で掴む。
その気迫に負けたのか、トゥリノは怯えながら答える。
「ま、巻き戻したんだよ…」
「"巻き戻した"って、時間をか?!どうやったんだ?!ちっこいの!!」
さっきの魔法?と言えるのか分からない何かを目の当たりにしていつの間にか呆然から変わっていた驚きを隠せないジークロックがトゥリノを問い詰める。
身長が2m以上ありそうなおっさんが幼い男の子の肩を掴んで思いっきり揺さぶってる。
傍から見ると、かなりの犯罪集がしそうな状況である。
「おい、ちっこいの!なんなんだ今のは!」
「ゆ、優希ぃ~、助け……う゛えぇ~」
物凄い揺さぶられながら助けを求められるが、どうしようも出来ない。
すまんなトゥリノ、そのまま揺さぶられてくれ。俺にはどうしようも出来ない。
そのままほったらかしていたら、落ち着いたのかジークロックが、トゥリノを解放する。
「ゆぅ~きぃ~、助け…ぶへぇ!」
トゥリノは、フラフッラになりながらもヨタヨタと歩きながら、こけた。
「おい、ジークロック、あんまりトゥリノをいじめんなよ」
足元に転がっているトゥリノをビシビシと効果音が付くぐらい突きながら、ジークロックに指摘するが落ち着くどころか、勢いを増している気がする。
「兄弟は知ってたのか?!ちっこいのがあんな力を持ってた事!!どうなんだ?!えぇ?!」
「知らなかったけど、大体予想はしてた」
と、テンションがおかしくなって喧嘩腰になっているジークロックをなだめるように真実を話すと、ジークロックは膝から崩れ落ちた。
意思表示が忙しいなコイツ。
「だったらなんで言ってくれなかったんだよ兄弟!!」
「いや………聞かれなかったからな…それに、知らなかったから言いようがない」
もはや俺の答え聞いてないかの如く、喚き叫んでいる。
「何なんだよ、あれ!!スッゲェじゃねぇかぁぁ!!チクショォォォ!!」
落胆するか興奮するか、どっちかにしてくれ。
もう、ついででもいいから、落ち着いてくれ。
頼むから。
■
声のほうを振り返ってみると、そこには見覚えのない小太りな男性が立っていた。
見た感じからするに、恐らくある程度は名のある家の者。
「申し訳ないですが、どちら様ですか?見覚えがないのですが………」
そう聞くと、男性は僕たちを見て、優しい笑みを見せて言った。
「私は…そうだな……とある貴族とだけ言っておくよ」
そう言ったその顔は、何かに満足したような、なにかを成し遂げたような、さっきとはまた違った笑みをしていた。
「しかし、まぁ、こんなに成る程とは、余程怒り狂ってたのかね?」
この惨状に目を向けて、男性は言う。
「確かに、"喧嘩"の範疇を超えていますね………」
つられて僕も、もう一度この惨状を見返した。
本当に何もない。
只々、見つめる。
眺めて居れば、何かに気づけるかもしれない。
それにしても…………
「……"腑に落ちない"」
不意に、男性はそう零した。
僕の意見を聞くこともしようとせず、そのまま続ける。
「"喧嘩にしては規模が大きすぎるし、敵襲にしては態々こんな路地裏にした理由がわからない、ほかの理由……魔法の暴走なんかにしても範囲が小さすぎる"」
そこまで言われて気が付く。
僕の意見を聞く必要がない程に、この男性は僕の心を読んでいる。
全く、狂わず、一言一句。
「君の見解はそんなところかね?そんな顔をしていたよ」
顔だけで、他人の思考が理解出来るはずがない。
かと言って、魔法を使ったようにも見えなかった。どうなっているんだ。本当に顔だけ見て読み取ったのか?
そう警戒していると、後ろからまた新しい声が聞こえてきた。
「マイクルさん!」
僕と近い背丈をした男女が近づいてきた。
「どうしたらいいですか?これ……」
マイクルと呼ばれたその男性は、男女に対して何やら指示をしている。
ん?マイクル?どこかで聞いたことがありそうな名前だ。
僕が考え込む前に、自分の記憶を確認するかのように
「マイクル……貴族………あんた、マイクル・ローガンド・ウィスプか」
「意外と答えが出るのが速かったね、黒髪の少年」
マイクル・ローガンド・ウィスプ………そうだ、思い出した。
この土地の領主で、同時に
「一応、塔の管理者の護衛なんでね、領主様」
その言葉を聞いて安堵したのか
「それじゃあ、警護軍の事は任せたよ」
と言って、この場を後にし、男女と共に歩いて行った。
「言いたいことだけ言って帰っていきましたね」
確かに、あの人は僕の記憶の中でも、気まぐれに現れては気まぐれに消える。
あの人の行動に惑わされながらも、任されたからにはちゃんとやる。
「
「「はい!」」
二人共、これでもかと言う位、気合が入った声で返事をすると復興作業に取り掛かった。
「ベルル、僕達も手伝うよ」
いつの間にか街の人と話すのをやめて、近くで子供の相手をしていたベルルに声をかける。
「は~い、手伝いま~す」
ベルルは嬉しそうに笑顔で返事を返し、スキップで
和むなぁ。そう思いながら、僕も釣られて付いて行く。
★
「さて、ここまで来たし、図書館まで道案内するよ」
少しだけ前を歩きながら、マイクルさんは話す。
「あぁそれと、ユーティアも付いて来てくれ。そっちの方が何かと良さそうだからね」
執事は礼儀正しく、お辞儀をして
「畏まりました、ではご出発の準備に取り掛かります」
と言って、どっか行った。
ボォーっと眺めて居ると、またマイクルさんが言ってきた。
「彼が戻ってくるまで、街の案内でもしようか?
そう言って、子供みたいにニカッと笑う。
その子供の雰囲気のまま、溌剌と言った。
「ようこそ、
三種三様な異世界生活 @Kyurus_131
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