第6話 再会



   ▲



 「"戦い"………だから負けても文句ねぇよな?」


口元を歪ませたまま、俺はジークロックに聞いた。

その問いに、ジークロックは笑って答えた。


「ハッハッハッ!何を言うか!もっちろんだぜ、兄弟!」


その事を聞いて、俺は安心した。


「じゃ、遠慮なく」


そう言った瞬間、俺は思いっ切り地を蹴った。

一瞬でジークロックの懐に飛びとんだ。


「は?」


まるで、瞬間移動と言わんばかりのを見て、はあんぐりとしている。

ジークロックも、何が起きたのか分からなそうだった。

そんな事をよそにそのまま、ダッシュの勢いを拳に込め腹に、


「ほい」


そんなふざけた掛け声と共に、思いっ切り一発を喰らわせた。

同時にジークロックは吹き飛んだ。

そう、一発喰らわせた。

………だけ、なのに


「ぐおあぁぁぁ!!!」


巨漢の見た目とは裏腹に、魔法障壁っぽいの諸共、物凄く吹っ飛び建物にぶち当たるジークロック。

建物が音を立てて崩れる。いや、砕け散ると言った方がいいかもしれない。

なんせ、中には粉になってと呼べない物もあるぐらいだから。

崩れた建物の隙間から光がいい感じに差した。これで脇道の周辺はハッキリとした。

そんな事より………こっちが。


「ふぇ?」


驚き過ぎて、変な声が出てしまった。

………いや、確かに………思いっ切り、殴ったよ?

…………一発、喰らわしたよ?

だけど、いくら何でも…………


「………大げさすぎでは…………」


いやな?自分が超人的な能力を持ってる事ぐらい知っているよ?

いや、だけどね?ここまで吹っ飛ぶもんかね?

ヤバすぎじゃね?俺。


「一発で………倒された」

「……噓だ…ジークロックさんが吹っ飛ばされるなんて!!」

「何なんだこいつ!おかしいだろ!」


こんな感じで外野は外野で、騒がしいしで何か面倒くさい。

ほっとこうとした時、視線の先でが蠢いて瓦礫が落ちる音がした。

………噓だろ?仮にも………俺の"思いっ切り"だぞ?

……まさか………いや、マジかよ。タフ過ぎだろ。


「あ゛ぁ~、いっだぁ~」


その"まさか"だった。

いや、マジなの?


「……化け物……かよ…」


その呟きを聞き取ったのか


「ふぅ~、やれやれ………兄弟に言われたくはなかったぜ」


いや、もうホントに何なの?

俺、驚き過ぎて表情筋が崩壊しそうだぞ?


「え?何?演技なの?」


思わず、真顔でそう呟いてしまった。


「え………演技で……こんな事………出来る…か?」


「あ……聞こえてんのか、んん~~、出来ねぇな」


いや待った!!

何、普通に質問に返してんの?!俺!!

いやさ?!ホントに何してんの、俺?!

どうしたのさ?!俺!!

………と、考えていると、周りから


「心配させんなよ!!!」

「さすが、ジークロックさん!!!」

「アンタもおかしいぜ!!いい意味でな!!」


やっぱり、観客達こいつらうるせぇ。

けど、ほっとく。


「まだやんの?」


一応聞いてみる。


「兄弟が強い事はよく解った。だが…………」


「なるほへ………終わってない……と」


そう言って、俺とジークロックは、同時に構える。

瞬間、またしようとした直後、に首を引っ張られた。


「ぉおうぇ?!!」


聞き覚えのあるあの女性の声が、耳に届いた。


「こんな所で、何してんの?探したんだよ?」



   ★



 「ほへぇ~、立派なお屋敷~」


僕の目の前には、白い壁に青い屋根のかなりおっきい洋館が建っていた。

建物自体が新しいのか、壁がツルッツルに光っている。


「でしょでしょ~♪」


何故か、ようが嬉しそうにする。

何でお前が誇らしげにしてんの?

お前はここに住んでるとかなんの?

とか、考えていると


「お帰りなさいませ、お嬢様」


いかにもな、高齢の執事が屋敷の中から出てきた。

ん?……待って?お嬢様?


「え?……は?………はぁぁぁぁぁぁ?!」


は?待って待って!………え?


「どう言う事?!この3日間で何があった?!え?!」


滅茶苦茶に戸惑ってる僕を無視して二人は、話を始める。


「ただいま~ユーティアさん、マイクルさんは?」


「お屋敷内におられるかと………」


「そ!ありがと!」


「お嬢様、そちらの方は?」


ようは、僕の事を指差して説明していた。

そんな事は、ぶっちゃけどうでもいい。

ようが、お嬢様だとか言う冗談で頭が、いっぱいである。


「変な薬でも飲んだのか?!何なんだ?!どうなってんだ?!」


「ねぇ、聞いてる?」


「頭が、おかしくなりそうだ!!3日もここにいるんだろ?!」


「聞けよ!!!」


本日二回目のチョップ(僕基準)が、炸裂した。


「ってぇ!!なにすんだよ!!今、忙しい!!」


「ほらっ!いくよ!!」


「何処に?!って引っ張るな!!」


ガシッと腕を捕まえられた僕は、そのままように引っ張られながらついて行った。

そのまま、屋敷の中に入る。

ドアをくぐりようついて行く響弥きょうやを見てから、セバス・ユーティアは、呟いた。


「……本当に仲が宜しい様で………"異世界人"同士」


瞬間、白く美しい羽根をはばたかせた。


「おおっと、年甲斐もなく興奮してしまいました」




   ★



「お!ち!つ!い!て!」


「無理!!」


「なんで?!」


中に入ってから、早々にそんな会話をしている。


「ちょっとだけでいいから落ち着いて!!!」


「無理だ!!」


「ホントに!ちょっとでいいから!!!」


「今の状況、説明しろ!!!」


「分かった!分かった!!でも待って!!!先ずは、…」


そんな言い合いをしていると、


「おやおや?随分と賑やかで楽しそうじゃないか」


その小太りな、男性は顎をさすりながら「ほっほっほっ」と笑っている。

………何この人、めっちゃ優しそうな雰囲気がムンムンに出とる。


「あっ!!マイクルさん!探したよ~」


と、親しく話すよう。なんだ、こいつ…一気に怪しくなった。

ダメだ。ようようが関わると、どいつもこいつも怪しく見える。


「君が、神無 響弥かんな きょうや君……であってるかね?」


はい!こいつ怪しい!!

何でこいつ、僕の名前知ってんの?

隣で、ようが、テヘペロ~ンしてる。なるはそ、取り敢えず、お前はあとでお仕置きする。


「はい……そうですが……」


「私の名は、マイクル・ローガンド・ウィスプ。よろしく、神無 響弥かんな きょうや君」


「は、はぁ……」


めんどくさい事になりそうだ。

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