第5話 始まり
▲
「じゃ!異世界行ってくる!」
ガチャと
閉まったドアを、眺めながら
「………よかったの?わざわざ《
霊体、つまり魂の《別の世界》での行動は、存在の消滅に関わる。
《別の世界》に居過ぎると、少しずつ体が透過していき、最終的にはどの《世界》からも、元々いない者とされる。自分の体が消える。人の記憶から消える。消滅する。
「………勿論、分かっているよ」
「………そか、分かってて……なんだね……」
「……すまないな、わざわざここに連れて来て貰って……」
「……こっちの方こそ、ここに連れて来て……」
「………………」
「…………」
無言が続く。
大きな何も無い空間に、静寂が溶け込む。
「………そろそろ、戻るよ」
「………そうね、そろそろ戻るわ~」
無言のまま
「……………またな」
「あんまり来るなよ?」
「……分かってるよ」
「じゃ~ね~、先行ってるわよ~」
手を振ってドアに吸い込まれる
完全に吸い込まれた事を確認して、
「………
「頼んでばっかりだな……分かった…………頼まれたよ、"相棒"」
それだけ聞いた
完全に吸い込まれた事を確認して、
「………少し、頑張るか…」
ドアをくぐった。
▲
「ここは……」
そこは、余りにも異様な光景だった。
何処かで見た事ありそうな、場所に来た。
でも………
…………思い出せない………
しかし、すごい場所に出た。
「大通り……」
転生したのだから、てっきり赤ちゃんからだと思っていたがそうでもないみたいだ。
体の感覚も、肌の色も指の長さも体の全てが、
先ずは、ここでの自分のを確認する。
真後ろに、ガラスのショーケースがあった。
中には、安そうな剣や盾、弓なんかが置いてあった。
商品を眺めるふりして、自分の姿を確認する。
そこで俺は、感嘆か呆れかよくわからん声を出した。
「こ………これは……」
うなじの所まで伸びている黒い髪。
まぁまぁな高さの身長。
赤茶色の瞳、ツリ目気味な目、ちょっとキツ目の顔。
服は、汚れた青を基調としてあるTHE村人と言わんばかりの物。
「……お……俺だ………」
瞳の色と服以外、全部、細かい所までなんら変わっていない。
「……マジ………か…よ………」
俺は、また感嘆か呆れかよくわからん声を出した。
王都らしく、大通りの奥には、屋敷か城みたいなのが建っている。
少し歩く。
取り敢えず、何かを何とかせねば……………って
「何しよ、いや何すれば………?」
脇道に入る。
こう言う所は色々あって、面白いから好きだ。
すると、デカい
その
ん?動いた?
「よぉ、兄弟!こんな所でどうしたんだ?」
「ぅうおっ!喋った!」
辺りがビル(?)しかなく、陰っているせいか全身がよく見えないが、かなりの巨漢である事が分かった。
ガタイが凄く良い事も、分かった。
「失礼な………俺も人間だぞ?」
巨漢がそんな事を言っている。
「メンゴメンゴ~」
俺はそう言って、本題に入る。
「ここで生きるためには、どうしたらいい?」
と、聞くと巨漢は、ニッと笑ってその笑顔に似合わない事を言った。
「俺の手下になることだ!」
「わーお」
俺は、興味が無いオーラをムンムンに出しながら言った。
すると、巨漢が恐怖心を煽るような低い声を出した。
「さぁ、始まりだ」
すると、周りの建物の窓やらドアやらから、いかにもな人達が歓声を上げる。
「待ってました!!!」
「ジークロックさん!!やったれー!!」
「いいぞー!」
などと、声があがる。
「俺は ストル・ジークロック よろしくな」
巨漢が自己紹介をしてきたから、俺も自己紹介する事にする。
「ご丁寧にどーも。俺は、
「変わった名前だな……聞いた事がない…」
ジークロックは、言葉を続いた。
「まぁいい、"負けた方が勝った方の言う事を聞く"ってのでいいか?」
「勝手に戦う事にすんな、いいけど」
ジークロックは、「よしっ!」と言って足元に魔法陣らしき物を展開させた。
その
「準備、完了!さぁ始めるぜ!!」
ジークロックは、ゆっくりと構えた。
それを見て、俺は、ただ嗤った。
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