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 さて切り替えまして——と言えるほど、さっぱりと切り替えることはできていないのですが、しかしいつまでも余韻(?)に浸っていても変態っぽいので、無理矢理切り替えて、演目を決める話し合いです。


 とはいえ、なかなか決まりません。


 僕が読んだ『マッチ売りの少女』や、皆さんが挙げた作品をピックアップしました。


 挙がったのは、僕のやつも含めて、五つです。『マッチ売りの少女』、『人魚姫』、『竹取物語』、『金太郎』、『桃太郎』——この五つです。あと、なぜか軌柞きいすちゃんが挙げた、『ドラゴンボール』も本当になぜかなぜか、候補に残っています。


「決まらないわねえ〜」


 と、静露せいろ先輩。すでに話し合いは、一時間を超えています。なかなか決まらないです。


「やっぱ、ドラゴンボールしかねえって。俺はそう思うんだぜ」


 妹が図々しいです。発言をするのは、軌柞ちゃんの性格的に仕方ないと諦めるのですが、しかし提案をするのは、部員の役目ですし、控えめに言って、静かにしてほしいものです。


「ドラゴンボールねえ〜。良いのだけれど、でも男の子が斎姫ちゃんしか居ないのよねえ。せめて西遊記なら、まだやれるのだけれど」


「西遊記も良いね。色星いろせさん」


 と、軸梨じくなし先輩。候補が増えました。


「ならわたしは、沙悟浄に立候補するわ。河童って素敵よね」


「いやいや熊猫くまねこちゃん。まだやるか決まってないって」


「そうね。でもどうするの? このままでは、死ぬまでこの議論は終わらないわよ。こんなところで死ぬの嫌だわ」


「我が家をこんなところって言わないでくださいよ、熊猫さん」


「あら失礼。このような場所——と言うべきだったわね。失言失言」


 どっちで言われても感は否めないですが、おぱぱ(以下略)があったので、強く言えません。おぱぱ(以下略)がなくとも、強く言えませんが。


「じゃあ、全部混ぜちゃおうか〜。ドラゴンボールのバトルと、西遊記の冒険、マッチ売りの少女の感動、桃太郎の無双、金太郎の強さ、そして竹取物語のかぐや姫をヒロインにして、混ぜちゃおうか〜?」


「色星さん、それカオスすぎない?」


「一人五役くらいになるけれどねえ」


「だからカオスすぎるって色星さん」


「じゃあ〜。あみだくじにする〜?」


「そだね。それが無難かも。よし色星さん、それでいこう!」


 あみだくじに全てをゆだねることになったようです。


 文句もありませんし、決まらないよりかは決まったほうが良いですからね——ということで、あみだくじを準備です。


 カレンダーの裏側に、作品名を書いて、あみだくじを作りました。カレンダーの裏側を使うエコ思考な僕です。


「って! ドラゴンボールは!?」


「軌柞ちゃん。冷静に考えよう? ドラゴンボールは冷静な判断じゃあないよ?」


「馬鹿なっ!? ドラゴンボールは冷静な判断じゃねえのか!? ま、まじかよ……」


 どこに驚いているんですかね、僕の妹。


 驚く妹に驚きますよ。お兄ちゃんは。


 さてさて。冷静を欠いている妹はスルーしまして、あみだくじをしましょうか。


「その前にじゃあ軌柞ちゃん。軌柞ちゃんが選んだ場所が、私たちの演目に決定にしましょう」


「え? 俺で良いのか、静露さん?」


「良いわよ〜。ね? みんなもそれで良いわよねえ〜?」


 静露先輩の言葉に、みんなでうなずきました。


「よっしゃ! じゃあ俺が、エントリーされてねえドラゴンボールを引いたら、ドラゴンボールになるわけだな。よし! 奇跡を起こすぜ!」


 それは奇跡じゃなくて、間違いだよ。


 どう考えても、起こしているのは奇跡じゃなくて間違いなんだよ、軌柞ちゃん。


「ここだあ! いやっほおおおう!」


 そんなことを考えていましたら、無駄にテンションが高い軌柞ちゃんは、場所を指定。


 指でたどり——折り込んだ部分を開きます。

 

 果たして、僕たち演劇部、初演目は、


「竹取物語ねえ〜」


 竹取物語に決まったのでした。


 めでたしめでたし。です。

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