部室とか演目とかとかとかとか。

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 放課後になりました。


 きんこんかんこんです。


 かんこんきんこんです。


 さて。さてさて。放課後になりましたので、いよいよ部活動のお時間なわけですよ。


 演劇——僕はもちろん経験ありません。見たこともありません。演劇という言葉だけを知っている、完全な素人なのです。


 しかし経験のない僕ですが、結構楽しみではあるのです。いわゆる好奇心でしょうかね。果たしてどのような活動をするのか——まあ、演劇なのですから、演劇をするのでしょうけれど、なにごとも初挑戦というものは、心躍るものがありますね。


 僕以外が女性部員という部分は、やはり気になりますが……。


 女性が苦手というわけではないのですがね。


 なにせ男友達の少なさは、決してぼっちではないのにぼっちレベルな僕です。女友達の人数は、ちょっとしたJKくらいいる僕かもしれません。


 その理由として、あまり考えたくありませんが、それでも現実と向き合って考えてみますと、やはり僕の見た目でしょう。


 男友達は、存在しなかったわけじゃないです。


 ただ……過去にあることを言われまして、それが思いのほか僕にダメージを与えたのですよ。


 中一の頃ですね。その友達と遊んでいたら、友達が言ったのです。


 お前と遊んでると、俺はホモなんじゃないだろうか、って悩みに頭を抱えるんだけど——ってね。


 そう言われても、って、思っちゃいますよ。思っちゃいましたし。それが以前言いました、男にガチ告白された事件(僕認識で事件)に繋がるのです。丁重にお断りしましたけれど。


 女友達は、そのような心配はありませんからね。そのぶん、なんか楽です。


 心配といいますか、注意すべきことは、もちろんございまして、僕が馬鹿な勘違いをしなければいい——ってところでしょうね。つまりあれです。あれですよあれ。


 あれ? 僕のこと好きなんじゃないです?


 という勘違いです。愚かな勘違いです。


 悲しいですよー。その勘違い。実はその愚かな愚かな勘違いをして、一度だけ女子に告白をしたことがあるのですが、そのときのシーンを思い出すだけで、整形を考えたくなります。しませんがね。


 でも考えたくなりますよ。だって、僕が勇気を振り絞ってその女子に想いを伝えたら、帰ってきた言葉が、『え……あ、そっか、男子だったんだよね、そういえば』でしたからね。


 本気で死のうかと思いました。


 思い直して生きてますけどね。


 まあそんなこともありました、って話です。さておき。


 悲しい悲劇(僕認識で悲劇)は、そろそろ幕を下ろしまして、放課後なので部活に向かいます。


 屋上です。着きました屋上。


 お昼にしそこねた自己紹介をそれぞれしまして、次なるステップの時間です。


「じゃあ、ここに名前とクラスを書いて周してねえ〜」


 そう言って静露せいろ先輩が一枚の紙を周しました。


 部活動申請という紙です。


 簡単に言っちゃえば、人数が集まったので、部活動にランク上げてもらっていいですか——というお願い届けですね。


 部長は、静露先輩。副部長は、軸梨じくなし先輩。上級生のお二人がそれぞれ役職です。ひょっとしたら熊猫くまねこさんが、部長はわたしよ——なんて言い出すかと懸念しましたが、熊猫さんは大人しかったです。


 喋らなければ美人さんなんですよね、熊猫さん。喋っても見た目だけ美人さんですけど。


 喋りますと、イメージの悪い美人さんになる熊猫さんですね。


「なにか陰口を叩かれている気がするわ。今のうちに叩き潰そうかしら」


「なぜ僕を見るんですかっ!?」


「別に見ていないわよ。自意識過剰ね」


「いや、見てますでしょう……目が合っていますよ……?」


「言いがかりはやめなさい。勘違いもはなはだしいわよ。愚かな勘違いは、あまり褒められたものじゃあないわ。悲しくて、実に愚かね。ふふ」


「……………………」


 とまあ、僕の内心の自由がおびやかされてたりしましたが(こわいですっ!)、みんな申請書に名前を書き終わりました。これで部活動にランクアップするための準備は完了とのことです。


「じゃあ次はねえ〜、今のうちから決めておきましょうか〜」


 と、静露先輩。


「なにをだっぺ?」


 葉隠はがくれさんの質問に、それはね〜、と。ニコニコしながら静露先輩は続けました。


「演目よお。演劇をする前に決めないとねえ。なにかやりたいおはなしとかある人、はーい手を挙げて〜?」


 そう言われましても、演劇素人の僕は、まったくわかりません。熊猫さんと葉隠さんも同じなのか、お二人も沈黙でした——が、


「ビシッ!!!!」


 ビシッと言いながら、ビシッと手を挙げたのは、軸梨先輩でした。さすが先輩。演劇素人の僕たちよりも、キャリアが違うみたいです。


「はい、駿戯するぎちゃん。なにやりたい〜?」


「あたしは、女同士の歪んだ愛をテーマにしたドロドロの恋愛が観たい!」


「じゃあ観に行ってねえ」


 ものすごく自然にスルーなさりました。さすがです。具体的にどこがと言われたら困りますが、さすがです。


「ん〜。いきなり演目を決めるのは難しいかなあ。じゃあ、今日帰って、みんなひとつ考えてみてくれるかなあ。部室がもらえたら、みんなの案から本格的に話し合って、多数決しましょう」


 じゃあ、今日はここまで——と。


 おつかれさまあ——と。


 静露先輩が締めまして、本日の活動は終わったのでした。

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