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散々な入学初日で、酷いセクハラに
すごく歩きにくかったです。痛みが残り過ぎて。
たぶんリンゴとか握り潰せるんじゃないですかね?
歩きにくかったので、男らしく歩くことも出来ず、なんなら少し内股で帰宅した僕ですが、なんとか痛みを
「おう、兄貴ちゃんお帰りー」
兄貴ちゃん。僕のことです。
兄貴なのにちゃん付け。残念ながら僕です。
「……ただいま、
僕の妹、軌柞ちゃんです。兄である僕より身長が高くて(165センチ。良いなあ)、兄である僕よりもよっぽど少年みたいな顔立ちをしている中三の妹です。なんで僕に付いてて、妹に付いてないの? って思ったりしたこともありました。
「なんだ兄貴ちゃん? 内股で立っててどうしたんだよ。やっぱり女になったのか? マジかよきめえ」
「なってないし、お兄ちゃんに向かってきめえとか言わないでよ」
「きっっっっしょい」
「あんま言わないでよ。僕、メンタルが打たれ強くないんだからさ……」
「毎日この俺が鍛えてやってるのに、全然強くなんねーのな、兄貴ちゃん」
別に鍛えてほしい、って頼んでないんですけどね。やめて欲しいですね。
勘弁願いますよ。押し掛けコーチとか。
ほとほとメンタルにダメージを受け、リビングのソファに座ります。リビングにソファはひとつしかないですし、そこそこのソーシャルディスタンスは取られているはずなのに、僕が座ったら軌柞ちゃんは、もっとソーシャルディスタンスを取りました。
「女が
なにも言ってないのに、離れた理由を親切に教えてくれました。離れた理由ですら僕を傷つけてくるあたり、さすがです。褒められないのにさすがです。
「もともと女の子でしょ……」
「おいおいやめてくれよ、挨拶に困っちまうぜ、兄貴ちゃん。妹を女って意識すんなよ。女未満、って書いて妹なんだぜ?」
「意識してないよ。出来ないよ」
「本当か? 俺のおっぱい見ても無反応を貫けるっつーのか? それは屈辱だぜ?」
「いや、それは目のやり場に困るから無反応は無理だけれど、無感情は貫けると思うよ」
「ほほーう? じゃあさっそく試してみようぜ?」
「やめようね? それは兄妹の遊びじゃないからやめようね?」
「んだよ、意気地なしかよ、つまんねーな」
おっぱいを見せることが楽しいと思っているのだとしたら、妹の将来どころか現在すら心配になります。本当に心配です。
「軌柞ちゃんも中三なんだから、もう少し女の子っぽくしなよ?」
「兄貴ちゃんみてえに?」
「僕は男だってば」
「たしかに、ちっちゃいやつ付いてるもんな! ウケるぜ! あはは!」
ウケたみたいです。面倒なので、笑わせておきましょう。
ちなみに、ちっちゃいとか言われ続けている僕のメンタルへのダメージは、結構辛いところまできています。
妹が笑っているので、僕は放置して部屋に向かいました。部屋の扉を閉めても、妹の笑い声が聞こえてきます。いつまで笑ってんでしょうね。馬鹿ですね。
「ふう」
ベッドに腰掛け、ひと息。
そして思います。
よくよく考えてみたら、僕は明日、僕の大事な部分を触った(握った)女子と肩を並べて授業を受けるわけで、それって朝とかどんな顔していれば良いんでしょうか?
ここで僕がもし、イケイケの男子だったなら、俺のマグナムに触れた女の保障はできねえぜ、お嬢ちゃん——とかニヒルに笑い飛ばし言えるのかもしれませんが、僕には無理です。
触れたというか、収穫作業のようでしたからね。
どちらにせよ、僕の一部をギュッてされたことは違いありませんし、果たしてどんな顔をしているのが正解なのでしょう?
……なぜ被害者の僕が悩んでるんですかね。
アホらしい。こんな風にうじうじしているのが、男らしくない、って言われる原因ですよね。はあ……。
もっと男らしくなりたいです。
男が惚れる男になりたいです。
いや、ぶっちゃけますと、男にガチで告白されたことはあるんですが……。そういう惚れるじゃないんです! 男気に惚れたぜ、って言われたいんです!
少年顔の女の子はきっとモテるのに、どうして少女顔の僕はこんな感じなのでしょうか?
女顔過ぎるからと言われれば、ぐうの音も出ませんが。なりたくてこの顔になったわけじゃないです。僕だって、屈強なソルジャーみたいな男子になりたかったですよ、そりゃあ!
まつ毛長過ぎですし、お口小さいですし、ぱっちり二重ですし、爪も女爪ですし、今は髪型すらもエアリーボブですし。
これ、わかってくれる人いるのかなあ……。
男子トイレの小便器の前に立つと、隣にいる男子が前屈みになってのぞいてこられる僕の気持ち。
これがわかる人って、この世にどれくらいいるんだろう……。
わかってくれる人と語り合いたい。
いるのかな……。そもそも……。
いなそうだなあ。孤独だなあ。
僕孤独。言いやすいや。えへへ。
「……………………」
なんか悲しくなったので、晩ご飯までうじうじしよう。
はーあ。
晩ご飯、ハンバーグが良いなあ。マッシュポテト食べたい。
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