第二幕
第9話
烈日がジリジリと大地を焦がしている。
正直、昼はとてもじゃないけど出歩きたくない。
ナローシュ様にこの間の件の罰として立哨を命じられたから仕方ないのだけど。
剣を抜いてたのに、追放されたり、殺されないだけマシか。
「花ー、花はいらんかねー、花ぁ」
王宮前に見るからに怪しい娘がいた。
やる気のない声を出しながら歩く茶髪の子。
一見普通の花売りに見えなくもないけど、押しているカゴの中に、良く見ると強い毒のある花が混じっている。
そんなものを誰が買うんだろうかと、目で追っていくと、建物の陰に入っていった。
私は興味本位でその後を尾ける。
「はぁ、王様にバレずに探って来いとか、ご主人様も無茶言いますよ、全く。元同僚にバレないわけないでしょ……」
独り言が聞こえた。
探る……王様を……?
「ご主人様が何をしようと、結局は王様が彼女を嫁にするんだろうし……」
王様が嫁に……ああ、なるほどナローシュ様が言ってる、あの子とやらの話ね。
「でも婚約してたのは隣国の王家の方だったような気が……まあ、お気の毒だなぁ」
何か事情に詳しそう、話を聞くしかない。
◇◇◇◇◇◇◇◇
「失礼、そこのお嬢さん」
「ひっ!な、なんでもありません!私はしがない花売りですから!」
声をかけるとビクッと跳ねて、逃げようとする。
「なら、何故逃げるのですか?」
「あ~えっと~お、お花を摘みに行こうかと!」
「もし、私がその花を買おうとしている客だったら?」
「え、あの、その」
「ではこれで、花を買いましょう」
金貨を握らせる。正直、物の値段とか相場はよく分からないけど、流石に買えないという事は無いはず。
「……?えっ、これっ金貨では!?」
「これでは足りませんか……?」
……金貨じゃ花も買えないのね。
道中の食事には幾らかかったんだろう、後で将軍にはちゃんと払っておかないと。
「い、いえ……そんな事は……えっと、その。わかってるんですよね……?」
あ、足りるんだ。良かった。
「ええ、まあ。わかってなければ声も掛けなかったでしょう」
まあ、毒花ばかりだし。大方、花屋に変装するのに、人が摘んでいないようなモノを掻き集めたんでしょう。
普通の人が気が付かなくても、花売りが知らないはずはないし。
「……ぅ……その……はい、わかりました。で、では、そのついてきてもらって良いですか?」
「……?構いませんがそれは……」
「……こ、ここでするような事ではないと思いますので……他の人の目や耳がありますから……」
なるほど、やっぱり密偵か何かだった訳ね。
「分かりました。では参りましょう」
この子の背後には必ず何か情報があるはず。
待ってなさい、必ず貴方の弱みを見つけてみせるから
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