最終部第4話「魔王訣戦」

 空中から都市が落ちてくる。


 冒険者と蛮族との戦いの隙を突く形で、タージを墜落させる罠を起動させた”魔王”ゼガン=キルヒア=オーブレイ。


 タージの新たな管理者となったが魔王に洗脳され拉致された”白金の戦乙女”クリスを取り戻さなければ、タージはキングスレイを砲撃した後に降下して自壊する。


 そうなれば、世界の一部を除いて未だ降り続いている、タビット以外の魔法の使用を阻害することで世界を変革する「星雪」を完全に止める手段がなくなり、それは破滅的な争いの要因となるだろう。


“自由なる風”レヴィン=プラデッシュが探していた相手、地上に降臨したまま行方不明となっていた賢神キルヒア。《大破局》の折に隆盛していた旧王国ルセアの宮廷魔術師がその依り代であったようだが、魔王はオーブレイの名も名乗っていた。


 レヴィンの見立てでは、オーブレイは自身の精神を、聖戦士の神器”真理の杖ル=ニィダ”に封じ込めており、それを入手した者を支配する仕組みを整えていたようだ。だが半人半神のゼガン=キルヒアが手にしたことで支配権が混ざり合い、3者の誰ともつかない人格となっているであろうということであった。


 魔王を倒し、キルヒアを解放するためにレヴィンは自身の知識を用いて一行に全面的な協力を約束する。オーブレイの杖による神器継承者の支配は様々な前提条件が必要な術式であり、支配を解くための一つの方法は、杖に魔力を供給する特殊な地場術式、通称”龍脈”からの魔力供給を断つことが必要だという。


 タージから脱出したエノテラ=テトラプテラより、魔王一派が脱出艇を用いてランドール地方に着陸した記録を聞かされた一行は、ランドール地方の龍脈の封印により”魔王”ゼガン=キルヒア=オーブレイへの魔力の供給を断ち、クリスを支配から解放すると共に直接対決時の備えとすることにする。


“龍脈”の操作には旧い知識が必要だが、神官の高司祭関係者にはかつて広く伝わっていたという。ライエルはかつて”龍脈”の簡単な概要を師匠の”聖剣の護り手”ヴィオラ=カルティから耳にしたことがあり、師匠であれば知っている可能性が高いと判断する。タージを支配する蛮族に捕らえられていたヴィオラはライエルの姉、”予見者”アウローラ=クラージュと共にタージから脱出しており、その脱出艇は同じくランドール地方に着陸の記録がある。彼女たちの足取りを急ぎ追うことにした。


 タージに残されていた記録を頼りに脱出艇の着陸ポイントを割り出し、付近を捜索する。既に数日が経過しており、タージは黒い月の裏側から実体化し、キングスレイ鉄鋼共和国上空に向かいつつあった。残された時間は少ない。


 人の痕跡を発見し、小高い丘の洞窟内で一行はライエルの姉、”予見者”アウローラ=クラージュを発見する。ヴィオラは一緒ではなかった。彼女の証言によれば、ヴィオラは敵の追手を迎撃するため逃走の最中で別行動を取ったらしい。しかしヴィオラは長期間の拷問等で身体機能が著しく低下しており、非戦闘員のアウローラから見ても戦える状態ではなかったという。


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「無茶です、あなたがいかに高名な剣士さまといえども、とても戦える状態には見えません」


「そう、追い付かれてしまえば、人を護りながら戦うことなど出来ないでしょう。だからここで別れるのです」

「どんな状態でも、守るべき人が生き残る可能性をわずかでも残すのが私の剣の極意です。恐らく私たちを探している仲間が近くまで来ているはず」

「この古びた剣を持って逃げて。あなたの弟、私の不肖の弟子に渡して下さい」


「私などより、あなたが生き残るべきではないですか、あなたには多くの知識と、必要とされる力が…」


「私のような老人にそのようなものはありません。私は、あなたの里が蛮族に狙われていることを知りながら守れなかった。生き残りの少年に剣術の真似事を教えた程度ではとても、贖える罪ではない」

「私の知識はあなたが、私の剣はあなたの弟が継ぐでしょう。さあ、早く!」


 ―セッション内描写より、ヴィオラとアウローラのやり取り

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 アウローラを追って一行と遭遇したのは”魔王”ゼガンの配下、”絶望の騎士”ウォルニルであった。この不死の騎士は、ドラコ=マーティンの生まれた里を襲撃し、クエルヴ=マーティンを殺したドラコの仇でもあった。


 ===中ボス戦闘===

 ”絶望の騎士”ウォルニル

 アンデッドジェネラル

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 ウォルニルを打ち倒し滅ぼすも、ヴィオラは彼奴の手によって討たれてしまったという。死体の所在がわからなくては蘇生魔法リザレクションの使用も出来ない。悲しみに暮れるライエル達であったが、再会したアウローラは、タージに滞在する間にヴィオラから”龍脈”の操作方法を学んでいた。


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「この古びた剣は、ヴィオラさんが…ライエル、あなたに、と」

「ええ、”龍脈”の知識は以前から私も持っていました。その術式の操作方法も、今なら把握しています」

「今は開かれているそれを閉じることで、大がかりな儀式系の魔術を阻止することは出来るでしょう」

「ブルライト地方の”龍脈”は”ふんばり剣溝”に存在しますが、ランドールのそれがどこにあるのかは…」

「龍脈とはその名の通り、元々はドラゴンがその力を維持するために使われていたもの」

「リルドラケンの勇者にはその場所が伝わっているはずですが…」

 ―”予見者”アウローラ=クラージュ

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 ”龍脈”がどこにあるか。アウローラは龍脈を操作することは出来るが、馴染みのない土地で場所まで把握してはいない。ランドール地方の龍脈は、勇者と呼ばれる者にのみ伝えられるという秘境のようだ。


 ここで”星月巡り”一行のリーダー、ドラコ=マーティンが提案する。


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「カタン島で戦った俺の兄…クエルヴはリルドラケンの中でも勇者と呼ばれる者だった」

「俺は家の中で読書ばかりしていたので良く知らないが、兄は何らかの試練を受け遠くに行っていた様子があった。今思えば、あれは龍脈に辿り着くための冒険だったのだと思う」

「兄に話を聞けば、わかるかもしれない」

「操霊魔法に霊魂降臨ポゼッションという魔法がある。俺自身は兄と話せないが、他の皆に聞いてもらうことが出来るだろうか」

 -ドラコ=マーティン

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 レブナントと化してかつて一行と戦ったドラコの兄、クエルヴであれば龍脈の場所を知っている可能性があるとして、ドラコがポゼッションの魔法を使用し情報を得る。


 クエルヴは降臨し、彼は確かに”龍脈”の場所を知っていた。また、”魔王の巫女”ヘラ=エイヴァリーが、聖戦士のスキームで神を降臨させる儀式に失敗した後も永らえているのは、崩壊が近い”魔王”の人間としての肉体のスペアとしての目的があるからだという情報も得た。潜在意識の中でクエルヴはヘラの解放を願っていたが、”魔界剣士”シモン=ヴァレリーの横槍で上手くいかなかったという。


 方針は定まった。”龍脈”にアウローラを伴って向かい、術式封印の儀式をした上で”魔王”の一行と戦う。ランドール地方は未だ星雪が止まず、野外の冒険で魔法はほとんど使えない。一方で、この星雪が封じるのは人族と蛮族の魔法のみであり、魂の輪廻の外にあるアンデッドや魔神、世界の外の存在であるタビットは魔法を扱える。唯一のタビットであったサフランがおらず不利な戦いが予想される。ランドールの為政者たちは多くの報酬を用意して、星雪の一時停止のための魔法装置を腕利きの冒険者に探索させている様子はあるが、果たして間に合うのだろうか。



 魔法はほとんど抜きで危険な野生動植物を乗り越え、”龍脈”に辿り着いた一行。アウローラが封印の術式を用意し、儀式魔術を進める間に、奴らはやってきた。


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「先客か。情報を漏らした者がいるな」

「恐らく、以前討ち取られたクエルヴめが魔法で漏らしたのでしょう。使えぬ男です」

「死者の口利きに干渉は出来ない。クエルヴは勇者であった。無用な誹謗は控えよ」

「それは失礼…」

“魔王の巫女”ヘラ=エイヴァリーと”魔界剣士”シモン=ヴァレリー

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 エノテラの斥候で襲撃を察知した一行。


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「籠城は無意味だな。流星を降らせる魔法メテオ・ストライクで一網打尽だ」

「打って出るしかないけど、魔法なしで勝つのは厳しくないか。エノテラの呪歌や前衛の錬技だけに頼るのは負担が大きすぎる」

「マリアの風の精霊召喚で積もった星雪を吹き飛ばし、その中で短期決戦をかけるなら、少しは影響がマシになるかもしれない」

「そのくらいしかないか…」

 ―戦闘前の作戦会議より

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 魔法の使用制限の不利を承知で、儀式をする洞窟から外に出て戦うことにした”星月巡り”一行。


 決死の覚悟で出撃したとき、奇跡は起きた。


 星雪が、止んでいる。


 ランドールで活動する冒険者たちが、間に合ったのだろう。


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「やれやれ、随分手こずったな。ま、見つけてしまえばガーディアンは敵じゃなかったが」

「巧妙に隠されていて、箱の中身をきちんと解析しないとわからなかったわね」

「レイカだけだと暗号読む奴が足りなかったな。悪いなトゥルー、国の仕事休ませちまって」

「やー、こっちはブランクが空いてたからなあ。でも、久しぶりにみんなと冒険出来て、良かったよ」


 ―冒険者グループ”星光の塔”

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 積もった雪を魔法で吹き飛ばし、簡易的ではあるが星雪の影響を受けない戦場を作り出す。

 一行は、現れた魔王たちと対峙した。


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「この星雪は、魔神デーモン不死者アンデッドは影響を受けない」

「普通の人間がはじまりの剣の呪いから逃れるには、魂の輪廻から解き放たれるよりほかはないのだ」

「ルミエルは既にない。砕けたかけらが未だ力を持っているとはいえ、人族の剣の加護はあと一千年程度で失われるだろう」

「蛮族の奴隷として生きるか、輪廻から解放され生きるか、どちらも選ばぬ愚か者は世界の罰が下るだろう」

“魔王”ゼガン=キルヒア=オーブレイ




「どちらも選ぶわけには、いかない」

「オーブレイはこの世界のルールを星雪を利用して変えようとしていたはずだ。なら、他の方法で運命を変えることだってあるかもしれない」

「お前は、キルヒア神の権能とオーブレイの知識を利用して、人の未来を自分の望むように操りたいだけの邪悪な存在だ」

「はじまりの剣は、自分を用いて敵を倒せと定めているらしいが」

「師匠から受け継いだ剣は、そうではないと教えてくれた」

「剣とは、力とは、大切な人や仲間を守るためにあると」


ライエルは、託された剣を手に取った。


「繋ぎ紡がれし想いよ、我に力を。汝は”聖心の剣ティルフィング”。世界に、平穏を齎すものなり」

「師匠とは結局会えなかった…だけど、師匠が遺してくれた剣で、お前を倒してみせる!」

 ―ライエル=クラージュ


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 因縁に決着をつけるべく、”魔王”ゼガン、”魔王の巫女”ヘラ、”魔界剣士”シモン、そして真理の杖ル=ニィダによって支配されたクリスとの直接対決となる。

 ほぼ全員が聖戦士の神器を所有しており、それは聖戦士と魔神王との戦いから数百年を経てなお、終わりなき聖戦の残滓のようであった。


 ===ボス戦闘===

”魔王”ゼガン=キルヒア=オーブレイ

“魔王の巫女”ヘラ=エイヴァリー

“魔界剣士”シモン=ヴァレリー

“白金の戦乙女”クリスティーナ=コーサル

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 ゼガンの《メテオ・ストライク》によって全てが薙ぎ払われる刹那に、バル=カソスが持つ”紅灼の拳”オヴェロンと、ライエル=クラージュの”聖心の剣”ティルフィングが魔王を打ち倒した。


 魔王はなおも、不完全ながらも支配していた”魔王の巫女”ヘラ=エイヴァリーの身体に自らの精神を移そうとしたが、マリアによって阻止され、魔王と呼ばれた存在は完全に消滅した。


 魔王を倒したあと、”しろがねの姫”アスタローシェ=アスランの身体を利用してこの世界に顕現した”戦神”ダルクレムが、”竜姫の牙”カルフを伴って戦場に現れた。彼女は魔王への意趣返しを目的としていたが、既に”星月巡り”によって打ち倒されていたため、かつての仇敵である主神ライフォスと会うと言い残し奈落の壁の向こう側へと、竜の背に乗って飛び去って行った。



 ダルクレムがイグニスを用いて魔神王を倒すと、最後のはじまりの剣が砕けて世界は消滅するかもしれない。奈落の壁の向こう側に行くには、墜落するタージを止めてもう一度制御するしかない。一行は意識不明のクリスを抱え、キングスレイ鉄鋼共和国へと舞い戻る。



 既にタージから対地巨大魔動砲が発射され、グランドターミナル駅は巨大な瓦礫の塔と化していた。事前に”星月巡り”一行から情報が渡っており、鉄道卿による避難命令が間に合っていたために人的な被害は抑えられていたのが救いであった。


 しかしそれを喜ぶ時間はない。次はタージそのものが落ちてくるのだ。一行は飛空艇を借り受け、タージの墜落を止めるために再び飛び立つ。



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「私は…私は、もしかしたら、望まれて支配されたのかもしれません」

「だって、私たちを利用するだけの人族も、私から全てを奪った蛮族も、みんな、死んでしまえと心のどこかで思っていたもの!」

「タージだって、このまま墜落して崩壊してしまった方が良いんじゃないかって、今でも!」

 ―”白銀の戦乙女”クリス

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 クリスの意識は戻ったが、自分を含めたこの世界に生きる者たちの愚かさを嘆き、逡巡する。だが、ただ1人のタージの管理者である彼女しか、タージを止められる者はいない。


 しかも、タージの自壊を止めるためには多くのセキュリティ認証が必要となっており、墜落を止めようとしても間に合わない可能性があった。


 レヴィンは、”終末の巨人”を制御していた《オーブレイの禁術》を用いて、人の精神と魔法都市の制御システムを直接繋ぐことで速やかにコントロールを取得する方法を提案する。しかし、そのためには誰かが肉体を捨てる必要がある、非業の提案であった。


“星月巡り”一行は自分が制御を担当する、と口々に言うが、それをクリスが止める。


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「もうやめて!これ以上、私を惨めにさせないで!」

この神器クラウストルムを手に入れた時、私は世界を変えられるかもしれない、と思っていたわ」

「でも、皆さんと一緒に冒険して、そんなものは幻想に過ぎないとわかっていった」

「この世界は、誰かの行動で全てを良くするには広すぎて」

「イオさんを殺してまでしても、生きて欲しかった人さえ守れなくて」

「そのうえ、誰かの都合のいい人形にならなければならないの」

「そう、思っていたのに」

「それでも誰かが、誰かのために生きないと、きっと世界は良くならないんだ」

「偽善と不合理に塗れても、善く生きようという意思だけは、忘れちゃいけないんだ」

「皆さんが、そうであるように」

 ―”白銀の戦乙女”クリス

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 クリスは”曙光の槌クラウストルム”を一行に預けると、タージの魔力炉へとその身を躍らせ、消えていった。


 タージの落下ベクトルは徐々に弱まっていき、墜落までほんのわずか、というところで空中都市は完全に制御を取り戻した。


 ダルクレムを止めるため、”星月巡り”一行は、タージを利用して奈落の壁の向こう側へ行くことになる。かつて聖戦士たちが最後の決戦を迎えた時の如く。


 果たしてはじまりの剣の世界はどうなるのか?


 そして奈落の壁の向こう側にあるものは…


 次回、最終回。



【今回の登場人物】

 セッション参加キャラクター

 ライエル=クラージュ(ファイター12)

 マリア=エイヴァリー(フェアリーテイマー12)

 ドラコ=マーティン(コンジャラー12)

 バル=カソス(グラップラー12)

 エノテラ=テトラプテラ(バード12)




“魔王”ゼガン=キルヒア=オーブレイ 

 種族:レブナント 性別:男性 年齢:約350歳


 はじまりの剣が生み出した魔神を支配し、世界のコントロールを目論む人物。”真理の杖ル=ニィダ"の継承者。”賢者”オーブレイは死後、自身の精神を魔杖に封印し、いずれ”賢神”キルヒアが世界の真実を携えて地上に降臨するとき、その知識を乗っ取り、利用して魔神を消滅させることを目論んでいた。

 しかし”大破局”の混乱においてルセア王国の宮廷魔術師ゼガンは自身による世界征服の野心を目論み、ル=ニィダを媒介に”賢神”キルヒアを地上に顕現させた結果、3者の精神は混ぜ合わさり、3者の誰とも付かない、膨大な知識と魔力と野心を持った存在が生み出された。それがこの魔王である。

 その肉体は既に限界を超えており、活動に大きな支障をきたしている。よって新たな転移先を探すと共に、魔神王を倒しうる存在であるイグニスが振るわれることがないよう、蛮族をコントロールしようとしていた。

 現在の肉体の転移先の候補のひとつであったクリスティーナ=コーサルを伴い、儀式に必要な魔力を確保するために龍脈を訪れたが、キルヒアの解放を目的としたル=ロウドと龍脈の正体を知るアウローラの導きによって”星月巡り”との対決を余儀なくされ、敗れる。




“魔王の巫女”ヘラ=エイヴァリー 

 種族:エルフ 性別:女性 年齢:107歳


 前回「偽りの太陽の祈りを」に続き登場。

 マリアの姉で”希望の杖コルヴァーナ"の継承者。

 かつて地上に降臨した聖戦士のスキームを恣意的に再現するべく、"魔王"ゼガンが大陸移住者のコミュニティを乗っ取ったうえで神の器として選ばれたエルフの勇者。

 ヘラの魂の器の成長をもって計画を実行に移す予定であったが、妹のマリアが姉の変質を恐れて儀式に必要な魔法具を破損させたことで降臨の儀式魔術が失敗、半端な神性がヘラの魂を蝕み、魔神を使役する邪悪な神官として覚醒してしまった。

 リルドラケンの勇者クエルヴ=マーティンはアンデッド化しながらも彼女を気に留めており、魂の歪みと穢れを正す方法を模索していたが、彼女に心酔する”魔界剣士”シモンの干渉で上手くいかないままクエルヴは滅び、手だてを失っていた。

 ヘラ自身は優れた格闘家にして神官。人格も高潔でマリアを含め周囲に慕われる人物であったが、最後まで魔王の支配から逃れられることはなく、滅んだゼガンの仮の依代として利用されそうになったところをマリアの手によって阻止され、滅びを迎える。


“魔界剣士”シモン=ヴァレリー 

 種族:エルフ 性別:男性 年齢:103歳


 最終部第1話「シュプールに花束を」以来の登場。

 魔王に与するエルフの魔法剣士で”蒼玉の剣グレイプニル"の継承者。

 テラスティア大陸から移住してきたコミュニティの一員であり、その縁でヘラと知り合い、私淑するようになる。ふとしたことから魔神と奈落がこの世界に生み出される原因を知り、真実を知る魔王に与して特別な地位を得ようとしていた野心家。

 狂信的な者が多い魔王の取り巻きの中ではまだ自我を失っていない方で、次の魔王となる可能性が高いヘラの状態と立場を守るため、多くの策謀を通して暗躍することが多かった。

 ヘラの更生を願っていたリルドラケンの勇者クエルヴを”聖剣の護り手”ヴィオラとぶつけて共倒れを狙ったり、精神の安定に寄与する聖戦士の神器を”星月巡り”から奪ったりするなど、知略に敏くそれを実行するだけの実力も備えていた。

 しかし最後の戦いではそのような策謀の通じない正面からの対決となり、敗北を喫する。


 "聖剣の護り手"ヴィオラ=カルティ

 種族:エルフ 性別:女性 年齢:430歳


 第二部最終話「遥か雲路の果て」以来の登場。

 高名なエルフの老剣士でライエルの師匠。"聖心の剣ティルフィング"の継承者。

 タージ探索時の戦いでオルエンに敗れ、蛮族のコミュニティ内で虜囚を強いられていた。同じく捕らえられていた"予見者"アウローラ=クラージュと共に脱出に成功するものの、片腕を使用不能なほど傷つけられるなど損耗が激しく、ほとんど戦うことは出来ない状態であった。だが、かつて守れなかったアウローラを今度こそ守り抜くという意思は固く、彼女に龍脈の知識と聖剣を託し、自分たちを追ってきた魔王の配下、"絶望の騎士"ウォルニルと戦い、アウローラが逃げる時間を稼いだ上で敗れ、死亡する。聖戦士の一人"剣聖"クラウゼから「皆が人を護るために剣を使うのなら、世界は変われるのではないか」という教えを受けており、それは聖剣を通じてライエル=クラージュに引き継がれることになった。


“予見者”アウローラ=クラージュ 

 種族:人間 性別:女性 年齢:30歳


 未来を垣間見るなど、特別な能力を持つ人間。ライエルの姉。

 その力を利用しようとした蛮族が里を襲撃し、それから長く蛮族の捕虜となる。弟のライエルは修行の旅のため里を離れており、生き別れとなっていた。

“忘れられた都市”タージを手に入れるため、”しろがねの姫”アスタローシェ=アスランら蛮族たちに協力を強いられていたが、旧知の”聖剣の護り手”ヴィオラ=カルティが蛮族の捕虜となった折に再会し、彼女の協力もあってタージを脱出する。

 蛮族や魔神からの追撃を辛くも逃れていたが、ヴィオラはその途中で命を落としてしまう。形見のティルフィングを預かり潜伏していたが、その場所を捕捉したル=ロウドの導きによって”星月巡り”に救出され、ライエルとも再会した。


“自由なる風”レヴィン=プラデッシュ 

 種族:人間 性別:男性 年齢:外見30歳


 第三部第4話「燃ゆる陽炎」以来の登場。

 いつの間にか”星月巡り”に接触してきた天真爛漫な吟遊詩人。

 その正体は風来神ル=ロウド。はじまりの剣カルディアを用いて、初めて魔神王と戦い、これを倒した。”賢神”キルヒアとは盟友で、”大破局”の混乱を収めるべく地上に顕現したはずのキルヒアがゼガンの肉体とオーブレイの精神に囚われ身動きが取れなくなり、彼の救出を願っていた。

 ル=ロウドはアルフレイム大陸において信仰の文化がなく、神としての力はほとんど持っていないが多くの知識を持っており、魔王と戦う"星月巡り"一行をサポートする。タージの墜落を防ぐために《オーブレイの禁術》を利用して、ひとりの犠牲で多くを救う選択肢を示した。墜落阻止後は"星月巡り"一行と共に、タージを用いて奈落の壁の向こう側へと赴くことになる。



“白銀の戦乙女”クリスティーナ=コーサル 

 種族:人間 性別:女性 年齢:17歳


 前回「偽りの太陽に祈りを」に引き続き登場。

 聖戦士の末裔で”曙光の槌”クラウストルムの継承者。

 タージの戦いで管理者として登録されるが、世界の真実を知ってなお蛮族を仇として認識する弱さを突かれて既に魔王によって支配されており、タージを墜落させる動きを実行させてしまう。

 魔王との戦いが終わり正気を取り戻すが、タージを止めても、それはまた人族の新たな争いを生み出すのではないか、同じ状況で利用されながらも気丈に振舞っていたイオーレ=ナゼルの殺害に関わっておきながら、自らの弱さを認められずに安易な復讐心に逃げていた自分に絶望し、逡巡する。

 しかし、誰かが犠牲にならなければタージの墜落阻止を出来ないという状況に至り、彼女は自らの精神を直接タージの制御システムと接続する。それは肉体を失う行為であり、別れを意味していたが、彼女は決意と共にクラウストルムを恩人の”星月巡り”に託すと、タージの魔力動力炉へと姿を消していった。





【次回予告】


 この世界は3本のはじまりの剣が造り出しました。


 3本の剣は自らが振るわれることを望み、


 ライフォスがルミエルを手に取り


 この世界に人族と文明を作り上げました。


 ダルクレムがイグニスを手に取り、


 この世界に蛮族と法則を生み出しました。


 キルヒアがカルディアを手に取り、


 この世界に魔法と運命をもたらしました。


 あれから続く、夢の底の底にて、最後のはじまりの剣は鈍く輝く。


 “剣の世界”ソード・ワールドは焉んぞ志あらんや。


 ソード・ワールドRPG、最終回「一万年の夢の終わりに」






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