最終部第3話「偽りの太陽に祈りを」

 蛮族に占領された空中都市タージへの潜入。


 飛空艇の離陸の準備を進める間に、オルエンの首を狙う賞金稼ぎ達による邪魔が入るのを防ぐために、”星月巡り”一行の大半は迎撃に回らざるを得なかった。


 飛空艇に乗り込むことが出来たのは、セルゲイ、エノテラ、オリヴィエ、シアン、クリス、そしてオルエンの6名。


 この2年足らずの間に、地位を認められた蛮族はオルエンの飛空艇で空に上がり、タージ内で独自のコミュニティを形成しているらしい。

“星月巡り”一行は蛮族への変装を済ませ、タージに降り立つ。6人で奪還が可能だとは考えていないが、目的は二つ。


 第一の目的は、タージの状況を把握し、情報を持ち帰ること。


 第二の目的は、囚われの身のはずの”聖剣の護り手”ヴィオラ=カルティの救出である。


 オルエンとの一騎討ちに敗れたヴィオラは聖剣を奪われ、片腕を二度と使用不能なほどに痛めつけられた上で幽閉されているということであった。


 オルエンの魔動機術プリズムエフェクトやクリスの操霊魔法イリュージョンを駆使してタージ内を探索し、虜囚を捕えている一角に辿り着いたが、そこは既にもぬけの殻であった。


 処刑が実行されたのだろうか、と考えた一行はナイトメアのセルゲイが蛮族の振りをして情報収集を行う。それによると、どうやらヴィオラは、別のもう1人の虜囚と共に蛮族を欺き、満身創痍ながら脱出艇でタージから脱出したようであった。ヴィオラが共に脱出したもう一人の虜囚は人間の女性で、蛮族にとっての重要人物であった。


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「アウローラ=クラージュという人間の女が、長く蛮族に飼われていたわ。彼女は特別な予見の能力があり、未来を朧げに見通す力があった。その力を当てにしていた蛮族は彼女を丁重に扱ったうえで、行動の指針にしていた節があったわ」

「ちょ、ちょっと待っとくれ!」

「私も何度か目にしたけれど……何か他に説明が必要?」

「いや、説明は要らん…名前をもう一回」

「アウローラ=クラージュ。蛮族は単に”予見者”と言っていたわ」

「……確か、ライエルには蛮族に誘拐された姉がいたはずじゃ」

「ライエル……ヴィオラの弟子の剣士ね。あの時のヴィオラの態度は……そうか、なるほど」

 エノテラとオルエンの会話より

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 ヴィオラと共にタージを脱出したという、蛮族に知見を授けていたライエルの姉・”予見者”アウローラ=クラージュ。彼女は特に”しろがねの姫”アスタローシェが重用していたようだ。

 アスタローシェが蛮族連合の中でも指導的権力者の地位にあるのは、”蛮族王”ムーレイズの娘であると共に、”予見”によって「はじまりの剣と共に魔神王と戦う運命の子」であると示されたことも影響していた。

 オルエンは、前回の戦いから魔神王が復活するにはあまりに短い時間しか経っていないことを根拠にその予見を軽視していたが、その他の実績から、彼女の”予見”は蛮族のコミュニティの中で重要な位置にある様子であった。


 おそらく、蛮族が政治的混乱にあるのは、その”予見者”がヴィオラの手によって救出され、予見を得られる手だてが無くなったことが影響しているのではないか、と一行は予測した。


 ヴィオラの不在と蛮族の混乱が判明はしたが、調査の間に蛮族の一部過激派勢力が地上への巨大魔動砲の使用を求めて蜂起し、飛空艇への帰還が困難になってしまった。魔動砲は管理者不在であっても聖戦士の神器による認証で一度だけ発射が可能であり、以前はオルエンの”神滅の銃ラグナレク”とヴィオラから奪った”聖心の剣ティルフィング”を利用した。地上でキルケー=ランカスターが指摘した通り、蛮族は新たな聖戦士の武器"闇夜の棍アイムール"を入手しており、それによって1度だけ使用が可能な状況のようだ。


 この騒動が暴発し、巨大魔動砲を人間が住む都市部へ発射されれば壊滅的な被害が出る。混乱を鎮めるために”蛮族王”ムーレイズの威光を利用することを考えた一行は、セルゲイの機転と弁舌殴り合いでムーレイズの護衛役を務めるトロール・”金剛石の”ゼイドを巻き込み、蛮族王との会談の機会を得る。


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「いかにも、我がイグニスの所有者だ。もはや振るうだけの力は残っていないがな」

「我々蛮族は肉体的に優れるゆえに個の独立心が強く、一方で組織力は人間に比べて弱い。そのように意図したのだろうな、はじまりの剣が」

「個としては弱くとも人の社会はしぶとい。魔動機文明の壊滅的な滅びを経てなお、この大陸の大多数を人間の社会が占める」

「娘や、一部の過激な者は、『はじまりの剣を持たぬ人族は世界の意思に背いている、正しいのは我々だ』と考えているようだが…一面からしかものを見ていない、愚かなことではある」

「だがな、賢しいだけでは、何も変わらぬのも一面の真理だ」

「論を説き理を以てしても、言葉だけでは個は動かぬ。時には暴力でもって歴史は動かされてきた。熱狂と混沌の極みが、世界の変革を成し遂げてきた」

「……300年以上前に、愚かなドレイクが剣を取った時も、そうであった。あれだけの隆盛を誇った魔動機文明が滅ぶなど、当時の誰も思わなかったであろう。我がイグニスのみで成し遂げたわけではない。蛮族の稀なる団結、魔神の跳梁、人族の自壊、様々な側面があった」

「タージを我々が十全に使いこなせないであろうという指摘はもっともだ。力を至高とする我々は、このタージを利用して人間の社会と交渉するようには出来ていない。後先考えずに幾つかの国を亡ぼすのが精々であろう」

「だが、タージより放たれし滅びの光が、世界を…そしていずれ魔神王と戦うことになる我々蛮族を変えていく光となるのであれば、人はそれを世界の業として受け入れざるを得ないだろう…」

 ー”蛮族王”ムーレイズ=アスラン

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 ムーレイズは穏やかに一行の会談を受け入れ、アスタローシェの独断専行を愚かなこととした。だが一方で理性と論理では世界は変わらない、熱情と混沌の極みこそ世界変革を成しうるとして、自らこの騒動を収めるつもりがないことを示した。


 無理に飛空艇を回収することは過激派を刺激し、巨大魔動砲の発射に繋がると考えた一行は、せめてタージの管理権限を奪回することを決意する。


 タージのメインコントロールタワーに入場するためには2ヶ所に別れるセキュリティシステムを同時に解除しなければならない。一行は二手に別れることにした。セルゲイ、エノテラ、オリヴィエの組み合わせで一つ、オルエン、クリス、シアンの組み合わせで一つ。


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「雑兵はともかく、アスタローシェやビュリを相手にするには、今の戦力では厳しいでしょう。もし困難な障害に当たったとしても、オルエンさんがコントロールタワーに突入できるよう、少しでも時間を稼ぐことを優先にしましょう」

「そうだな、シアンちゃんの分析は正確だ。だがな」

「最初から負けるつもりで戦うのも不健全だ。勝ってしまっても、一向に構わないと思うがね?」

 ―セッション中、シアンとセルゲイの会話より

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 かつて探索した経験が幸いし、セキュリティシステムの位置は把握できている。

 魔法の品物通話のピアスで連絡を取りつつ蛮族の警戒網を突破し、セキュリティシステムを解除したが、蛮族側も黙ってはいない。

 ”星月巡り”一行と何度も刃を交えた仇敵、”しろがねの姫”アスタローシェと”黄鉄鉱の”ビュリが行く手を阻んだ。


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「よう、久しぶり。遅かったじゃないか」

「ほう、言うに事欠いて。のこのこと舞い戻ってきたか。ならば良し、愚かなお前たちを地に這わせ、決着をつけるとしよう!」

「……吾輩は解せぬな。お前たち、どうやってここまで来た?」

「答える必要はありません。決着をつけるのは、こちらとしても望むところ!」

「さぁて…どこまでやれるかのう」

 ―戦闘前のやり取りより

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 ====ボス戦闘====

 ドレイクカウント(”しろがねの姫”アスタローシェ)

 ディアボロキャプテン(”黄鉄鉱の”ビュリ)


 ※ディアボロは1ラウンド目終了時に戦闘から離脱

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 現状の戦力では、勝ち目は無いに等しい陽動戦であったが、”黄鉄鉱の”ビュリはすぐに一行の狙いに気付いた。


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「アストよ、我々は計られているぞ。こいつらは金目の女の飛空艇で来たとしか考えられぬ。狙いは管理権の掌握……まさか、あの赤毛の女は既に死んでいるのか?」

「ならば、この者如きは私一人で打ち倒して見せよう!ビュリ、貴公はコントロールタワーに行け。動けて力のある者も連れて行くのだ。あの女が裏切ったのなら手強い」

「吾輩としては逆でも良かったのだがな…まあいい、時間が惜しい」

 ―”白金の姫”アスタローシェと”黄鉄鉱の”ビュリ

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 ビュリが戦線を離脱し、完全に絶望的な戦闘ではなくなる。しかし、それでもアスタローシェは強かった。


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「剣とは戦場において敵を斬るためのもの!永劫の争いこそがはじまりの剣の意思であり、世界の理だ!」

「強者を妬み、弱者を掬う、貴様たち人間の社会たるものが剣の地位を下げようとしている、それこそが世界の意思に反する振る舞い!」

「魔剣を抱いて世界に立つ我らドレイクこそが、はじまりの剣に意思に沿う誇り高き種族ぞ」

「このタージは、来るべき魔神王との戦いに必要なもの、我々にとって太陽の如き道標だ!」

「貴様らには絶対に明け渡しはせぬ!」

 ―”しろがねの姫”アスタローシェ

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 アスタローシェは深紅の瞳を持つ純白のドラゴンへとその姿を変えた。真の姿をもって、全力で”星月巡り”一行を打ち倒さんとする。


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「アスタローシェ……あんたは佳い女だ。世が世なら結婚したいくらいだ」

「俺も、昔はあると思っていたよ。”絶対の正義”って奴がな」

「正しき力と、それによって実現する正義。気持ち良すぎて、いつも、誰もが足元を見失うんだ」

「天の太陽ばかり欲しがって見上げてばかりで、地にある石ころに気付かず、倒れて糞に塗れてしまうんだ」

「あんたに太陽タージは扱えない。それだけは真心から訴えさせてもらうぜ」

「さて、やるか……!」

 ―セルゲイ=ゲラシモア

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 戦いは、長く激しいものとなった。両者は全力で、最後の最後まで戦った。


 勝利したのは、アスタローシェであった。


 ほぼ全ての魔法を撃ち尽くし、片翼をもがれたが、それでも彼女は”星月巡り”一行の全員を打ち倒すと、そのままコントロールタワーへ向かった。


 どれだけの時間が経っただろうか。全滅した一行は、”金剛石の”ゼイドによる回復魔法で目を覚ました。


 ゼイドによると、何か良からぬ者がタージに潜入したとだけ言い残し、”蛮族王”ムーレイズが行方不明らしい。ゼイドは一行が何も知らぬことが判ると再び殴り倒そうとするが、セルゲイが弁舌で上手く丸め込み、ムーレイズが向かったであろうコントロールタワーの様子を共に調べることにした。


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 タワーの入口では、半壊したシアンが力無く横たわっていた。恐らく、蛮族の追っ手を一人で食い止めていたのだろう。まだ息はある。応急手当だけを済ませ、奥に進む。


 戦いのほとんどは、終わっているようであった。


“黄鉄鉱の”ビュリは既に倒れ伏しており、


 重傷を負って膝をついたアスタローシェに、オルエンが至近距離で銃を突きつけた状態で、ムーレイズと向かい合っている。人質のつもりだろうか。


 クリスの姿は見えない。オルエンもかなりの重傷で、あまり余裕はなさそうだ。


「ぐっ、この……卑怯な、裏切り者め……」


 息も絶え絶えのアスタローシェが、眼光だけは鋭くオルエンを睨む。


「聞き飽きたわ。この三百年で何度似たような言葉を聞いたか、思い出せないもの」


 オルエンはあなた達を目で制し、軽く舌打ちをした。”金剛石の”ゼイドがあなた達を人質にしていると思ったのだろう。もっとも、当のゼイドはムーレイズの方を見やるばかりで思考が追い付いていないようだ。


 当初の予定を変更し、クリスがさらに奥のコントロールルームにいるのだろうか?

 だとしたら、あなた達の勝利は目前だが…


 ―セッション内描写より

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“星月巡り”一行も最低限の回復しか施されておらず、この場に戦闘力があるのはオルエン、ムーレイズ、ゼイドのみ。クリスがタージのコントロールを奪うまでの時間を稼ぐべきと判断したセルゲイは、再び弁舌で引き伸ばしを図ろうとするが、その膠着は思わぬ形で破られた。


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「成程な。あの予見者、出鱈目を吹き込んでいるとばかり思っていたが、真であったか」

「我が老いさらばえて尚、永らえたのは、この時のためであったのだろう」

「イグニスよ、運命を開く扉よ!世界の意思を預かり幾星霜、今こそ剣を奉還しよう!」


 ムーレイズは神々しい剣を召喚した。魔神王を倒すことが出来る唯一の武器にして、魔動機文明の滅亡を招いた剣。最後のはじまりの剣、イグニスだ。

 その剣はまるで意思を持っているかのように、

 オルエン達の方へ真っ直ぐ飛んでいき、

 正確に、アスタローシェの眉間を貫いた。


 世界が、爆ぜる。


 光と爆音が空間を包み込み、その場にいた者は思わず目を覆った。


 少しずつ薄目を開けていくと、空間の中央にアスタローシェが立っていた。あれだけあった傷が全て癒えている。


 いや、あれは本当に”しろがねの姫”なのか?瞳の色が真紅から灰に変わっている。


「うむ、良い風だ。血の匂いが香る」

「ここが、地上か」


 ―セッション内描写より

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 ムーレイズの命を引き換えにしたイグニスによる干渉により、この地上に旧き神の一柱が肉体を持って降臨した。かつて、聖戦士たちがそうであったように。


 神の名は、《戦神》ダルクレム。蛮族を守護する荒神だ。


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「金目の女。お前が一番強そうだ。少しこの身体に慣れておきたい。相手をせよ」


「神というものは、どこをとっても身勝手で、気に食わない連中ね…」


 ―"戦神"ダルクレムと"最後の聖戦士"オルエン=ルーチェ

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 ダルクレムはその場で最も力ある者、オルエンとの戦いを望んだ。連戦で消耗の激しいオルエンは不利を承知で戦いに臨もうとするが、そこで戦場に変化が起こる。


 タージの管理権を手に入れたクリスが、自在に形状を変化させられる魔法障壁を利用し、タージの外にダルクレムとオルエンを排出したのだ。空中に放り出された両者であったが、共に飛行が可能なため滞空し、状況を確認する。


 さらにそこへ、クリスはタージの巨大魔動砲の照準を両者に向ける。アスタローシェもオルエンも、クリスにとっては肉親と故郷の仇だ。アスタローシェは彼女がまだ村娘だった頃に故郷を滅ぼし祖父を殺した張本人であり、クリスの故郷の隠れ里にタージを再起動するためのキーが保管されている情報を蛮族に流したのはオルエンであったと、”金剛石の”ゼイドがムーレイズとの会談の折に口を滑らせていた。


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「ねえ、私を、私を置いていかないでよ!」

「私の憎しみを、勝手に止めないで!」

「助けて欲しいから、欲しいなら、消えてしまえ!」

―"白銀の戦乙女"クリス

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 復讐を考慮に入れたとしても、今のクリスの状態は正気を失っているように見えた。”金剛石の"ゼイドがコントロールルームに突入して発射を阻止しようとするが、魔法障壁に阻まれて叶わない。マナ不干渉の性質を持つグラスランナーのエノテラだけが、障壁を突破してクリスを止めるために飛び込んだ。


エノテラは間一髪でクリスの凶行の阻止に成功する。だが、安堵も束の間、彼らの背後には介入者の影があった。いつの間に侵入していたのか、その介入者とはハルシカ商協国で戦った”魔王の巫女”ヘラ=エイヴァリーであった。


 彼女はエノテラを叩きのめすと、シモンが"星月巡り"から奪っていた"希望の杖コルヴァーナ"を媒介に巨大魔動砲を発射。本来は戦略兵器のはずのものが個人へと使用され、空中のダルクレムとオルエンは爆炎の中へ消えていった…


 そしてもう1名、これまで噂に挙がりながらも表舞台には出てこなかった黒幕が姿を現す。


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「遠隔の、短時間での洗脳ではこんなものか。やはり計算通りにはいかないな…」

「グングニルを持つティエンスの女には支配が効かないか。何か対策をしているようだ」

「まあいい。タージの魔動砲をキングスフォールに向けて撃った後、降下させることくらいは出来るだろう」

「少々迂遠だが、仕方あるまい…」

 ―魔術師風のローブを着た人間

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 魔術師風の男がいた。瞳の色が金色だ。恐らくはレブナントだろう。

 そしてその男の風貌は、タージ脱出時に見た夢の中で、姿


 クリスは、どうやらそのローブの男に操られている様子であった。男の手には神々しい杖が握られている。

 レヴィンことル=ロウドから聞いていた。”賢者”オーブレイが持っていた神器、”真理の杖ル=ニィダ”には、他の神器の継承者を支配できる能力があったと…


 恐らく目の前のレブナントには、かつて《大破局》の折、カルディアから生み出された知識の神・キルヒアが降臨していたのだ。だが、目の前で邪悪な行動を取り仕切るその存在はとてもキルヒアそのものには見えない。一行は直観した。聖戦士のごとく降臨した身体と精神の両方を乗っ取った存在がいる。


 男は名乗った。


 =====

「身体は滅んだ王国の宮廷魔術師」

「魂はこの世界を制御するために降臨した一柱の神」

「そして精神は、この世界を変革するために存在する、見捨てられた獣」

「この存在を言葉によって規定するなら、ゼガン=キルヒア=オーブレイと名乗ろう」

「星雪を止められるわけには行かなくてね、滅びの近い身体に無理を押すことになった」

「さらばだ、剣の意思に縛られし英雄たちよ」

 ―”魔王”ゼガン=キルヒア=オーブレイ

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 ゼガンはクリスを操りタージの挙動を入力させ、彼女を拉致してヘラと共に姿を消した。アスタローシェとの死闘で力を使い果たしていた一行は、それを見送ることしか出来ない。


 このままでは、タージは自動入力によりキングスレイ鉄鋼共和国の首都キングスフォールを爆撃し、その後降下して大質量で以て地上を押しつぶす。

 大陸最大の国家の滅亡は免れず、さらに世界中から魔法を奪う星雪を止める手段を失う。


 果たして、一行は魔王からクリスを取り戻し、墜落するタージを止めることが出来るのだろうか?


 次回へ続く。



【今回の登場人物】

 セッション参加キャラクター

 セルゲイ=ゲラシモア(アルケミスト12)

 エノテラ=テトラプテラ(バード12)

 オリヴィエ(フェンサー12)




“しろがねの姫”アスタローシェ=アスラン ⇒ "戦神"ダルクレム

 種族:ドレイク 性別:女性 年齢:65歳


“蛮族王”ムーレイズの娘にして、タージの支配者。タージ占領後、その力をどのように行使するかを巡って他の蛮族の有力者と権力闘争を行っていた。

 蛮族に知見を授けていた”予見者”アウローラ=クラージュから、「はじまりの剣イグニスを以て魔神王と戦う運命の子」と予言されていた。

 社会を構築する人族を「はじまりの剣の意思に沿わぬ愚か者ども」と断じ、武器を取って強い者が上に立つ世界こそが自然の流れと信じており、地上を力によって支配しようとしている。

 タージの制御権を奪回しようと潜入してきた”星月巡り”の挑戦を受け、全力をもって戦った。余力を使い果たす死闘となるが、彼らを打ち負かすことに成功する。その後、消耗もありオルエンとの連戦では敗北して追い詰められていたところ、ムーレイズの持つイグニスを触媒として、”戦神”ダルクレムが彼女の身体を利用して降臨し、顕現する。

 オルエンとの戦いの中途でタージから排出され、巨大魔動砲の直撃で爆炎の中へと消えるが…



 "黄鉄鉱の"ビュリ=ルテギア

 種族:ディアボロ 性別:男性 年齢:36歳


 蛮族連合の幹部。タージ占領後、アスタローシェと共に指導的立場に携わっていた。力による支配を望み自己の感情を優先するアスタローシェに比べ、視野が広く深い思考を持つ彼が、実質的な参謀として機能していたようだ。

 "星月巡り"一行の存在を目撃してすぐに彼らの目的と行動を察知。コントロールタワーを防衛するべく一行との戦闘を離脱した。タワーの入口でシアン=ノウフェイスと戦いこれを撃破する。"最後の聖戦士"オルエン=ルーチェとも戦い、接戦となるが、"星月巡り"との激戦で消耗したまま合流したアスタローシェを人質に取られる。蛮族の仲間意識は希薄のはずだが、それでも一瞬の隙が出たか、そこを突かれて敗北した。



 "金剛石の"ゼイド=トーラズ

 種族:トロール 性別:男性 年齢:50歳


 蛮族連合の幹部。タージ占領後は老齢の"蛮族王"ムーレイズの護衛役として役割を与えられていた。肉体的に優れた勇猛な戦士だが知謀に疎いところがあり、仇敵のはずのセルゲイの口八丁に良く丸め込まれていた。護衛しているはずのムーレイズが姿を消したことで慌てふためき、アスタローシェに敗れた"星月巡り"一行を治療してまで行先を聞き出そうとした。コントロールタワーの戦いにおいて最後の局面まで戦闘力を保っており、タージを去ろうとした魔王一派と単身戦うが、"魔王の巫女"ヘラ=エイヴァリーに敗れる。



“白銀の戦乙女”クリスティーナ=コーサル 

 種族:人間 性別:女性 年齢:17歳


 愛称クリス。オルエンや”星月巡り”と共にタージに突入した聖戦士ティダンの末裔。

 自分の故郷を滅ぼし、祖父を殺害した仇・アスタローシェ=アスランとの対決を望んでいたが、タージの管理者となる資格を持っていたために渋々オルエンのバックアップに回る。ムーレイズとの会談の折に、オルエンが自身の故郷を亡ぼす出来事の引き金を引いたことを知り、煩悶する。

 オルエンとアスタローシェの対決の隙にタージのコントロールを掌握した後、両者を管理者権限でタージの外へ排出し、巨大魔動砲の使用を試みる。発射はエノテラに阻止されたものの、その言動は明らかに正気を失っていた。"真理の杖ル=ニィダ"の能力によって精神を支配されていたことが示唆されており、”魔王”ゼガンによって拉致され行方不明だが、墜落するタージを止めるには彼女を取り戻さなくてはならない。



“最後の聖戦士”オルエン=ルーチェ 

 種族:ナイトメア 性別:女性 年齢:444歳 


 420年前に魔神王を倒した聖戦士の最後の生き残り。タージを蛮族に明け渡すべく暗躍した張本人であったが、"埋もれた都市"サステイルにおける会談を通じてタージの再封印に協力する決断をし、自身の所持する飛空艇でタージに帰還する。

 蛮族からは裏切者と謗られるが、彼女の生きてきた数百年の間、彼女はあらゆる勢力から裏切者扱いされており、強烈な自己確立と不遜な態度は最後まで崩れないままであった。

 コントロールタワーでの戦いにおいて、シアンを倒して自身に追いついてきた、"黄鉄鉱の"ビュリと対決。苦戦するが、"星月巡り"との決戦で大きく消耗したまま戦闘に参加したアスタローシェを一蹴した上で人質として利用し、ビュリを撃破する。

 その後アストがダルクレムとして覚醒し連戦を強いられる。消耗した不利な状態ながらも善戦するが、クリスと魔王の干渉によってタージの外に排出された上で、ヘラ=エイヴァリーの手によって本来戦略兵器のはずの巨大魔動砲を自身に向けて放たれ、閃光の中に消える。巻き込まれる直前、上空からタージの”星月巡り”に向けて自身の神器”神滅の銃ラグナレク”を放り投げたように見えた…



“蛮族王”ムーレイズ=アスラン 

 種族:ドレイク 性別:男性 年齢:約550歳


 最後のはじまりの剣イグニスを有する蛮族達の王。ドレイクの平均寿命を大きく超えて生きており、その姿は干からびた老爺の様だが、頭脳は明晰。魔神王との戦いに勝利し、その副産物として生み出された戦略都市タージと終末の巨人が蛮族を滅ぼそうと稼働するなか、はじまりの剣イグニスを手に取った壮年期のムーレイズは、天を裂き地を割る大戦争を蛮族を率いて戦った。魔神も第三勢力として跋扈するなか、魔神王と戦った”勇者”ライフォスの曾孫である人間の勇者エルヴィンと盟約を結び、互いの最終兵器を封印することになった。この争いが《大破局》として人々の記憶に刻まれることになる。

 かつての仲間ハルーラを魂の牢獄から解放させたかったオルエンの働きかけと、いずれ復活する魔神王との戦いの手段を必要とする思惑が一致した結果、娘のアスタローシェを使いタージを占領し、その運用は後進の世代に任せる腹積もりであった。

 オルエンが再びタージを封印するつもりだと判り、魔神王と戦う手段を失う瀬戸際となったところで、娘のアスタローシェにイグニスを媒介として戦神ダルクレムを降臨させることを選ぶ。



 "魔王"ゼガン=キルヒア=オーブレイ

 種族:レブナント 性別:男性 年齢:不詳


 "魔界剣士"シモンや"魔王の巫女"ヘラを通じて存在は語られていた、魔神を使役する勢力の首魁。《大破局》の折に魔神に味方したとされる、旧王国ルセアの宮廷魔術師ゼガン、聖戦士たちと同じスキームによって《大破局》による崩壊を制御するために地上に降臨したまま行方不明になっていたとされる賢神キルヒア、そして星雪によってこの世界から魔法を封じ、魔神を消滅させようとしていた聖戦士オーブレイの3つの名前を名乗る。オーブレイの神器"真理の杖ル=ニィダ"の能力で復讐心に囚われていたクリスを支配。彼女がタージの管理者としての権限を持っていることを利用し、タージの巨大魔動砲発射と地上降下の挙動を入力させ、行方をくらます。





【次回予告】


 この戦いはいつから始まっていたのか。


 古の都が蛮族に奪われた時からか?


 孤高の魔女が旧き友を助けようとしてからか?


 蛮族の王が運命の剣を握ってからか?


 聖戦士たちが魔神王を倒してからか?


 それとも…全ては始まりの剣の意思でしかないのか。


 否、希望なき世界においても


 人は人を守るため、運命の扉を押し開くものぞ!


 ソード・ワールドRPG最終部第4話「魔王訣戦」




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