第一部第2話「緋色の魔の手」
“星月巡り”の一員、剣士ライエルを指名した依頼が、冒険者の店よりもたらされた。
ハーヴェス王国の北、ディガット山脈にある山間の隠れ里に、手紙を届けて欲しいというものだ。依頼書にはライエルの剣の師匠、ヴィオラ=カルティの署名があった。
そう危険な依頼ではないように見えたが、そう思えたのは隠れ里から黒煙が挙がっているのを目にするまでのことであった。
隠れ里はゴブリンやボルグなどの蛮族が跋扈しており、この隠れ里は人族の天敵によって襲撃されていたのだ。
付近を探索すると、村から逃げ出した一団が山中に逃げ込んでいた。村長の孫だという少女クリスに代表して話を聞いたところ、村は二日前に統率された蛮族の軍勢に襲われてしまったということであった。年老いた村長を助けるため、村の決死隊が昨日村に潜入したが、戻ってきていない。
ゴブリンやボルグは知能が低く、より強い指揮官がいなければ、集団として統率されていることは少ない。この襲撃は組織的なものだと感じたライエル達は、クリスの許可を得た上で、依頼主が村長に宛てた手紙を開封する。
手紙の内容は、村が守る”遺産”を狙う不穏な影があり、別の予定があるためすぐには助けにいけないこと、警戒し、必要なら冒険者を雇えという警告であった。図らずもその懸念は目前で具現化する事態となっている。
村には”遺産”と呼ばれる魔法の品物が伝えられており、その隠し場所と正体は代々の村長しか知らないという。14歳のクリスは、村長の孫として15歳で成人を迎える時にその正体を知る予定であったが、まだ”遺産”が何なのかは知らなかった。
“遺産”を守ることはこの隠れ里全体が共有する意識であり、命を守るために村と村長を捨てて逃げる提案をパルフェタが提示したが、村人の同意が取れなかった。かといって彼らのみで奪回作戦を行えば、ほぼ間違いなく全滅するだろう。
村長を助けるべく意を決した”星月巡り”一行は、蛮族の雑兵を確個撃破しながら村長を救出するため村に突入するが、既に建物はもぬけの殻であった。先に潜入していた村人の決死隊が拷問された状態で息絶えており、いまわの際に、村長は山中の滝壺の方へ連れていかれたと伝えられる。
“遺産”と村長の命が危ないと一行は後を追って急行するが、既に蛮族達は目的を果たしていた。駆け付けた先で見たものは、魔剣によって胸を刺し貫かれ絶命する村長と、竜玉のオーブを手にした蛮族の指揮官、ドレイクであった。
明るい白銀の髪に一房だけ緋色のものを持つ美しいドレイクは”太陽石の”アスタローシェと名乗り、ライエル達と嬉々として刃を交える。
===ボス戦闘===
ドレイク
ボルグヘビーアーム
スケルトンアーチャー*2
(GM注:PCのレベルは3~4であり、この戦闘はプレイヤーサイドが勝利することを前提としていません)
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蛮族の指揮官、アスタローシェの実力はライエル達を遥かに上回っていた。一矢報いる程度の手傷を負わせたものの、敗北は時間の問題であった。それでも粘る”星月巡り”一行に焦れたアスタローシェは、人間形態から竜形態へと移行。緋色の瞳をした白いドラゴンは、口から光のブレスを吐き出し、一行は吹き飛ばされる。アスタローシェはそのまま竜玉のオーブを手に飛び去って行った。
光と音を頼りに追いついてきたクリスたち村人の応急手当で、辛うじて一行は命を取り留めた。しかし、村は壊滅状態で秘宝も奪われ、村人たちは行き場のない怒りと悲しみを抱えてしまっていた。クリスによると、この隠れ里はハーヴェス王国の貴族に物資等を支援されており、彼女は村を捨ててハーヴェス王ヴァイスを頼る決断をする。”星月巡り”一行と別れ、生き残った僅かな村人たちは去っていった…
【今回の登場人物】
セッション参加キャラクター
ライエル=クラージュ(ファイター4)
セルゲイ=ゲラシモア(アルケミスト3)
パルフェタ=ムール(フェアリーテイマー3)
“太陽石の”アスタローシェ=アスラン
種族:ドレイク 性別:女性
ディガッド山脈にある隠れ里を襲撃した蛮族の軍団の指揮官。白銀の髪に一房だけ緋色の部分を持つ美しい女性。隠れ里が守る秘宝、《オーブレイの遺産》と呼ばれる竜玉のオーブを求めており、隠れ里の補給を断った上で軍団を指揮して村を包囲。村長が秘宝の隠し場所を明かさないと見るや、決死隊を捕らえて目の前で拷問を行い村長の心を折るなど、冷静で残虐な手段で秘宝を奪取した。
ドレイクという種族は人間形態と竜形態の2つの状態を使い分け、緋色の瞳をした白いドラゴンへと変化出来る。その力で”星月巡り”一行を打ち倒したが、勇敢に戦い手傷を負わせた褒美と称し止めは刺さずに去っていった。
クリスティーナ=コーサル(クリス)
種族:人間 性別:女性
ディガッド山脈の奥地にある隠れ里の村長の孫。初歩的な魔法を扱えるが戦いの心得はない。前村長(父親)は6年前に事故で死去。祖父と二人暮らしであり、15歳の成人の日に村に伝わる遺産の秘密を祖父から聞かされる予定であった。
しかし蛮族の襲撃に遭い祖父は殺され、秘密を受け継ぐことは出来なかった。数年前から隠れ里はハーヴェス王国貴族の支援を受けており、それを頼って村を捨てる決断をした。
【次回予告】
世界各地に忍び寄る蛮族の魔の手。
狙われる”オーブレイの遺産”。歴史の影に埋もれてきた争いの火種。
真実の一部を知る旧きエルフの導きにより、冒険者たちは”奈落の魔域”へと
足を踏み入れることになる。
かつて世界を救ったはずの”12人の聖戦士”
彼らはなぜ歴史から消されなければならなかったのか?
記憶の奥底にある暗い扉がわずかに開かれる……
ソード・ワールドRPG第一部第3話「聖剣の護り手」
冒険者たちよ、剣の加護は汝と共に。
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