第134話 ロイド、庇う!

「お前が魔王? 随分貧弱そうなのが出てきたな。もしかしてこの世界の魔王って下っ端の名前なのか?」


 馬鹿にしたような顔で吐き捨てる様にそう勇者がつぶやく。


 っていうかあれ、声小さいよ? 完全に独り言じゃない?


「貧弱かどうか受けてみるがいい!」


 アルカ様の方は怒り心頭だ。


「アークアロー!」


 黒い稲妻が矢になって乱れ飛ぶ!


「ふん!」


 茶髪勇者は慌てず騒がず、それを勇者の剣で軽く捌いてみせる。


 ああ。こいつ、強い……。


「お返しだ!」


 剣の先から黄金に光る雷撃が迸り、切っ先と共に振り下ろされた。


「ぐぅ」と声を漏らし耐えるアルカ様。

 でもかなりのダメージを負ったっぽい。


 ああ……。だれか居ないの? アルカ様倒されちゃう……。


「アルカ様!」


 ギルドから屈強な男性三人ほどが飛び出してアルカ様の惨状を目撃し叫ぶ。


「このやろー、許さん!」と、まず、槍を持った獣人族の男性が茶髪勇者に飛びかかる。


 喉元に突き刺す様に伸ばされた槍の矛先を片手で掴むとそのまま男性ごと持ち上げ放り投げた勇者は、そのまま残りの男性を二太刀で斬り伏せた。


 そして。


 その剣をアルカ様に向ける。


「トドメだ!」


 肩で息をしている苦しそうなアルカ様に容赦なく振り上げられた剣を見て、僕は飛び出していた。


「ダメ!」


 そう叫びながらアルカ様に抱きつき庇う。




 剣が振り下ろされるのが風圧で解った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る