第135話 少年ロイドと内なる世界。

 自分の中の内なる世界、インナースペースの存在に気がついたのはいつからだったろうか?

 この世界で魔法の使えない、底辺の人種、人族の子供として生まれ変わった僕。

 なんの能力もないただの気味の悪い赤子として捨てられ、孤児院で育った僕には考える時間だけは人一倍有った。


 3歳で物心? が、ついたあと、ほぼ完全に自分が転生者だという意識を自覚した僕は、心の奥にその意識を伸ばして行った。

 何度もこれが夢ではないか、とか、自分の思考の中だけの出来事ではないか、とか、そう自問自答して。

 まさか偽りの電脳世界に意識だけが有るのではないか、とか、そんな事まで考え、そしてその痕跡を自分の中で探す内、それ、に、気がついたのだった。


 この世界と自分、そして、その隙間に存在する自身のインナースペースのの存在に。


 精神世界。


 そう言葉にしてしまうと薄っぺらくなってしまうけれど、ここ、は、そんな言葉では言い表せない場所(・・)だった。


 僕は、このインナースペースに潜ることで、世界、を、掴む、事ができた。


 世界を掴む。空間そのものを掴む、と言った方がわかり易いか。


 そして……




 剣圧を背中に感じた瞬間。


 僕は自分のインナースペースに潜り、そして。


 アルカ様をぎゅっと抱きしめたまま、その空間ごと掴んで引き寄せた。


 そんな事をするのははじめてだったけれど、もうそれしかこの危険を回避する方法を思いつかなかった。




 と。


 その筈だったのだ。


 引き寄せたアルカ様をアルカ様のお城の近くに送り届け、そして自分も孤児院に帰るだけ。そのつもりだったのに。ただ、空間を転移するだけのつもりだったのに。




 どうしてこうなった?

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