第133話 魔王アルカと異世界勇者。
商店街を抜けるとギルド街がある。
まあ、商工会議所の集まりみたいなもの、かな?
中でもよろず請負ギルドは他の世界ならたぶん冒険者ギルドみたいな役割をしてる場所。
市民の困りごと解決や貴重な薬草の収集、あと魔物退治かな。
魔力を持った動物は魔物へと進化するんだけど、そういう魔物は時には厄介な被害をもたらす事もあるので、駆除目的でハンター稼業を営んでる人も居る。
前世の日本でもあったけど、クマを殺すのはかわいそうって。でも、里に降りてきたクマは人を襲う。駆除してくれる人が居てこそ里の平和は守られている、んだよね。綺麗事じゃない、ご飯を食べる為、安全に暮らす為、その為に他の命を犠牲にして人は生きているんだ。草刈りだって殺虫剤だって皆同じ。
だから。
皆、懸命に生きている。この世界でもね。
そこには綺麗事じゃ済まされない事もある、って。そういう事。
魔物だからって闇雲に殺すのは僕はあまりしたくない。
でも。
自分や周りの命に関わるのなら。僕は手を下すことに躊躇しないつもり。
ああ、まだ一度もそんな経験はないんだけどね。
でも、此処に住む子供でさえ、そういう意識で生きているって事が言いたかっただけ。
child'sの事務所はよろずギルドの隣にあった。
さっさと報告を済ませて帰ろう。今日はご馳走買って帰れるかな。みんな喜ぶ美味しいもの買っていこう。
そうニコニコ考えて扉を開けようとしたそのとき、ギルドの扉がドッカーンと弾けた。
え?
なにが起きたの?
思わずそちらを見ると。
弾けた扉に張り付いてる魔人族のおじさん。完全に気絶してる? 死んじゃってはいないよね?
「ふん。魔族がこんな所で大手を振っているとは、この世界はどうなってるんだ。もうさっさとけりをつけて一旦戻るか。増援呼んでくる必要があるかもしれん」
そう、大柄(おおへい)な台詞を吐きつつ出てきたのは、確かに人族で。茶髪のチャラい感じな男性だった。
紺碧のブレストアーマー。ロトのつるぎにそっくりな剣を肩にかけている。
ああ、これが勇者、か。
なんだか話が通じそうにないけど、増援って言葉はほおって置けない。
これは勇気出して話しかけてみるべきかな。そんな事を思っていたその時だった。
「其処の異世界人! よくも我が国で乱暴狼藉を働いてくれたな。あたしが直々に退治してやるからかかっておいで」
と。
現れたのはこの国では誰もが崇拝する魔王、アルカ様だった。
挑発するように左手を目の前に掲げ人差し指を天に向けるアルカ様。
カッコイイけど、でも、ダメだ。
もう、お付きの人はどうしちゃったの?
相手は曲がりなりにも勇者と名乗ってる。
アルカ様に何かあったらどうしたらいいの?
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