第132話 少年ロイドと平和な世界。
勇者っていうのが居るらしい。
そう聞いたのは昨夜の食事時。
レイヤにいさんがそう呟いたのだ。
にいさんは孤児院では一番の年長で僕らのリーダー。
「勇者ってなあに?」
年少組のミルクがそう無邪気に聞いた。
「どうやら異世界から紛れ込んできた悪いやつで、魔王様を倒すんだとか息巻いているらしい。罪のないバンプ族やデイモン族が何人も犠牲になっているそうなんだ。子供なんか襲われたら大変だからお前たちは危険だと思ったら絶対に近づくんじゃないよ」
「で、その勇者っていうのはどんな見た目してるの? 怖いの?」
「それがさ、見た目は普通の人族なんだと。それも少年。俺より少し上くらいに見えるってギルドのおばさんが言ってた。ツノもキバも無いのに魔法使うんだとさ」
レイヤにいさんは魔人族と人族のハーフ。片ツノだ。それでも魔法が使える分人族より優れてる。だからこそ年少の皆を守らなければと、そう、頑張っている。だからこそ、か、魔法を使うくせに人を襲うそいつに、かなり腹をたてているらしい。
異世界転移、かぁ。
たまーに、まれーに、そういった『異世界』から人がやって来ることがあるらしい。
デイモン族なんかはそうやって異世界からやってきてここに住み着いた一族だとも聞くけど。
どうしたもんかな。
この世界は平和だ。
元の世界の記憶、もうけっこう曖昧にはなっているけどけっこう戦争とか争いとかが多かった覚えがある。
一般の市民にしても他人を妬んだり攻撃したり、も、多かった。
そんな世界の中でよく観てたお話の中で、異世界に行って魔王を倒す話とかもあったかな。
そこで出てくる主人公? は、勇者、とか言われていたっけ。
逆に魔王主役のお話とかもあったけど、そんな中でもやっぱり魔王と人間とは争っていた。
だから、ほんと不思議。
この世界は平和だ。
大事なことなので二度と言いました。
魔人族はその魔力を持つが故にその高貴な力をもって社会に貢献する義務を負う。
その誇り、が、この世界を平和に保つ原動力になっている。
もちろん国家同士の争いとかが全く無いわけじゃ無い。
でも、そこでおきる紛争解決手段に殺し合いは無い。
お互いに納得できる試合で決める。
そういった国際ルール。それが現在の国家全てで適用された結果、世界から戦争は消えたのだ。
百年に一度各国の魔王が闘う大魔王トーナメント。そこで優勝した者を大魔王とし平和の象徴として尊び、そして誓うノブレスオブリージュ。
其れこそが、この世界の柱。
平和の象徴だったのだ。
何処の世界から来た勇者か知らないけれど、人間同士が争うなんて不毛な事教えてあげなきゃいけないかも。
もしかしたら僕ならそういう事上手く説明してあげることできないかな?
そんな無謀な事を思いながら、僕は無事仕事が終わった報告にchild's本部までの道のりを歩いていた。
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