第131話 魔王アルカと孤児のロイド。
※ ここから少し視点が変わります。(ロイドくんの語りになります。
見知らぬ天井。
んん、なんだか豪華なシャンデリアが見える。
この世界でこんなの見るのは初めて、だ。
ボクはぼんやりと眼を開けて、そうひとりごちた。
身体中がなんか痛い。いろいろと違和感が拭えない。
そう思いつつも動かない身体。どうしちゃったんだろう。
カチャ
そう音がして誰かが部屋に入ってくる音。カツカツという靴音が続く。
「お加減はいかがでしょうか、アルカ様」
耳に残るようなバリトンボイス。
その言葉を理解するまで数秒。
そして……。
えー? って、ボク、どうなっちゃったの?
此処は数多の魔王が統べる世界、アースガルド。
神、というものがこの世界を創造した存在であるのなら、その概念は此処にも有る。真皇マオウと。
そして、多種多様な種族からなる国家を統べるもの、それらを魔王、と、呼んだ。
人族、妖精族、獣人族、悪魔、バンパイア、竜人族。そういった多種多様な人種がいる中、魔法の使える魔人族が人口的にも勢力的にも頭一つ抜きん出ていた所為もあって、この世界の最初の国家は魔人族によって建国され、その王が魔王という称号を名乗ったのが最初。
それ以来、多数の国家が生まれ滅ぶ中、その国家の権力者はみな魔王を名乗ることとなる。
魔王位、と、いうものが、血統や自薦他薦その他諸々の力関係の中、代々受け継がれてきていたのだった。
ここ、魔女の国ランクルサード。
女王である魔王アルカ様が治める国で僕ロイドは今日も走り回っていた。
え? なんで走り回っているのか、って?
孤児の僕に出来ること、それはお使い。
孤児ギルド? とでもいうべき街の自助組織、child'sに所属している利点。それは街のよろず請負何でも屋の仕事が回して貰える事だった。
ちょっとした用事、お使い、飛脚便。そういったものを請け負い街の孤児の仕事として与えてくれるchild'sのお陰で、僕たちは毎日を明るく元気に過ごせてる。
そして今日も僕はとある手紙を届けに街の中央街を走り抜けてあるお屋敷まで辿り着いたのだった。
チリン
呼び鈴を鳴らす。
もちろん此処は裏口、勝手口だ。表からこんなお屋敷入れないよ。
ギイっと扉が開くと出てきたのはメイドさん。
「あらぼうや。今日は何を持ってきたの?」
「ギュンダー商会からのお手紙をお持ちしました。ご主人様にお渡しください」
「いつも大変ね。はい。これ、お駄賃。飴でも買って帰りなさいな」
「いつもありがあとうございます!」
5ルピー銅貨を一枚手のひらに貰い、僕は意気揚々とその場を後にした。ほんとうこの世界は孤児にも優しい。
この世界で一番人口が多いのは人族。
でもたぶん、他の人種に比べて肉体的にも魔力的にも劣る人族は、謂わば底辺の人種だった。
神話によると、元々は全ての人種は人族から産まれた、と、ある。
だからかな。迫害とかを受けるわけでもなく、そして施政者であるたとえばこの国の魔人族からしてみれば、人族はノブレス・オブリージュの精神の下、保護すべき人民として扱われていたのだった。
僕、ロイドは孤児の12歳。
赤ん坊の頃に孤児院の前に捨てられていたから本当の誕生日も知らない。拾われた時たぶん一歳くらいだろうという事で今の年齢がわかるのだけど。
赤ん坊ののくせに変な言葉を喋るから、と、気持ち悪いと思われ捨てられたのではないか、とか、孤児院の院長さんサマンサ様の言葉。
とにかく赤子とは思えない声を発していたらしい僕は、そのまま3歳までそうやって気持悪がられながら育ったのだった。
と、いうのも。
3歳になってやっと物心がついた僕にとって、自分の過去を隠すことが平穏に暮らすコツだと認識するのにはそれだけの時間がかかった、と、いうことなのだけれど。
うん。
そう。僕には前世の記憶があった。
此処とは異なるその世界で生きていた記憶。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます