第130話 転生者。
あ。
こちらに気がついた、かな。
アルカがこちらに気が付いたのを見て、あたしはそちらに向かって歩き出した。
あたしもデュークも今は猫耳だからさ。ばれてないかもしれないしね?
でもアルカ、ちょっと訝しんで、結局確信したっぽい。
あたしはわざと視線を外し、アルカの横を通り過ぎようとして。
「ミーシャさま? ですよね?」
そう、アルカの方から声がかかる。
「あ、アルカ様ですよね? ごきげんよう」
あたしはそう満面の笑みで首を傾げた。
混ざってますよね? あなた。
そう、聞こえるか聞こえないかのギリギリの声で。
あたしはアルカの左脇にすっと近づいて囁いた。
アルカが真っ赤になるのがわかる。
うん。この子やっぱりかわいいな。それに……。
この子の魔力紋、混ざってる。
二つの魔力紋が歪に混ざってるの。
ミルカを見た後ならよくわかる。
彼女、多分もとのアルカだ。そしてこの子……。
「あの……、わたし……」
「ねえアルカ様? そちらの喫茶店でお話ししませんか?」
角にあるネコヤって名前の喫茶店。名前もいいけど外装もおしゃれでかわいい。窓から見えるフリルのカーテンもいい感じで。
アルカが小さく頷いて。
あたしは彼女をお茶に誘うことに成功したのだった。
☆☆☆
「あなたの魔力紋、たぶん本物のアルカ様と混じってますよね?」
あたしはそう単刀直入に切り出した。
「本物って……」
「本物のアルカ様。たぶんあのミルカさんの中の人」
目の前のアルカ、両手で口の前を押さえて。
目は思いっきり見開いてる。
「ここだけの話ですけどね? あたし、真皇の御使いなのですよ。異世界の勇者がやって来た時にアルカ様と勇者が戦ってるところを御覧になって心配した真皇様の使いとしてこの地に降り立ったのです」
アルカの目がすこし泳いで。
で。観念したように目を閉じる。
なんだかずこしほっとしたような、安心したような、そんな色。
「わたし、ロイドって言います……。転生者だったんです……」
彼女はそう、少しづつ語りだした。
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