第97話 内なる世界の中心で、拒絶を叫ぶ。

 宇宙が、世界が、泡のように生まれては消える。


 何度見ても慣れない。そうも思う。


 生まれたら消えなくちゃいけないなんて誰がそう決めたんだろう? 


 あたし?


 違う。


 コトワリは決めた。確かに。


 だけど。


 消えるのではなく再生だった筈だ。


 円環の輪廻だった筈。




 あたしの内なる世界。


 この全ての世界はあたしの内にあった筈。


 全てはあたしだったのだ。


 元々は。




 その内なる世界を埋めていった。


 あたしは一人が嫌だった。


 だから。世界を創ったのだ。


 自分の中に。


 この、世界、を。





「創っておいて手放したのですよ? 貴女は」


 あたしのそばで精神体となって浮かぶデートリンネ。


 もう攻撃はしてこないのだけど、言葉は辛辣で。


「手放しただなんて……」


「世界の中心に在った貴女。その一番中心だけがある時存在を感じられなくなって、わたくしたちがどれだけ困惑したか」


「あたし、そんなつもりじゃなかった。ちゃんと自分をわけて置いてきたはず」


「ええ。確かに貴女はちゃんと残っていました。でもそれは貴女の抜け殻だった」


 え?


「世界としての貴女は確かにそこにありました。でも、それは貴女としては機能していなかったのですよ」


 デートリンネはかぶりをふって。


 あたしに見えるように、手を振った。


「全ては貴女の我が儘のせい。そのせいでこの貴女の内なる世界は崩壊しかけているのです!」


 って、まって。


 そんなの……。


 デートリンネの意識があたしの中に入り込む。


 ああ。


 この内なる世界の中心に、外からのアクセス?


 あたしが居なかったから対応できなくて。


 侵食されかかってる? の、か。



 いや。


 気持ち悪い。


 あたしが侵食されかけているっていうの⁉︎



「そうですよ。だからわたくしが貴女を吸収することで無理やり貴女を目覚めさせようとしたのです!」


「わたくしはもともと貴女の一部。貴女がこのまま元に戻らないのであれば、わたくしが吸収して差し上げることで元の貴女に戻る事ができるでしょう」



 ああ。


 なんて事。



「ごめん。リンネ。でも、そんなことしたらあなた、自我が消えちゃう。ダメだよそんなの……」


「わたくしのことなんてどうでも良いのです。貴女を守るのがわたくしの役目。なのですよ?」



 ごめん。デートリンネ。


 あたしの我が儘で困らせてたんだね。




 だめ。これ以上は。


 あたし、とにかく戻る、ね。


 世界の中心に、あたしの内なる世界の真ん中に。


 そんでもって、叫んでやる。


 外から来ている何かに。


 これ以上、あたしに関わるな、って。


 叫んで叫んで追い出してやる!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る