第96話 斬撃。

 シルトガントのダークネスストーム、ドラゴンスレイヤーのファイナルアタックを立て続けに放つ。


 次元の壁を周囲に張り巡らせ、エンジェルウイングによって高速移動しながらマナを集中し、レイ・エクスプロージョンを撃った。


 デートリンネはその漆黒の羽を翻しこちらに跳ぶ。


 目前に出現する彼女、ドラゴンバスタードで薙ぐとやはり向こうも同じように剣で受ける。


 何回かの斬撃の後一瞬あたしの身体が裂かれるも、その傷は直ぐに修復し。


 彼女の腕を飛ばしてみても、それさえも一瞬のことに過ぎなかった。


 お互いがお互いに致命傷与える事ができず、ただただぶつかり合う。




 あたしはだんだん焦ってきた。


 何という事はない。あれはまだ加減をしてるのだ。


 あたしがそうなのだからわかる。


 この世界を消滅させてもいいのであればもっとやりようはあるはずで。


 彼女がその選択肢を取らないのはただ一つ。


 たぶんそれではあたしをまた逃す事になるだけだから。


 あたしがそんな事では死なないと、わかってるからだ。



 当然、向こうだってそう。


 この程度の攻撃でどうにかなるような相手じゃない。


 なんと言ってもあたしの分身なのだから。



 ああ。詰んでるじゃないか!


 あたしはこの世界を守りたいのに、あれにはこの世界なんてどうでもいいのだから!





 山が三つばかり消滅した。


 黒煙が舞い上がり、山火事が起きているのもわかる。


 まあ、この程度で済んでいるだけマシといえばマシなのだけど。



「で、どうしたいの? デートリンネ!」


 あたしはそう叫びながら飛ぶ。


「だから、わたくしは貴女になるのですよ!」


 そんな答えが返ってきた。


 目の前で剣を振りかぶる彼女。


 その剣を受けつつあたし。


「あたしになるって? なればいいじゃない。その分のチカラは持っているでしょう?」


 そう、吐き捨てる。



「貴女は……。知らないからそんな事を言うのです! 今の世界の危機を!」


 え?


「貴女が居なくなって空いた穴。それがどんな事になってるのか!」


 ちょっと待って?


 あたしの右手が彼女の剣によって切断される。


 あたしはそのまま次撃を躱し、背面に飛び。


 一瞬にして右手を回復させ、魔・ギアも装着し直して。


 そして跳ぶ。



 まず事象の果てへ。



 ごめんレイア。あなたのインナースペースにはあたしを少し残してきたからね。


 待っててねノワ。絶対にあなたのもとに帰ってくるからね。



 あたしは周囲の空間ごと。


 デートリンネごと、事象の果てに強制的に転移した。

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