第95話 加速する時間。

「デートリンネ⁉︎」


 あたしは敵の黒ゴスから放たれた漆黒の剣をシルトガントで弾き、そう叫んだ。


「ちょっと待って、なんであなたが」


 問答無用で繰り出される攻撃に、あたしもドラゴンバスタードとシルトガントを駆使して躱しながら。


「だから! 貴女がいけないんですよ!」


 そう叫びながらビットを飛ばす彼女。


「貴女が、御自身が創世世界の一員として生きようなんて思わなければ、わたくしもこんなことは考えなくても済んだのです! どうして与えられた物だけで満足してくださらなかったのですか⁉︎」


 ちょっとまって?


 どういうこと?


 何がなんだか……。


「まだ思い出されないんですか⁉︎ 御自身の事を。貴女が一体どんな御立場だったのかも!」


 激しくなる攻撃をあたしはなんとか躱す一方で。


 思考が加速する。



 そ、う、だ。


 あたしは最初、唯々まあるくあった。


 この世界、創世世界が産まれる前に、唯々まあるく。



 世界のコトワリを決め。


 空間を決め。


 物質を生み。



 命のコトワリを決め。


 円環を生んだ。



 数多あまたの世界が事象の果てより産まれ。


 そして円環より生まれた心がまた別の世界を産む。



 最初はそれをただ眺めているだけで良かった。




 でも、いつしか。


 寂しくなったのだ。あたしは。寂しいという感情を知ってしまった。


 たった一人でここに居る事が、在る事が、寂しくて。



 自分を分けて、子供を造った。


 それがデートリンネ。



 他にもいたけど、たぶんあたしに一番近いところであたしの希望を叶えるため頑張ってくれていた大事な彼女。



 そう。


 それがデートリンネだった筈。


 なのになんで?


 どうしちゃったの?






 加速する時間。


 加速する攻撃の中で、ノワは完全に置いてきぼりになっている。


 あたしは彼に被害が及ばないよう気をつけながら外へ転移した。


 まあ、当然彼女も追ってくる訳だけど。


 うん。


 これでいい。


 周りの事を考えてたらまともに戦えない。


 だから。


 少し反撃するけど、いいよね? リンネ。

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