第94話 漆黒のマ・ギア。

「ちょっとあんた、いい加減どこまでも追いかけてくるのやめてよね!」


 さすがに堪忍袋の尾が切れた。ちょっとしつこすぎない?


 壁の隅からじわっと滲み出てくるみたいに出てくるラスレイズ。容姿はそのまま変わってないか。


 左目はクリソベリルキャッツアイ。マギアキャッツアイの金緑が光っている。


「お前が逃げるからいけないんだろう? 大人しくしていれば手間もかからないのにな」


 そう答える声。



 周りを見るとちゃんとこの世界には色が残っている。ノワがあたしを庇って前に出ようとするのを右手で止めて。


「ごめん、ノワ。あたし、頑張るから」


 それだけ言うとあたし、覚悟を決めた。




 魔・ギア 解放!


 あたしの身体から金色の粒子が巻き上がる!


 ぐるぐると周囲に纏うように煌くその粒子がだんだんと濃くなって。


 あたしの身体はマジカルレイヤーに包まれた。




 《ガントレット》ダーク・シルトガント


 《知恵のサークレット》シルヴァ・メーティス


 《エンジェルウイング》アウラ・フェザー


 《重力操作グローブ》アトラス・ゴットハンド


 《マナの要》マギア・キャッツアイ


 《命の宝玉》ゴールデン・クリスタル


 《創造の竜玉》ドラゴン・オプスニル



 七つの魔・ギアを全て纏い、そしてそのすべての権能を解放する。


 で、おまけに今日の衣装は白がベースのミニゴスに金色の刺繍がかわいいふりふりで。


 腰まで伸びた金色の髪。


 ふわっと頭から覗くクリーム色の猫耳。


 白い尻尾にピンクのリボンがついた、そんな魔法少女スタイルで。






 あたしがそんな戦闘スタイルになったのを見届けてからか、奴も本気になったらしい。


 あたしの金色の粒子と対なのか、漆黒の粒子が巻き上がる。


 魔・ギア 解放!


 ああ、やっぱりね。


 奴の身体が魔法少女に変化する。


 マジカルレイヤーだって使えるって訳だ。


 ほんとにあたしと同じ能力?


 なんだろうな。少なくともこの世界ではあたしと同じ、なのかも。




 漆黒のゴシックドレス。


 ミニ丈のそれは黒に黒の刺繍が浮き上がり。


 あたしと同じ七つの魔・ギア。


 まるで、漆黒のマギアをその身に纏った魔法少女がそこにいた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る