第65話 あたし、寂しかったんだ。

 あまり危険なこともないまま森を抜けるとそこには石造りのピラミッド。


 ちょうどマヤのピラミッドみたいな感じの遺跡がそこにあった。


(まやのいせき?)


 うん。遥香の世界にあったんだ。こんな感じの石造りの遺跡。


(ふーん。似てるんだ?)


 うん。似てる。っていうか瓜二つ。って言ってもこれはカモフラージュだけどね?


(え? かも、何?)


 うんと、これ、実は本物の遺跡じゃないの。誤魔化しなの。


(うそー)


 大体さ、魔・ギアとか作る事が出来た文明が、こんな石造りの遺跡なんておかしいじゃない。


(んー?)


 レイアにはあんまりピンとこない? って、あの遥香の世界のビルとか覚えてる? あの世界の機械文明でさえこんな石造りの遺跡なんて残さないって思わない?


(あー。そういう事かあ)


 機械神、デウスに護られたいにしえの魔道王国ラスレイズ。この時代にはほとんど資料は残ってないけどね。実は今より遥香の世界の方に近い感じだった、っていうかアリシアの時代、かな? あんな感じで。


(詳しいねラギレス)


 あたしにはメーティスの書庫があるからね。ここの文明を加速させちゃうのは不味いから公表もしなかったけど、さ。


(う。ほんとでもラギレスそんな状態でずっと暮らしてて。寂しかった?)


 え?


(孤独、とか、わたしよくわかんないけどちょこっとだけわかる、よ。お前はラギレスの生まれ変わりだって言われてた時のわたしの気持ちも。ラギレスのキオクを覗き見ちゃってたときの気持ちも)


 そっか。


 ごめん、レイア。


 そして、ありがとう。




 あたし、寂しかった、のか。


 だから家族が欲しかった。


 大事にしたい、そんな関係が欲しかった。



 うん。寂しかったんだ。


 そっか。





 正面の階段を上がると入口があった。


 そう。ここまでだったら誰でも来れる。



 中に入ると壁画があり、そして奥にまた部屋がある。



 研究家の人たちはここを墓だと同定して、それ以上の調査を打ち切った。


 まあふつうに調べてもそれ以上何も出ない。そういう風にカモフラージュされているのだから当たり前か。



 奥の部屋、その中央に鎮座した石棺だとされる場所、その石棺に隠し階段が仕込んであるだなんてまるでゲームだ。


 遥香の世界のテレビゲームでそんなカラクリがあったなぁとか思い出しながら先に進む。


 っていうかこのカラクリは以前勇者パーティで訪れた時に見つけたんだけどね?


 四人だけの秘密。


 レイチェルも報告しなかったんだって。


 この先にあるものがこの世の中に出るのを躊躇したらしいんだけどね?

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