第13話 マギレイス。

 自分のインナースペースの中に魔・ギアが七つ全て揃ってるのを確認して。


 まぁ、魔王はとりあえず倒した筈だし?


 たぶん10年近く経ってる筈だから、空間の亀裂の修復も終わってるだろうし?


 そういえばあの勇者ノワくんも、そろそろいい大人になったかなぁ?


 当時まだ十四歳だった勇者くん。イケメンになりそうな予兆はあったから、かっこよく成長してくれてるといいけどなぁ。


 あの子がいれば、多少の魔物くらいならなんとかなるかな?




 そこまで考えてちょっと落ち着いた。




 まあ今夜はそんな無粋なことは忘れて夜の散歩を楽しむかなぁ。


 うん。


 ふわふわと舞ってふわふわと風にあたる。


 髪が風で舞い上がり、きもちいいかも。


 そんな感じで街を上空から眺めて。


 ああ、もちろん月には手が届かなかったけどね。




 お家はどこももう火が落ちている時間だから、明かりは月の光だけだけど。


 なんだか月が降ってくるような。


 月から溢れるオーラがそこここに降り積もっていくような。


 そんな感覚。


 月のマナが、あたしをみたしている気がしてすっごく気持ちがいい。



 月光浴?


 っていうのとはちょっと違うかもだけど、ううん、ちがわないかもだけど。


 そうだよこれが本当の月光浴だよね。


 そう納得して。



 なんだか少し眠くなってきたかな。



 そういえばあたしの前世の名前は、


 セリーヌ・マギレイス・ラギレス、


 って言うんだけど、


 このセリーヌっていうのは生まれた時に両親がつけてくれた名前。

 あんまりそう呼ばれた事がなかったからあんまり実感がないな。


 マギレイスっていうのは、

 いにしえの魔道王国の偉大なる女王の名前。

 あたし、このひとの生まれ変わりなんじゃないかって言われてた。

 まあ前世が日本人だったから、そんな筈ないのにね?


 今ではこの名前は、賢者、特に大賢者っていう立場になる時に与えられる称号になってる。


 最後のラギレスっていうのは……。


 これはあたしの真名。


 教会で洗礼式をあげた時に神からそう呼ばれた名前、ということなんだけど、

 あたしのなかではこの名前が一番しっくりくる。


 ああ、あたしの名前なんだなぁって。


 家名であるヴァインシュタインはほぼ名乗ったことなかったかな。


 本当だったらセリーヌ・ヴァインシュタインって呼ばれたんだろうけど。


 まあ。しょうがない、か。


 弟のルークがしっかりしてたしもうあたしのことなんて無かったことになってるかな。


 うん。





 せっかくのお散歩中、なんだか落ち込むような記憶を思い出して。


 眠くもなってきたしそろそろ帰ろうか? って思った時。



 パーンという破裂音がして。


 そちらを注視すると、

 森の奥に松明たいまつの光が見えた。


 と。


 魔物の気配も。




 もしかしたら誰か襲われてる?


 放っては……、おけない、よね?

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