第11話 満月。

 寝てました!


 びっくりです。


 もうすっかり夜。




 ああ、まん丸なお月様がお空にのぼってる。


 転生してからこんな綺麗な月見るの初めて、かな。




 この世界、どことなく前々世? の、日本と似てるの。


 四季もあるし桜みたいな花もある。


 秋の稲穂も黄金色で綺麗。


 すすきももふもふだし、なんといってもこの満月。



 黄金色に輝く満月は、どことなく兎が餅つきしてるようにも見える。そんなところもそっくりで。


 違うことといえば、空が澄んでて星も綺麗に見えるってところ。


 うん。


 なんだか身体がふわふわする。



 気持ちのいい秋風。


 お屋敷はすっかり寝静まってるかな。もう扉も閉まってるし今から開けてーって鳴くのもちょっとふにゃぁ。



 ま、いっかな。


 今夜はちょっと夜のお散歩してみても。




 レイアがもしかしたら心配してるかも? って思ったけど、

 お屋敷はもうすっかり火が落ちた感じだし。

 もうたぶん寝てるよね。


 明日の朝こっそりお布団に忍び込もう。

 そうしたらきっともふもふしてくれるよね。



 ふふ。


 なんだか今夜はすごく力が満ちてる気がする。


 もうきっとなんでもできそうで。




 にゃーおん!


 ちょっと叫んでみた。


 あはは。


 にゃーおん! にゃーおん!


 にゃー。


 なんだか楽しい。




 あ、そういえば前にレイアのキズを舐めたときに彼女のマトリクスを取得してあったっけ。


 今ならなんだかできる気がするよ?


 あたしの今のこの猫の身体に重なるように、レイアのマトリクスのレイヤーを構築する。


 で。


 マジカルレイヤー!


 レイヤーを乗算し、合成。


 レイアの姿とあたしミーシャの姿が合成されて。




 あたしは大きく伸びをした。


 あは。


 人の身体だ!


 久しぶり!


 ん?


 頭には猫耳がついてるかぁ。


 でも、まあいっか。



 レイアは元々前世のあたしとよく似てるから、まるで前世のあたし、セリーヌ・マギレイス・ラギレスが蘇ったみたい?


 うふふ。


 まあそれもいいかな。




 人間の身体。耳と尻尾はついてるけど人間、で、いいよね?


 っていうか、久々に人の姿になって思ったけど、裸ってちょっと恥ずかしい、かなぁ。



 あたしは自分のインナースペースを確認して。


 うん。やっぱりあった。


 前世で着てたワンピースをインナースペースの収納から取り出して羽織る。


 あ、もちろんぱんつも履いたよ?


 やっぱり人間ってめんどくさいね。




 前世の子供の頃にも思ったけど、こうして転生するってことはインナースペースもそのままで生まれ変わるってことなんだよね。


 本来であれば人は生まれたときにはまっさらの心で、その心の広さも段々と成長いていくものなんだよね。


 だから、魔力も段々と成長と共に大きくなるものなの。


 でも。


 あたしは前世の時も既に充分大きいスペースの心を持ったまま生まれて。


 で、ほかの人とはスタートからして違ったわけで。


 おまけに前世のおはなしでいろいろ読んだおかげか魔力とかのイメージも最初から持ってたから、もう幼いころから大概の魔法が使えたし。


 これ、このインナースペースってきっと、転生すればするほど成長していくのかもね。


 ってことは転生すればするほど強くなるってこと?


 ううん、もちろん努力は必要だし環境や転生した身体の血筋も大事かもだけど、でも、可能性はある? ってところかな。




 そういえば。


 あたし、インナースペースを収納に使う技っていうのを極めてたんだよね。


 だから、前世の時はずっと自分の荷物は自分の中に持ち歩いていて。



 あはは。


 ぜーんぶちゃーんとあった。


 嬉しい!




 あたしは前世でずっとお気に入りだった魔法の聖杖を取り出して。


 頭のところに星形の飾りがついたその聖杖をシャランと一振りして。



 そのまま空に駆け上がった。


 もう少し望月の近くに行きたくって。

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