第10話 秋になって。

でもこの歳でこのマナの量って事は……。


やっぱりレイアは才能があるなぁ。


——ねえ。レイアって聖女になりたい?


「んー。良くわかんないけど誰かを治してあげれるのはうれしいかなぁ」


——あたしが教えてあげようか?


「あは。嬉しい。やっぱりミーシャは聖女だったんだー」


——そうだよ? でも、その事はレイアとあたし、二人だけの秘密だよ? 守れる?


「えー? どうして?」


——たぶんみんなに知れたらあたしここに居られなくなる。実験材料にされて殺されちゃうかも……。


「いや! それは絶対に嫌!! ミーシャのこと、内緒にする! ミーシャはわたしが守るよ!」


——ありがとう。じゃぁ。これからもずっと一緒だね。


「うん! これからもずーっと一緒だよ!」




にっこり笑ってそういうレイアのあどけない瞳が、すっごくかわいくて。


なんだかね。


あたしは子供が居なかったけど、もしいたらこんな感じでかわいかったのかなぁ? そうも思う。




レイアの寝室にあたしのベッドがしつらえられ、出入り口に猫が通れる扉もつけられた。


リビングの猫部屋はなんと猫専用のお部屋だったみたいなんだけど、お屋敷中一応出入りは自由になっていて。


おかあさんおとうさんとあたし。


ほかの兄弟は貰われて行って、

ここのうちの猫はそれだけになった。


まったりと過ごしているうちに暑い夏が過ぎ、秋になった頃。


あたしもちょこっと大きくなった。かな。




流石におとうさんやおかあさんとおはなしする事はできなかったけど、どんな気持ちなのかはわかる。


クロコかあさんはあたしのことほんと可愛がってくれた。


もうおちちをむさぼる時期はとっくに過ぎたのに、たまにごろんと横になったおかあさんの胸に縋り付いておちちを飲む。


ぺろぺろと顔耳あたまをなめてくれるとすごく安心して。


あたしはいっぱいいっぱい寝て過ごしたのだった。



レイアにも家庭教師がついてお勉強する様になったから、その時間はあたし一人。


お庭に出て遊んだり、日向ぼっこしたり。


黄色い草叢に伸びるイネ科の草があたしを隠す。





ある時。お外でいつものように遊んだ後。


お外も過ごしやすくなったなぁと思いつつ、そのまま草叢で眠ってしまった。




ああ、夕方のご飯の前にはお屋敷に戻らないと……。


そう意識の底で思いつつ……。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る