後編

「……ここだ」

「はい? えっ?」

「ここだよ」

「だから何がです?」

「ここが本来の森だ」

「えっ?」


 佐藤は端末に表示されていた地図を見ながら辺りを見回すと、佐藤の瞳には同のように映ったのか。佐藤の瞳には驚いた瞳の色と、感動した瞳の色が混じっていた。けれど、そんなことは茅野は知らず、ただただ不思議そうな顔で佐藤の事を見ていた。


「えっ、どういうことなんですか?」


 さすがに理解できなかった茅野は佐藤に対して質問を投げかける。


「ここなんだよ。かつての場所だ」

「はい?」

「……わからないの?」

「わかりません」


 佐藤の答えにわからない状態でいるとまるで、彼女からバカじゃないの? みたいな顔で茅野は見られ言われるが、彼はまじめさそうな顔で答える。


「わからないか」

「えぇ、わかりませんとも」


 茅野の答えに佐藤はしょんぼりとした顔で、茅野の事を見つめるが何一つ理解できていない彼にとってはその表情さえも、理解できない物の一つであった。


「……はぁ、わかった。なら言おう」

「はい、お願いします」

「ここは、東京のかつての森だよ」

「かつての森?」

「あぁ、ここに植えられている木々はかつての大災害の時に何一つ影響を受けていない森でな。世界でも有数でかつての大災害を被害を受けなかった森なんだ」

「へぇ」

「あ、それは興味のないような顔だな」

「まぁ」

「ま、いいが。本来、ここは森じゃないらしいし、それはそれで興味が湧くぞ」

「はい?」


 すると急に佐藤の謎の一言に、茅野は不思議そうな顔をし始める。

 なぜなら、森なのにかつては森ではないと言う、とてつもないほどの矛盾に茅野は不思議がり首を傾げる。


「え、森じゃない?」

「うむ」

「どういうことです?」

「うむ、ここはかつては森ではなかったぞ。かつてはここら辺一帯は臓器臨だったのだけど、大災害以前に徐々に森化が進んでいたらしいぞ?」

「森化?」

「あぁ、管理が行き届いていなかったしからな。徐々に林から森のようになっていったんだろう」

「そう、ですか」


 佐藤の一言に茅野は先ほどの様な不思議がることはなく、ただ焦燥感に浸かる様な感覚があった。けれども、そのような感覚が残りながらも佐藤はお構いなしにこの森の内情を話し続ける。


「いやぁ、けど本当にあったとはな、書物しか見たことなかったからびっくりだよ」

「そうですか」

「けど、なんでこのような場所。佐藤さんは好きなんです?」

「好き、というか。興味があるんだ。ここはかつての日本が未だに解明できなかった土地の一つだからな。けれども、あの時は保全活動に一杯一杯だったらしくてね。研究とかは難しかったらしいんだよ。けど、今この森の状態は研究にとっておきだし、この土地のかつての秘密に迫れるというものだよ」

「はぁ………あれ?」

「ん? どうした?」


 熱く熱弁する佐藤に対して冷ややかな視線で、茅野は佐藤の事を見ていると、彼の視線の端には何か建物の様な影が見え、茅野は佐藤の話を無視して影が見えた方へと向かう。


「おい、どうした!」

「………佐藤さん、あれ」

「何が、………って」


 茅野と佐藤が目にしたものは、先ほどまで深い森の中で有ったが、森の中まるで人の住む文明の様な風景が彼らの瞳に映っていた。


「これは?」

「人の住んでいた痕跡?」

「……いや、これは模造品レプリカだな」

模造品レプリカ……」

「あぁ、かつての風景を再現しようとして作成した模造品レプリカがあったということは書物に書いてあった」

「そうですか……」


 人の住んでいたであろう痕跡は、森と同化しつつありながら建物はきちんと住める状態であり、周りに置かれていた道具などは蔦は張っていたが使えなくもない物ばかりだった。


「佐藤さん。ここは一体、何のために作られたんでしょう」

「……ここはかつては保全の一環として里山の再現として作られたと聞いている」

「……そうですか」

「人は、なんでこんなことをしたんでしょうね?」

「さぁな、けど、言えることはこの光景から人間は少しでも自然と共存したかったんじゃないか?」

「共存、ですか」

「あぁ、里山というものは本来、数少ない人の集団が事前という脅威から守るために生み出され構築されたコロニーだ。だからこそ、自然の恐怖が誰よりも分かるし、どう対処しなければいけないとかわかっていたんじゃないか?」

「そう、ですかねぇ」

「ま、どっちにしろ。こうしたのも立派な人災といってもおかしくないしな。今まで自然に負担をかけていたと考えれば、こうなったのもまだましな方かもしれないぞ」

「そうですか……」

「あぁ、そうだよ。だからこそ、私たちがこうやって調査して、いつかまたここに住めるような世界にするために私たちは頑張っているんだよ」

「」

「ほら、何ボケっとしているんだ。早く立て。さっさとしないと終了時間には野宿する羽目になるぞ」

「わ、わかりました」


 佐藤の一言に茅野はぼうっ、と呆けていると再び佐藤から叱責を飛ばされ茅野は急いで先に森の中を進む佐藤へと付いて言った。

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Deep forest 山鳥 雷鳥 @yamadoriharami

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