7章 終“末”の虚“無” と “未”知の虚“無”

「そんなことがあったなんて、知らなかった。俺と姉さんを護ってくれてたなんて。」

「未無、そんなこと思い詰めても何も出ませんよ。それに今は喜ぶべき場です。」

姉弟が話している中、エクスバースが今度は2人に質問した。

「どうして今までミナは2人だって隠していたんだ?それにそもそもどうして2人で1人になっていたんだ?」

「いや、それは…。」

末離が加えて言う。

「私だって頑張ってきたからお姉ちゃんとお兄ちゃんの秘密知りたいなぁ。」

「まったく…、話せばいいんだろ、話せば。」


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

俺は姉さんを抱えて、この虚無空間に逃げてきた。それは無我夢中だった。安全になるまで姉さんを護らなくてはいけない。それだけが頭をよぎっていた。そして突然真っ白な空間へ出た。俺はそこで姉さんを介抱することとなった。姉さんが目を覚ました。

「あれ…未無。ここはどこ。」

「姉さんは知らなくてもいい。」

「ちゃんと本当のことを言って!」

「…。」

そこに突然死んだはずのミロクの声が空間内に響いた。

“未無。この声はけじめをつけさせてもらったことの少しばかりのお礼だ。よく聞け、これはお前たちの可能性だ。ふぅ…。光は真、影は嘘、闇は欲。真と嘘が交わるとき、望みは叶うだろう。しかし、欲に触れれば均衡は崩れる。はぁ…。本当にお前たちには感謝してる。私はあの子との約束を果たしているころだろう。お前たちの意志は決して軽いものではない、私はお前たちに期待している。ふふっ、またどこかで会えるかもしれないね。その時はお前たちを試してやるからな。決して自分たちを見失うな。2人で歩んでいても、それが1人になろうとも。じゃあな、また逢う時まで。”

相変わらず意味不明な予言だが、言いたいことは…俺たちにさせたいことは伝わった。そこで姉さんに提案した。

「今の話は聞いたか?」

「ええ、あの子あんなに孤独な運命を背負っているのに成長したわね。未無が導いてくれたんでしょ、私にはわかるよ。」

「あ、ああ。それよりもだ。姉さんの体を俺に預けてくれないか?姉さんは人の闇を知らなさすぎる。これから姉さんが絶望することをミロクは予言しているんだ。しかし、この力を制御するには姉さんが必要だ。だから、俺が姉さんの体で行動する。姉さんが嫌ならそれで構わない。どうだ?」

「フフッ、言わなくても分かってるくせに。私は未無になら任せてもいいよ。未無は頑張り屋さんだからね。私なんかよりずっと優しいもんね。」

「よせよ、姉さん。」

「…なんだか泣けてきちゃった。別にこの体を預けてもいいけど、これから未無と話せなくなるなんてね。」

「大丈夫だよ、姉さん。話せなくても、これからずっと一緒なんだから。」

「…そうだね、未無は自慢の弟なんだから。話せなくてもずっと見守ってるよ。また弟の自慢話ができるからね。」


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「まぁ、こんなところかな。俺がただただ辱めを受けた気がする。」

「いいんじゃないか、自慢の弟で…。私もお前のことは誇りに思うよ。」

その声と共に自室で休んでいたミロクとヨミが来た。そのとき不意に末離がヨミの顔を覗いた。

「あれ?な、なんか私の顔についてます?」

「やっぱりそうだ。花屋のお姉ちゃんだ。」

「えっと、あっ、あの時の。へぇ、あの時の子が末離ちゃんだったんだ。自己紹介まだだったね。私はこのミロクお師匠様に仕えているヨミだよ。…あの時の願いは叶ったみたいだね、おめでとう。」

「あの変な不審者の仲間だったんだ…。ヨミお姉ちゃんはお願いごと叶ったの?」

ヨミはミロクを見ながら答えた。

「…うん、そうだね。私は幸せだよ。」

「………よかったね。」

「それにしてもお師匠様は相変わらずイメージ悪いよね。」

「ほんとにそういうあだ名ははた迷惑だよ。」

「そういうところも含めてお師匠様が大好きだよ。」


エクステラはこの場をまとめるように言った。

「今日は歓迎会だよ!もっとみんな笑おうよ!ほらほら、エクスバースちゃんも笑って。」

エクステラはエクスバースの頬を引っ張って、無理やり笑わせようとした。

「ほはへ、ふはへへんほは。(お前、ふざけてんのか。)」

「ほらほら~、笑わないと損だよ~老けてくよ~。」

「…はっへひひっへほ(勝手に言ってろ)。」

「ほら、もっともっと。」

その時エクステラは足を滑らしエクスバースの上に乗りかかる形で倒れこんだ。その時、2人が完全にキスをしているような状況になってしまった。それを見た全員は笑ってしまった。そして突き放すようにエクステラを力づくでどけたエクスバースはため息をつきながら言った。

「なんでこんな目に合わないといけないんだ。」

エクステラが起き上がってエクスバースに言った。

「でも、ほら見て。あんなに重かった雰囲気が明るくなったよ。楽しいパーティなんだからもっと笑顔を広げないと。どう?エクスバースちゃん、もっとアブナイ事、してみる?」

「絶対に断る。私は寝る。」

「だよね~そう言うと思いまして、個室のカギ閉めておきました。」

「ちょ、お前。いつの間に!」

「治療中の時だよ~。」

「あぁ~。もう!」

「でも、エクスバースちゃんも有間お兄ちゃんと一緒にいたいよね。」

「べ、別に思ってない!」

「はい、わかりやすいツンデレいただきました~。」

「エクステラ~!今度という今度はその精神改ざんしてやる~。」

エクステラとエクスバースの追いかけっこが始まったがすぐに決着がついた。エクスバースがすぐに力尽きた。

「ぜぇぜぇ…今回は…はぁはぁ…本当に…ゴホッゴホッ…許さな…い…げぼっ!」

エクスバースが吐血しながら倒れた。有間がエクルを呼ぶ。

「エクル~!急患1人追加だ。」

「はぁ~い、お兄様。」

この流れにあの笑わない真面目モードのミロクすらも笑いをこらえて、苦悶の表情を浮かべるほどだ。こちらには少し見慣れた光景だが新しく加わった二人はどうだろうと思い見た。

末無はというと、未愛と会話していた。

「あれは大丈夫なんでしょうか。」

「う~ん、大丈夫だと思う。今までもあれでも大体翌日には復活してるから。それにしても末無さんからはとんでもない愛を感じます。今度一緒に話しませんか?末無さんに色々教わりたいです。」

「う~ん、未無に許可を取ってみるよ。」

末離はというと、ミミに話していた。

「ねえねえ、あなたって私と同い年くらいに見えるね。」

「…そう、かな?…私、体のほとんどがぬいぐるみだから…でも、たぶん…そうかもね。」

「私その力気になる。今までいろんなお化けや化け物を見てきたけど、こんなのは初めてだよ。」

“ミミちゃんにナニカしたら即刻破壊してやる。”

たぶん大丈夫だろう、うん大丈夫だ。


有間は未離に心の中で伝えた。

“ここにいるメンバーはみんな過酷な運命にあっている。それなのにこんなにもみんなが幸せになっている。それは彼女ら個人の力もあるだろうが、いつも未離が心を、本質を引き出しているからだと俺は思う。まぁ、よくやったな。”

未離はこちらに向けて笑いかけてきた。

これからまた新しい生活になる。妹にしか目がなかった俺はいつしかこの生活にも楽しさを覚えていた。

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