終章


ミロク&未無


「フフッ、やっぱり丸くなったなお前。」

ミナの部屋(末無と未無の部屋)でミロクと未無が紅茶を飲みながら話していた。

「丸くなったのはお前の方なんじゃないか、ミロク。」

「私はあれから本当に辛かったからな。」

「それにしても末離にまで変なイメージ持たれて大丈夫か?」

「割と傷ついてるよ、ほんと。」

「確かに話を聞いてる限りには踏んだり蹴ったりだな。」

「それに関しては聞かないでくれ。あまり思い出したくない。」

「まぁ、結果うまく転んだだろ。悪い展開は感動のスパイス。いい経験だろ。」

「そう…だな。」



未愛&末無


「ほぇ~、そんなことまでしているなんて。やっぱり聖女って言われていただけはありますね。今までの行為で満足していた私が本当に無知だったってわかるよ。」

未愛は自分の部屋で末無から愛情や優しさについて学んでいた。

「でも、私はあまり誰かに特別な愛を与えるなんてしたことありません。そんなことができる未愛さんもすごいですよ。私にはあまり勇気がないのです。」

「じゃあ、末無さんは未無さんと末離ちゃんにどんな感情を持ってるの?」

「それは…あの子たちには私が助けられるすべてを尽くしているだけです。」

「すべてを尽くせるならいいじゃない、自分ひとりで自分ができないことをすることはないよ。でも、言うなら末無さんはもっと人と接するべきですよ。」

「勇気を出してやってみます。本当にごめんなさい、私が教えるべきなのに教わってばかりで。」

「助け合いは当然のことでしょ。貴女は背負いすぎている。」



未離&末離


虚無邸の庭で真っ白な空をぼーっと眺めている未離のもとに末離がやって来た。

「あの時は…その、ご、ごめんなさい。永遠の痛みなんてあなたには重すぎる。」

「別にいいよ。新しい体験は私にとって、きっといいことになるから。それが苦しいことでも。」

「ほんと?」

「うん、私いつかお兄ちゃんを護れるようになりたいから。こんな事じゃ諦めない。」

「よかった。それにしても本当に私たち似てるね。」

「私は左側、あなたは右側。罪を背負ってる。」

「うん…。本当に奇跡みたい。この子たちもざわついてる。私に似てる人が現れて。」

「私たちいい友達になれそう。」

「うん。悪魔の約束だよ。」

「ふふふ…。」



末離 その後


ノックが聞こえる。

「はいは~い、今お師匠様は留守だよ。」

「ヨミお姉ちゃん…私、末離。お話がしたいの。」

「…上がっていいよ。」

……………。

「へぇ、私のことについて聞きたいの。」

「うん、だって私、約束を果たしたけど…なんというか、話しづらいの。ヨミお姉ちゃんは約束果たせたみたいだからどうしたらうまくいくのかなぁって。」

「…。私があの時の私だけじゃないって大体わかるよね。」

「…うん。あの時のヨミお姉ちゃんはもっと気弱そうだったし。」

「これはね、絶対内緒だよ。約束できる?」

「うん…。」

「よし言った。実はあの時の私はね、記憶はないけど記憶喪失じゃなかったの…」

……………………………………。

「えっ…。」

「絶対内緒だからね。」

「うん。」

「だから、あなたのしたこと。全部全部お姉さんに伝わるから。ちょっと待っててね。」

……………………。

「よし、じゃあ、おまじないしてあげる。私と手をつないで、貴女が望みたい想いを強く願って。」

“私は末無お姉ちゃんを護りたい。そして、独り占めじゃなくてもいいからたくさん愛されたい!”

「はい、これはあなたの想い。この炎、飲み込んで。」

それを飲み込んだ私は今までよりもずっとずっと強く、まるで心が溶けてしまうほどこの想いが愛おしく感じる。それを想うだけで涙が出てくる。

「ほら、あなたの想いは偽物なんかじゃない。むしろ強すぎる…純粋すぎる想い。いいと思うよ。あなたはまだ小さい子供なんだから。」

「うわぁぁぁぁぁん、怖かったよう。寂しかったよう。」

「よしよし、いい子だから。その涙は想いの強さ、気が済むまで泣いていいよ。」

そこへミロクが帰ってきた。

「お~い、ヨミ。お茶を淹れてくれないか。やはり私には西洋の紅茶なんてものあまり口に合わないらしい。」

「し~、お師匠様。今取り込み中。」

「…そうか、私は先に寝室へ行ってるからな。」

「おやすみなさい。」


私も昔から変わらない、純粋な子供の想いのままお師匠様を追い続けている。それはお師匠様が強くて弱いから、私がいないとすぐに崩れてしまう人。あの人は誰よりも強く、そして繊細だ。まるで無敵の城壁が一つの穴ですべて崩れ去ってしまうように。この子も純粋だけど繊細過ぎる。だから、末無さんだけを追っていると前みたいに狂ってしまう。私もこの子のあこがれになれるのかな、そんな想いを燃やす私は末離ちゃんに一つだけつぶやいた。“私は末離ちゃんの役に立てたのかな。”泣き疲れて寝てしまっている末離ちゃんの顔はすごく安心しきっていた。そんな顔を見て私は自然と笑顔になっていた。

そう、頑張ってきたことは絶対に無駄にならない。想いは虚無のように形はないし、他人には分からない。でも、自分の中で確かに存在している。そのための行動は必ず報われるから。私にとっての虚無の女神は、虚無による物事の終末論じゃなく、想いのような認識できない未知を虚無にさせないために存在している。誰かの想いがちゃんと相手にわかるように、自分で自分の想いを見失わないようにするのが私の役目なんだ。

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