1章 白に染まりし天使、黒に染まりし悪魔

 少し前、有間は未離にこう言った。

「未離、俺は少し調べ事があってな、お前に迷惑はかけたくないからしばらくリンクを切る。だから、危険なことはするなよ。」

私は女神になってからは死という概念から外れた。なのに、どうしてお兄ちゃんが心配しているか分からなかった。

散歩を続けていると路地裏へ出た。そうだ、確かこの辺りは私がミナさんにさらわれた後、エクスバースちゃんの研究室があったところだっけ。あの研究室は今ではなくなっている。そんなことを懐かしんでいた。

そして、運命は狂った。私は見てしまった。



 私はただ狩りをする獣。ただ力をねじ伏せ食らうだけ。力を持つ人間はとてもつまらない。だからいつからか獲物に対して会話をしなくなった。そして今日も力を持つ人間を路地裏に連れ込み、この爪でぐちゃぐちゃに引き裂いて、私の中の獣が食らう。私は悪魔だ。悪魔を食らった。こんな姿、お兄ちゃんとお姉ちゃんに見せられない。見られたら、あの頃の優しさなんて見せてくれないだろう。でも、会いたいから。私は今日も食らう。少しでも二人に追いつくために。



 私は路地裏で見てしまった。私は見つからないように隠れながら観察した。私と似ている黒髪の女の子が明らかにガラの悪い男性といた。あの子が襲われてしまう、そう思って助けようと飛び出した私はその惨劇に目を疑った。そこに男性の姿はなく、肉塊と無かったはずの右手から異形の形をしたものが出ている少女があるだけ。その少女はこちらに気づくとこういった。

「あれ?私と似てる…そしてこの世のものではない力を感じる。あなた何者?」

私は驚いたが、このような状況には何度も置かれていたので恐怖などはなかった。

私は答えた。

「私は虚無未離。あなた昔の私と同じ…後悔とか会いたい人がいるとかない?」

黒髪の少女は驚いた顔で言った。

「会いたい人…か。あなたには分かるの?私のこの複雑な気持ち。私にはもう願いしか残っていないの!この願いを失ったら、私が私でいられない…私の中のナニカに呑まれちゃうの!」

それを聞いた私は悟った。この子は昔の私よりはるかに絶望している。

そして少女はこう言った。

「だから、あなたも私の願いの糧になってくれる?いや、犠牲になッテくれル?」

そういうと少女は私に襲い掛かってきた。

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