第6話



「ちょっといいかな」


 そう言ってきたのはいつものように警察官だった。

 

 またか

 

 洋はいつものように警察官の相手をする

 

 なんだかんだと屁理屈をこねてくるのを

 

 いつものように聞き流していたが、

 

 何故か今回は逮捕された。

 

 

 洋はそれでも信じていたのだ正義というものを

 

 警察官に今までに何度、声をかけられて来た事か

 

 それも仕方のない事なのだと思っていた。

 

 自分は協力している、役割を果たしているのだと

 

 

 身に覚えのない罪に、自白を強要される取り調べ。

 

 勾留期間の延長。

 

 突然の釈放。

 

 

 碌な説明も謝罪もなく、ただ出され

 

 当然仕事は首になり、何もやる気がない日々が続く。

 

 久々に出た買い物で木崎に会った。

 

 木崎は中学の時の先輩でよくしてもらった。

 

「どうした洋、元気ないな? 」


「そうっすかね」


 折角の再会なのに、気のない返事。

 

 先輩には悪いと思いつつも、どうしようもなかった。

 

「よし、飲みに行くぞ! 」


 その誘いを断る気力さえなく、後をついて行く。

 

 そうして、全てを吐き出した。

 

「なるほどな、お前は悪くはねぇよ」


 先輩はそう言ってくれた。

 

 そう言われただけで、少し気が楽になったのは本当だ。

 

 だから、いつも以上に飲んでしまった。

 

「わかったよ。俺が準備しといてやる」


 先輩はそう言って


「ちょっと時間がかかるからな」

 

 そう言われた事を何となく覚えている。



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