3話: マスク女子と出会う PART2

 とはいえ、案外簡単だった。


「……!」


 瑛助は目を見開かずにはいられない。

 あまりにもあっけなく、璃海がマスクを外したから。


 横からの角度では、マスク女子の素顔は殆ど見えない。けれど、絶対に外すことはないと思っていたマスクが、璃海の右手に持たれているという事実だけで、瑛助は唖然と立ち尽くしてしまう。

 しかし、立ち尽くすのは瑛助だけ。


「あ。素顔とか興味ないッス。友達も要らないッス」とでも言いたげ。大きな欠伸を終えた猫は、軽い身のこなしで地面へと軟着陸。

 そのまま璃海のことなど気にも留めずに、スタコラサッサッ。

 どんどん離れていく猫へ手を伸ばす璃海が切ない。


「またフラれました……」


 ロミジュリの寸劇を見ていたはずが、いつの間にかスライムの茶番劇。

 某RPGなら、スライムは次の勇者たちを求めて草原のフィールドマップを彷徨さまよい続けるのだろう。

 だからこそ、必然なのかもしれない。

 璃海が次の勇者、自身の背後から伸びる人影に気付いたのは。


「へっ!?」


 振り向いてしまえば最後。瑛助の存在に気付いてしまう。

 驚きの度合いで言うと、瑛助も負けていない。

 マスク女子の素顔、すなわち、誰も見たことがない璃海の素顔を拝んでいるのだから。


 反則だと思った。

 まるで抑えていた力、隠していた力を一気に解放したような。能ある美少女は、顔を隠すとでもいうような。

 それくらい、瑛助の想像を容易に上回るくらい、璃海の素顔に見惚れてしまう。

 マスクから覗いていた大きな瞳に相応しい、形良いほんのり桜色の唇、控えめな小鼻。顔立ちが整っているだけでなく、パーツの1つ1つが最良な大人っぽさや色気っぽさなどを兼ね備えている。大和撫子という言葉さえ欲しいがままにしている。

 たかだか15年弱しか生きてはいないが、「この人以上に、綺麗な人と出会うことは金輪際ないだろう」と確信してしまうほどだった。


 だからこそ、瑛助はもう1つの感情を抱いてしまう。

「この人以上に、残念な人と出会うことは金輪際ないだろう」と。

 そう確信してしまうくらい、目前の璃海は、顔を真っ赤に染め上げていた。


 素顔を見られたから? 猫と話しているのを聞かれたから? 何度も友達作りに失敗していることがバレたから?


「ぜ、ぜ、全部見られてた…………っ!」

 アンサー、一部始終見られてたから。

「~~~~~~~っ!!!」

 夕陽に負けないくらい顔を燃やし、言葉にもならぬ声で口をわなわな。凛とした瞳は瞬きしたら涙が零れると開く開く。美人が台無し。

 いと哀れなり。


「あ、あの。俺は何も見て――、」

「おおおおお構いなく――――――――~~~っ!!!」


 羞恥が極致な璃海は、瑛助のフォローなど聞く耳持たず。

 マスクを着ける時間さえ惜しい。それでも顔は見られたくはないのだと、両手でしっかり顔をガード。

 逃げる準備は整ったと全力疾走。


 視界不明瞭。そのまま、電信柱に正面衝突。

「うぎゃ……!」と、良く分からない悲鳴とともに、璃海がその場で大悶絶。


 瑛助は呟く。

「マジか……」






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マスク女子は残念系女子。


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【お知らせ】

今作品以外にも、


・書籍化予定を発表したばかりの『おっぱい揉みたい~』

https://kakuyomu.jp/works/1177354054893179985


・構って新卒OLちゃんがヒロインの話

https://kakuyomu.jp/works/1177354054913855605


なども公開しています。


どちらも、どうぞよろしく!

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