第2話 『なめくじろさんは語る』

 つぎのばん、また、お風呂場で、ぼくは、小さな声を聞きました。


 『やましんさん。やましんさん。』


 『あら、どなた?』


 『ぼく、なめくじろです。きのう、まどから、ぽいされました。あの、なめくじろです。』


 『あらら。それはまた。』


 『そのせつは、お世話いただきありがとうございました。』


 『いやあ。まった。ちまり。恨まれたかい。』


 『いえいえ。そうではありません。ぼくと、なめくじこは、この、天国のような場所に置いていただいたのは、感謝していました。しかし。やはり、広い世界を見てみたい。そう、思っておりましたのです。しかし、決断が着かずにいたのです。それが、さきに、なめくじこは、排水口から、外に出ました。』


 『あらあ。君たちは、夫婦かい?』


 『そうです。彼女の居場所は、わかっています。ぼくは、チャンスを与えてくださった、やましんさんに、挨拶をしようと思いました。


 ぼくらは、世界に羽ばたきます。ありがとう。もう、お目にかかることもないでしょう。死にたいなんて、お風呂場で言わないで、生きてください。さようなら。ありがとう。』


 なめくじろは、しずかに、排水溝の中に、去ってゆきました。


 ぼくは、のぼせて、幻想を見たのか、幻視だったのか、わかりません。


 もしかしたら、罪悪感からくる、自己弁護みたいなものかとも思いました。


 まだ、はしらの上に、小さなナメクジさんがいます。


 なめくじろと、なめくじこの子孫なのか、関係ないのか、そこんとこも、わかりませんでした。



 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



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『小さなお話し』 その104 やましん(テンパー) @yamashin-2

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