エリカルートafter(終) 2月15日:アキラの誕生日
「エリカ、誕生日おめでとう!
今年は少し本気を出して、ケーキを作ってみたよ!」
「ありがとなんです、ミナト。
思えば、あの姫神エルメスとの姫皇選挙から1年が経つんですねー」
「そうだね……何だか、1年があっという間過ぎて、全然実感が湧かないや」
「今年も色々ありましたしね。中でも、姫神エルメスを救出するために、みんなで鳳凰院家に突入した時はヒヤヒヤしましたよ」
「まさか、あのネメシアさんが変装してまで、エリカの助太刀に来るとは思わなかったよ」
「ネメシス・クイーンでしたっけ? いい歳したオバサンが変なマスクをつけて、変な名前を名乗ってて面白かったですね。いつか脅迫に使えると思って写真を撮っておいたんですけど、見ます?」
「み、見ない見ない!
ネメシアさんに悪いから、消してあげようよ!」
「まぁ、結果的にエルメスは救えたし、消えるはずだったアルルンの人格も上手く統合できたし、よかったんじゃないですか? 悲劇を覆すって奴ですよ」
「そのセリフ、まだ発売もしていないゲームの主人公の口癖だよね? 誰にも伝わらないから本当にやめようね」
「探偵シミュレーションアドベンチャー『探偵撲滅』は2021年5月27日発売予定です。皆さんよろしくですよー」
\伊草流逮捕術の使い手も出るぞ/
https://nippon1.jp/consumer/bokumetsu/
「宣伝はもういい?」
「あ、はい。では、本題へ戻りましょう」
「来月で、ウランさんとマリカ姉さん、それにマリカ姉さんに付き合って留年したダリアさんもとうとう卒業するんだなー……何だか、スゴく寂しいよ」
「1年生扱いの私はともかく、ミナトやリラぽんは最上級生ですもんねー。まぁがんばり過ぎない範囲でがんばってください」
「そんなこと言って、来年はエリカがボクたち抜きで、一人でがんばらないといけないんだよ? 平気なの?」
「う"っ、持病の人間アレルギーががががが……私はしばらく自宅で静養します……ちょっと宇宙で人狼に励もうと思うので、学園には上手いこと言っておいてください」
「何で人間アレルギーなのに人狼はがんばれるの……?」
「いや、リアルの付き合いがない人間とのオンライン通話は別腹なんですよ。最悪、こじれても絶縁すればいいだけですし」
「発言が生々しいなぁ。エリカだって今はもう『姫』の一人なんだから、おかしな理由で学校を休んじゃダメだからね?」
「何で私を『姫』に選ぶんですかねー……しかも『鬱姫』って。ほぼ悪口じゃないですか。私をハメたい誰かによる陰謀だと本気で想っていますよ」
「エリカのそういう歯に衣着せない部分が魅力なんだと思うよ。ボクもそんなエリカが好きだしね」
「うっ、で、出た……ナチュラルに褒め殺してくるヤツ。いつかミナトがガチ恋勢に殺されやしないかと、私は本気で心配ですよ」
「えっ、どういう意味?」
「と、ところで、そろそろケーキを食べてもいいですか? 早く食べてあげないと、私の口へ飛び込みたがってる生クリームさんやフルーツさんたちが、かわいそうです」
「ああ、ごめんね。今切り分けるよ」
「わーい♪
こうして食卓を囲んでいると、何だか私たち、本当に家族みたいですよねー」
「何言ってるの?
ボクはもうとっくの前から、エリカは家族の一員だと思ってるよ」
「え……?(もしかして今の、遠回しのプロポーズです?)」
「え……?(従兄妹同士だし、家族のようなものでしょ?)」
「じゃ、じゃあ……これからは毎年、私のためにケーキを作ってくれますか?」
(訳:私と結婚してくれますか?)
「うん、エリカのためなら喜んで作るよ」
(訳:うん、エリカのためなら喜んで作るよ)
「え、えへへ、そう、ですかー……ミナトがそんなに私を大切に想っているなら、仕方がないですね。私も、前向きに検討してあげます」
「前向きに検討って……
(ちゃんとボクがケーキを作ったら食べてくれるって)信じてるからね?」
「は、はい……」
一方その頃、扉の隙間からエリカたちの様子を覗き見していたマリカとダリアは――
「くそっ、じれったいなァ……!
マリカ、私がちょっとやらし…告白する雰囲気にしてくるよ!」
「落ち着きなさい、ダリア。あの二人の好感度は互いにMAX。正式にくっついたら、もうあとはサクッと結婚してしまう未来しか見えないでしょう? 正直、それは寂しいと思わない?」
「それは、そうだな……ハッピーエンドは嬉しいが、今のもどかしい気持ちをもう少しの間、楽しみたい気持ちもある」
「ええ。まだ少しの間、このくっつきそうでくっつかない微妙な関係性を、近くで見守りましょう……というか、私が見たい。ずっと見ていたい。私の弟と妹、本当に可愛すぎる。もはや人間国宝でしょう……ここを保護区にしたい。私が総理大臣になったら、保護区にする」
「相変わらず、ブラコン・シスコンを発動した時と浮気に気付いた時のマリカは怖いなぁ……そんなところも好きだけどね」
――END
ボク姫様と折々日和 ボ @bokuhimeJK
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。ボク姫様と折々日和の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます