第2話

城内をあるくレナードに雑音が届く

内容がわからないほどの音量を人の声

それは、昔からよくレナードに向けられていた。


素性のわからない子供が国のトップと親しくしている。愛でられ、共に笑っている

小柄で軍人になる規定にも満たない者が王の側近。あれは、なにかやましいことがあるのでは?

人には言えないような秘密が?


時々漏れ聞こえる言葉から推測するに、そのようなことを誰もがコソコソと話しているのだ。

しかし、それを直接聞きに来る者はレナードが拾われてから今まで誰一人としていなかった。


「レナード」


ザイに渡す資料を持ち執務室に向かって黙々と歩くレナードを呼び止める声があった。

レナードがその声のした方を向くと、そこには凛とした佇まいの綺麗な女性が立っていた。


「スフィナ様、おかえりなさいませ」

「ん。ただいま!」


その女性はスフィナ。

ゼイの姉、この国のお姫様だ。


ただ、スフィナは普通のお姫様ではない。

身につけているのは重そうな鎧で、腰には立派な剣が2本も刺さっている。

スフィナは軍人として戦場を駆け回り、先程第一線から帰還したのだった。


「ゼイの側近になったんだろ?友達同士気楽でいいなぁ」

「友達だなんて、とんでもありません」

「……ふーん。そーゆー事言ってるとゼイが泣くぞ」


ゼイとの間柄について、本気で否定するレナードにスフィナは少し傷ついたような表情をした。

しかし、レナードにとってゼイはもう友とは呼べない関係になってしまっていた。

忠誠を誓った、あのときから


「まぁ、いいや。もう子供じゃないんだし、自分達の距離感は自分たちで決めないとね。ゼイのところに行くんでしょ?一緒に行く!土産話もあるしね」


そうして一緒に執務室に行くことになったスフィナはしっかり測ればレナードより身長が低いものの、ほぼつま先立ちのようなヒールを履いている為、今の身長はレナードより少しだけ高かった。


自分が女性なら、あのような靴を履き身長をかさ増しできるなぁ等と考えたレナードは

そもそも、女性なら自分の体格にこんなに悩むことは無かったのだと気づき、自分の目線より少し上にあるキレイな女性の顔を羨ましげに見つめた。

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