レナード・セレーナ

@manakiria

第1話 レナード

その者の名はレナード

ここ、キギザ帝国の王室で王様の側近をしている。

年はおそらく17か18、もしかしたらもっと下かもしれないが上かもしれない。

ハッキリしないのはレナードが捨て子だからだ。


ある雨の日、レナードは王族の城の前に捨てられていた。頭のてっぺんから足の先までボロボロで、うつろな目をした子供を連日続いていた大雨の視察に出ていた王様が見つけ城に招き身を綺麗にしたところ、その子供はとても愛らしかった。

王様はそのまま城で面倒を見つつ、自身の息子の側近になるよう育てた。


今はまだ、王様の側近として働いているレナードだったが

本日、王様の息子・ザイが政務に入ると同時にザイの側近になることになっていた。


幼き頃より同じ時間を過ごした事はあったが、最近はお互いに仕事や勉強が忙しくもう、子供の頃のようにお互いを名前で呼び合うような仲でもなくなってしまっていた。


正直に言うと、気まずい空気の流れる予感しかないレナードは今日の引き継ぎ作業や、各所への挨拶が少しだけ憂鬱だった。


そして、最後にはザイの元に行き

これからの忠誠を誓うのだ。


(昔は追いかけっこやイタズラを一緒にした、身分違いの友人に〈忠誠〉か…)


剣を掲げザイに忠誠を誓いながらレナードは昔を思い出していた。



ボロボロで今にも消えてしまいそうだった汚らしい自分を掬い上げてくれた王様の息子

ザイもまた、優しく暖かな目をした少年だった。

王様に紹介されて初めて会った時から、ザイはレナードの手を引きいろんな場所に連れて行ってくれた。


いつしか会う時間が少なくなり、顔を見る距離が遠くなった。

そして今度は後ろに控える。


昔一緒にしたイタズラが成功したときに見せた無邪気な笑顔を見れるのはもうなさそうだ。と

誓いの言葉が終わったレナードはゆっくりと顔を上げ驚愕した。


レナードの記憶のザイはとても可愛らしい少年で、遠目で見たときもまだあどけなさが残る青年だった。


それが、今は自分よりも遥かに背が高くガタイがよく整った顔立ちの男性になっていた。


「レナード」

「っはい!ザイ様」

「久しぶりだが、お前はあまり変わらないな」

「申し訳ございません。あまり体躯が成長せず、軍人になり損ないました」

「お前が軍人にならなかったおかげで、再開できたんだ。そう言うな」

「…ありがとうございます」


レナードは苦い顔をした。

というのも、レナードの身長は167センチとあまり伸びなかったのに対して

ザイはというと190センチあるのではないかという程の成長具合だったからだ。


護衛も兼ねてるはずの側近なのに

背は小さく、それに伴って線も細い。

これではどちらが守られてるのか…

そんな陰口が、おそらくすぐにでも城内を駆け巡りそうだなぁとレナードはザイを見上げながら思った。


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