最終章 僕たちの未来と信念
「私を殺せ」
父は言った。
僕は父を前に、考えられなかった。
僕の人生は、すべて、彼に支配されている。
怒りや憎しみが度を過ぎたのか
情報量が多く理解しきれていないのか
驚きなのか
実は気づいていたのか
それ以外か
僕にはわからなかったが、僕は冷静だった。
僕は
僕はいったい何者なんだろう
僕は
僕は僕なのだろうか
僕は考えている
僕は考えている
なんだ、考えているじゃないか
何を
何を考えている
何を考えている
僕は自分が何を考えているかを考えている
僕は自分が何を考えているかを考えている
僕は自分が何を考えているかを考えている
僕は何を考えるべきなんだろう
僕の頭に老婆の言葉がよぎった
『一つ、不幸を認める事
二つ、不幸の原因を認める事
三つ、不幸の対策があることを認める事
四つ、不幸の対策をするために、習慣を変えることを受け入れる事
これらを少しずつクリアしていくことで、私たちは成長できる。まずはそのはじめの一歩が、自分の状態に気づくことなんじゃ。』
僕の不幸はなんだろう
父に人生を設計されていたことか
誰かに作られた道を歩いている事か
いや、腑に落ちない
過去は変えられない
今は
今僕はそもそも不幸なのか
不幸ってなんだ
不自由、不満
僕は何に不自由している
分からない
………
分からないことは不自由だ
分かるためには
自分の状態に気づくこと。観察すること
今、僕の前には父がいる。僕は父に刃を当てている
今、僕は考えている
今、凜や杏が瀕死になっている
今、僕のしたい事
今、僕に必要な事
今、僕がしなきゃいけない事
「貴様は何を生む」
僕は何を生む
今僕の、頭の片隅にあること
知りたい
助けたい
そのためには
今の僕にできるのか
父との関係を、今決定できるか
凜や杏を助ける事が出来るのか
前者はわからない
後者はできる。彼女たちのもとへ戻る
戻るとしたら父はどうなる
………
「父さん。」
父は僕の目を見ている。
「正直、僕には、まだ、わかりません。」
父の表情は変わらない。
「ただ分からないことはわかります。考えることはできます。僕とあなたの関係に、時間をいただきたいです。」
しかし父の目線は再び、僕の先にある何かを見ていた。
「…僕は今まで、あなたに服従、そして依存してきました。だけどもう、自分で考えたい。正直、あなたに怒りや恨みはあるのかもしれません。しかし、あなたに依存することで助けられていたところもあります。だけど、もう仮面は取ります、僕は僕でありたい。」
父は沈黙している。
「僕は僕であるために、自由を取り戻していきます。」
「………そうか」
「父さん」
「………なんだ」
「ありがとうございました。」
僕は彼の目を見つめる。
父の表情は変わらなかった。
彼は変わらなかった。
僕は父に話した後、彼の身体から降りた。
僕は立ち上がり、扉を開け、その先へ進んだ。
次章 子供たち
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