6/7章 再開

第1/3話 僕たちの進化と父の部屋

〈再開〉


「さぁ行こう、杏。」

「ええ!」

僕たちは父の部屋へ向かう。


凜の洗脳を止める。


決着だ。

僕は父と対峙する。


僕は杏を抱えた。


「きゃ!」杏は驚いた。


僕は床を踏みつけた。

レンガでできた床全体に、ヒビがはいる。


「父の部屋はこの城の一番下にある。最短で行くよ!」


床が崩れ始める。


僕は杏を抱えたまま跳び、床が崩れ落ちるのを眺め、全て落ちた後、下の階に着地した。


「あなた、本当にすごいのね。」


「これくらいは。」


僕は高揚していた。

今の僕になら、できるかもしれない。父と、やり取りができるかもしれない。


僕は扉の前に行き、蹴り破った。

しかしそこには土人がいた。


簡単には進めないか。


僕は杏を下ろし、自分の背後に移動させた。

土人は三体、カイラクの仮面をつけている。手にはマシンガンを持っていた。


「杏、伏せて」


僕は刀を構える。

闇が僕をとらえる。

しかし、もう、苦しくない。


僕は斬撃を土人の足元に飛ばした。


闇を帯びた斬撃は彼らの前ではじけ、砂ぼこりが舞いあがる。


僕は彼らに跳んでいき、一体ずつ仮面に峰を入れる。彼らの仮面は割れ、土人は倒れた。


「杏、もう大丈夫だよ」


僕は伏せていた杏のもとへ移動し、手を差し伸べた。


「一瞬ね…。」

杏は倒れた土人を見て言った。




僕たちは先へ進んだ。

目の前から足音が聞こえてくる。


10体はいるな…


「こっち。」


僕は杏の手を引き、右側の壁を蹴り崩した。


隣の部屋には何もなかった。

僕たちは部屋の中心に走り、僕は杏を抱え、床をけり崩した。


下の階には医療的な道具が置いてあり、どれも古びていた。


それをわき目に、僕たちは扉を開ける。


しかし土人がいた。


四体。


何回繰り返しになるかわからない。

僕はどうすればいい。

早く父のもとへ、凜のもとへ行かなければ。


そう考えているうちにも、上から響く足音は大きくなっている。


今は、移動するしかない。


「杏、走るよ!」


杏を下ろし、手を引く。

しかし彼女は動かない。

「杏?」


「湊、私を置いていって。」


「そんなことできないよ、一緒に行こう。」


「私がいると遅くなるわ、あの人を助けてるには、あなたは速くいった方がいいんでしょ?」

「そうだけど、君が狙われる可能性もある、それに君はもう不死身じゃない。」


杏は僕を見つめている。


「………そうね、ごめんなさい。時間をとらせてしまったわ。行きましょう。でも、もう少し 私を雑に扱ってちょうだい。できるだけでいいから。」


「…うん、分かった。」


僕は杏を背中に抱え、走り出した。

杏は僕の背にしがみついている。


僕は壁や床を壊したり、扉を突き破ったりしながら、下へと進んでいった。あるときは階段を下ったり、土人と交戦したり、トラップをよけたりした。


移動を続けていると、部屋に出た。


その部屋には、見覚えのあるベッドがあった。

この部屋は…


そこは母と暮らした部屋だった。そして初めて父と出会った部屋だ。


次の部屋に移動しなければならなかったが、僕にはこの部屋を壊すことにためらいがあった。

この部屋を壊すことは、自分の肉体を自分で傷つけるような感覚だった。


僕は懐かしさのおかげで、周囲に気を配れた。


杏の力が弱くなっていた。


「杏、大丈夫かい?」


「…だい、大丈夫よ。」

杏は息を切らしながら微笑んだ。


杏は、暴れまわる猛牛にしがみついていたようなものだった。いやそれよりも酷い。


僕が歩き出そうとすると、僕にかかった杏の腕が、力強く、僕を絞めた。


「湊、ありがとう。でも私は大丈夫だから、急ぎましょう!」


僕に決意を訴えるように、杏の心臓が僕を叩く。

僕の心臓も速い。


僕は部屋を眺めた。


…ごめん。…ありがとう。


僕はその部屋の床を壊した。


部屋が崩れて下の階に移動すると廊下に降りた。

正面は壁で行き止まりだった。

しかし、見覚えのある光景だった。ここは3か月前、ホホエミの土人と一緒に来た場所だった。


僕は壁を蹴り壊そうとしたが、やめて、正式に扉を開けることにした。


なぜかはわからない。

父にまだ怯えているのか、逆に相手を怯えさせたくないのか、それ以外かもしれなかった。


僕は、土人が押していた通りに、レンガを押し込んでいく。

押し込み終わると、やがて壁が、扉のように開いた。


「杏、立てる?」


「…えぇ。」


僕は杏を背中から降ろした。


彼女は大丈夫だ、というような表情をしていたが、かえって強がっていることを強調させた。


「君にはここで待っていてほしい。」


この先に父がいる。

彼と戦闘になるかもしれなかった。


杏は何も言わず、うなずいた。


扉の先に、黒い扉が見える。


僕は先へ進んだ。


扉の前に、土人はいなかった。

扉を開けて、部屋に入る。

部屋の中央の階段の頂上に、人影が見えた。




















その人影は、メイド服を着ているようだった。

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