第3/5話 僕たちの前には父の部屋

その後は何事もなく、僕たちは下り続けた。あるときは別の道を歩き、階段を使った。侵入者対策の、迷路のような構造がこの城の特徴だった。


十分ほど歩いていると、土人は立ち止まった。


彼の先を確認すると、壁があった。様子をうかがうと、土人は目の前のレンガを数か所、不規則に押し込んだ。すると壁は扉のように開いた。


僕はその扉の先に、見覚えのある、黒い扉を見つけた。


僕の体は硬直する。


僕は深呼吸する。


着いてしまった、父の部屋に。


深呼吸。


先に進む土人についていくと、扉の前に二体の土人形がいた。彼らは僕たちの体を調べた。父の部屋に武器を持ち込むことは禁止だった。

僕は他人に触られるのは不快だが、体中を触れられている間の意識は、扉の向こうにあった。

僕の全身に、嫌な汗が出ている。


深呼吸。


調べ終えた二体によって、扉が開かれた。

僕の土人が先に入っていく、僕はその背中についていく。

部屋は円形になっていた。入って正面の奥に、円状の高い階段が置かれ、その頂上に王座のような椅子あった。


父が座っていた。そこに。


僕は父の存在を確認してしまった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る