第3話

 入学式の朝、柊は教室に入ると西条が駆け寄ってきた。


「おはよう」

「おはよ」

「入学式終わったら一緒にご飯食べない?」

「家族が来るから無理」

「俺の家族と知り合いだし家族含めては?」

「写真とか撮りたいみたいだしとりあえずまた今度で」

「おっけりょーかい」


 柊としても家族と写真を撮るのは高校生にもなって恥ずかしいのだが、親元を離れて一人暮らしをさせて貰っているので今日1日ぐらいは我慢しようと思っていた。


「そういやだけど今日も小学校いくのかい?」

「え、なんのこと」

「おまえ小学校でバスケやってるだろ」

「だからなんで知ってるの」

「柊の親から聞いた」

「まじか」

「どこにあるの」

「来る気?」

「もちろん!久々に1on1しようや」


 もともと柊の親と西条の親は知り合いの上に仲が良く、西条は親経由で柊が毎日小学校の体育館でバスケをしていることを知ったみたいだった。西条とは中学の時によく1on1をしており、いつも柊が勝つのだが、めげずに挑み続けてくるのだ。


「わかった。8時小学校前な」

「よっしゃ!りょーかい」

「なにが楽しいんだか」

「そりゃ柊に勝って一泡吹かせることでしょ」

「100年早い」

「うるっせ!今にみてろ」


 と話していると2人の女子生徒が話しに割り込んできた。


「おはよう西条くんと...ごめん、名前教えて貰っていい?」

「柊です」

「柊くんよろしくね。私は小沢」

「柊くんか。私は海老沼」

「よろしく」

「それで西条くんと柊くんは何話してたのー?」


 柊はクラスメイトの小沢さんと海老沼さんは西条目当てだろうと考えてこの場から逃げようとした。しかし目敏く西条はそれを察知して柊が逃げられないようにした。


「柊と今日ご飯たべようって話してたんだよー」

「え、ごはん食べるの。私も行きたい!」

「うんうん私も行きたい!」

「それが柊にフラれちゃって」


 2人がジロっと柊木の方を向いた。


「今日は入学式だし家族と過ごすから無理だ」

「じゃあ今日じゃなくてもいいから今度一緒にご飯食べようよ!」

「いいね。私企画するから2人とも来てくれるよね!」

「えっ...いや....」

「おっけー。2人とも行くわ!!」

「やったー!じゃあ後で連絡するから2人ともRINE教えて貰っていい?」


 柊は西条を睨むが西条によって小沢さんと海老沼さんと食事に行くことになってしまった。4人はそれぞれのRINEを交換した。


「それじゃまた連絡するねー」

「またねー」


 と2人は離れていった。


「なんて面倒くさいことするんだよ」

「柊だって理由の一端だよ」

「そんなことない」


 事実西条だけでなく柊もイケメンである。身長は西条に劣るものの平均以上はあり、そんな2人が話ていたので小沢さん達は声をかけたのである。

 柊の自意識の低さから西条はこのままではらちが開かないと思い形勢逆転することにした。


「いやいやあるから。あとおまえ俺を犠牲にして逃げようとしたろ」

「....なんのことかな」

「言い逃れはできないぞー」

「気のせいだと思います」

「目が泳いでるぞー」


 西条は入学式が始まるまで柊をいじり続けた。


 入学式が始まって校長のありがたいお話しなどがあり、特にこれと言ったことが無いものだと思われた。

 次に新入生代表の挨拶になると


「新入生代表、1年2組 西条 悠人」

「はい」


 そう言って西条は壇上にあがり、新入生代表の挨拶をしていた。その様子は何かのスピーチをしているように様になっており、イケメンは何しても映えるなと柊は思っていた。


 入学式が終わった後に柊は西条と会った。


「おまえ新入生代表だったんだね」

「おうよ!驚いたか?」

「素直に驚いたわ」

「にひひ。隠した甲斐あったぜ」

「ほんとは2位なのに親の力でとかじゃないのか...?笑」

「ちゃんと実力だわ!むしろ柊おまえ、俺よりバカってことが証明されたな」

「うざ、おまえ後で覚えてろよ」

「セリフに小物感でてるぞー」


 そんなふうにじゃれていると次第にクラスメイトの人たちが西条に群がり始めた。


「新入生代表ってすごいね!」

「西条くんって頭もいいんだね!」

「代表挨拶かっこよかったよ!」


 と次々と言われていたので先程の仕返しとばかりに柊は西条を見捨てて両親の元に移動した。その様子に西条は「裏切り者...」と呟いて周りの人に囲まれるのであった。










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