願い事ひとつだけ

勝利だギューちゃん

第1話

今、眼の前に魔法使いが現れたら、私は何を願うだろう?


素敵な彼?

魔法の力に頼るのは空しい・・・


やはり、お金か何かの才能になるのか・・・


でも、魔法使いなんて、存在しない。

何を願っても、机上の空論なのだ。


でも、試してみたいお年頃。


私は、郵便ハガキに魔法陣を書いてみた。

何とか、さまにはなった。


呪文を唱えて見る。


「エロイム・・・これは悪魔か・・・まっいいや、魔女出てこい」


なーんてね。


すると、ハガキから白い煙が出てきた。

そして、得体のしれない生物が現れた。


「私を呼んだのは、あなた」

何やら、呟いている。


「私を呼んだのは、あなた?」

私に話しかけているようだ。


「そうだけど、あなたは魔女?」

「うん。魔法使い」

「随分と小さいね」

「あなたが、魔法陣を小さく描くからでしょ!」


わたしのせい?


「まあ、いいわ。私はメフィ。あなたは?」

「私は、JKの松谷真奈美。」

「JK?」

「女子高生」

「最近は、そういうんだ」


最近って・・・

前にも来たことあるのか・・・メフィと名乗る魔女。


「メフィはいくつ?」

「女性に歳を訊くな」

「女同士だから、いいでしょ?」

「あっ、それもそうね。私は2万歳」

「2万歳?」

「人間で言えば、20歳かな・・・」


犬の12歳は、人間の80歳くらいだが、そんな感じか・・・


「そういえば、前に来た時の子は、美奈子って言ってたわ」

「それは、いつごろ?」

「30年前」


私は、影も形もない・・・


えっ、美奈子?

まさかね・・・


「で、願い事は何?」

「わたしの?」

「他に誰がいる?ひとつだけ叶えてあげる」


私は即答した。


「叶える数を増やしてほしい」

「ルール違反」

「やっぱり?」


そんなに、上手くいかないか・・・


「ねえ。メフィ」

「何?真奈美」

「前の美奈子って子は、何て願ったの?」

「私の好きな人が、幸せになりますように」


私は、眼が点になった。


「それだけ?」

「うん。それだけ」

「その願いは、叶えてあげたの?」

「うん。叶えてあげたよ。ただその本人は、気付いていないけどね」


確かに、自分ではわからない。

魔法の力で幸せになれたと知ったら、あまりいい気はしないだろう。


「じゃあ、私もそれでいいわ」

「何を?真奈美」

「『私の好きな人が幸せになりますように』それが、私の願い」


メフィは、考えているようだ・・・

無理なのか?


「OK.その願い叶えてあげる」

「いいの?」

「もちろん。私は魔女よ」

「じゃあ、私の好きな人は・・・」

「言わなくてもわかるわ」

「本当に?」


メフィは頷く。


「但し少し、時間がかかるよ。いい?」

「それはいいけど・・・彼には内密に」

「もちろん・・・やはり、母子だね」


私が答える間もなく、メフィは消えた。


母子?

どういうことだろう?


私のお母さんの事?

お母さんの名前は、美奈子・・・


・・・ということは?


ガチャ


お父さんとお母さんが帰ってきた。

とても、夫婦仲はいい。


よく、ふたりで出かけている。


お母さんが、着替えている間に、私はお父さんに尋ねた。


「お父さん、今、幸せ?」


お父さんは即答した。


≪もちろんだ!≫


お父さんの笑顔に、それがウソ出ない事がわかった。

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願い事ひとつだけ 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu

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