第5話生徒会執行部

新キャラ


今回登場するのは新キャラである。

今まで出てきたのは、姫織と龍彦の二人だけだったのであるが。

もう一度言おう、

「「「新キャラである!!」」」



 生徒会執行部!!


 私立聖上卿学園では、中等部と高等部で一つの生徒会を担っており、姫織と龍彦も所属している。

 高等部が会長、中等部が副会長を務め姫織はその副会長を任されている。

 つまり、生徒会という場は姫織が唯一兄と学校内で触れ合うことができる場所なのである!!

 そんな、姫織にとって大チャンスの場である生徒会室で、


「ギリッ!!」


 姫織は屈辱を味わっていた!!


 ★


 時間は少し遡り、姫織は週に二回しかない、生徒会室での会議に向かっていた。


「ふふ、休み明けから初で、久しぶりの生徒会での集まり。会長と兄さんと私は去年も生徒会として活動していたけど、今日から新しいメンバーに変わるんですよね」


 ここ、私立聖上卿学園では高等部で会長、中等部で副会長を選挙で選出し、それ以外の役職は会長と副会長がそれぞれ選ぶのである。


 姫織は、口元を手で隠しながら笑みを浮かべた。


「去年は私も初めてで大変でしたが、今年はこの生徒会の集まりをうまく使い、兄さんを籠絡してみせましょう」


 姫織の不吉な笑い声は廊下にいた誰の耳にも届くことはなかった。



 ★



 一方、その頃生徒会室では、


「はい、これゲンの分お茶ね」

「おっ、ありがとう。いつも悪いな」


 まだ、外はまだ肌寒いことを知ってか、温かいお茶を入れてくれたようだ。

 やっぱり、俺の幼馴染は最高だな。


 俺の幼馴染である、琴花夏美ことはななつみは幼稚園かそれ以前からの付き合いで、小中高と常に同じ学校に通っている。

 家は、少しだけ離れているから一緒に登校なんかはしてないが、いざとなったら頼りになる俺の自慢の幼馴染だ。


 夏美は、俺の隣にポスッと音を立てソファーに座る。。

 その時フローラルな、なんとも言えない良い香りが俺の鼻の前を通り過ぎた。そうして、俺の肩にもたれかかってくる。

 夏美のスキンシップはものすごく近いのだが、俺はなるべく断らないことにしている。以前に、やんわりと教えてあげただけなのに、まるでこの世の終わりのような表情をしたまま動かなくなったことがあるからだ。まあ、もちろんその後元に戻ったんだが......

 夏美の間に何があったのかは今でも疑問だ。

 俺が一人思い出に浸っていると夏美が上目遣いでこっちを見てきた。


「今年から、生徒会でもよろしくね」

「ああ、会長にも感謝しないとな」


 今年の生徒会から、新メンバーとして夏美が加入したのには理由があって、俺の親戚であり、この学校の会長をも務める胡鳥白こちょうしろ会長ことシロ姉のおかげだ。

 清廉潔白、誰に対しても愛想がよく、笑顔で困っている人に手を差し伸べる女神。そう思っているやつが大半だろうが、本性は、暇さえあればイタズラしたり俺を冷やかしたりしたりと、本当はめちゃくちゃ子供っぽい人ということを、生徒会として一緒に活動していた人達しか知らない。ちなみに、学校では会長、それ以外ではシロ姉と呼んでいる。

 今はまだ来てないが、そのうちきっと来るだろう。

 っと、そう言えば、


「そう言えば夏美、会長が来る前に書いてもらわなきゃいけない書類があったんだった」

「うん、分かった」


 俺と夏美は同時に立ち上がり、書類がまとめられている棚に向かう。

 しかし、


「やっべえ、生徒会が変わるのが一年に一回しかないからって、棚の一番上にあるんだった。」

「それじゃあどうしよっか?」


 椅子でも持って来るか。なんて俺が思っている間に。夏美のやつ、椅子を準備してやがる。さすが俺の幼馴染は凄いな。

 そして、自ら椅子に登り棚に手をかける。


「どこにその書類があるの?」

「たしか、奥の緑のファイルの中に......」

「これか!」


 おいおい、あんま無茶すると、足を踏み外して......


「きゃっ!!」


 夏美は見事に足を滑らせ、後ろ向きに倒れてきた。


「危っぶない!!」


 俺は無我夢中に手を伸ばし、なんとか受け止めることができた。

 だが、俺はその衝撃で思いっきり頭をぶつけてしまった。


「痛たぁ......、夏美は無事か?」

「う、うん」


 俺が仰向けになり、目を開けると、


「「あっ」」


 夏美と目があった。俺たちの顔はもう数センチの距離で、どちらがが少しでも動くと唇が触れ合いそうで。

 俺たちはお互いに目をそらした。

 もし、こんな姿を誰かに見られたらたまったもんじゃないな。


「ギリッ!!」


 目があった。こっちを冷めた目で見下ろす妹と目があった。その目線は、犯行現場を押さえた強面の警官のようで、自分のテリトリーを主張するヤクザのようで。


「えっと......」


 俺は固まるしかなかった。

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