第2話お風呂
ここで、彼女の説明をしておこう。
黒いダイアモンドを思わせるかのような長い黒髪をたなびかせ、アーモンドのようなくりっとした双眸は小動物を想起させる。
勉学においては、学年10番以内をキープ、運動においても、各部活から助っ人を頼まれるほどの運動神経を持ち、コミュニケーション能力に長けているクラスの人気者、素行は極めてよく、先生からの信頼も厚い、スーパー優等生である。
そして何より、現中等部生徒会長から、指名で選ばれ、副会長を務めるほどの信頼を持っているのである。
これが、外から見た時の評価で、実際は、計算高く、時にはクラスメートをもだしに使う、小悪魔系美少女。
などと自分では思っているが、実際は、天然な所があったり、なにより、人を絶対に裏切れない優しい性格でクラスでもそのキャラでみんなに愛されているのである。
と、ここまでで説明はいったん終わりにし、お話に戻ろう。
★☆
お風呂。
それは、兄妹がいる家庭では、絶対に避けては通れない道である。
男兄弟なら全く気にならないのであろうが、源家の家族構成は、姫織と龍彦の二人。
さらに、両親はどちらも遠くに出張に行くことが多く、家にいる時間は極端に短く、不規則。
当然、現在家には二人だけしかいない。
なら必然的に、今日この家で入浴をするのもこの二人だけ。
もちろん、姫織もこの状況を利用しない手はない。
姫織は、今日もまた兄をドギマギさせるシミュレーションを考えていた。
<<脳内シミュレーション>>
いつもは、兄さんが先に入るのに、今回はこっそり私が先に入ることにした。
それに気づいた兄さんは、驚きを隠せない様子で、こっちを凝視する。
すかさず私は、兄さんに甘い声で、兄さんを悩殺しにかかる。
『もう兄さんのエッチ♡妹のお湯で興奮するなんて♡』
『そ、そんなわけないだろ』
兄さんは顔を赤くして、たじろいでしまう。
ああ、なんてかわいい兄さん♡なんてね。
そんな真っ赤な顔の兄さんに、私は一歩近づき、さらに言葉を紡ぐ。
『もしかして....兄さん私とお風呂に入りたいんですか......?』
『そ、それは......』
『いいよ......兄さんなら』
そういって、兄さんは私の手を取り........
<<完了>>
「これですよ、これ!!この作戦なら、兄さんをドギマギさせるだけではなく、兄さんの弱みも握ることができます!!」
今回もまた、姫織は自分の脳内シミュレーションの出来の良さに自分で自分をほめたたえた。
すぐさまこの作戦に取り掛かろうと、兄が自分の部屋にいることを確認してから、こっそりお風呂に向かう。
衣服を一枚一枚脱いでいき、すぐに全裸の状態になる。
体をきれいに洗い、湯船に、つま先から慎重に浸けていき、何とか肩まで浸かった。
しかし、姫織はここからがかなりの難所であることを察知していた。
それは......
姫織が、長風呂が出来ないという点である。
長風呂が出来なければ、自分が使ったお湯としての効果や反応が薄れる。
しかし、姫織にとって、長時間浸かることはあまりにも苦である。
自分との戦いに、激しく苦戦する姫織。
だがここで、
あと一分、あと一分と、自分を鼓舞している最中にふと、頭にある光景が浮かんできた。
それは、兄である龍彦が自分の使ったお湯につかっている姿である。
それを想像した瞬間、姫織の体温が瞬く間に上昇。
さらに、頭に一気に血が上る感覚がして。
気が付けば意識がもうろうと......
★☆
「おい!!大丈夫か!!」
姫織が目を覚ますと、目の前には、兄である龍彦の顔があった。
おそらく、のぼせてしまった自分をお風呂から救出してくれたのだろうということをなんとなく理解すると、自分が衣服を何も身にまとってないことに気が付いた。
そう、何も身にまとっていないことに
その瞬間、姫織は申し訳程度にかけられていたバスタオルを自分の体に引き寄せた。
「きゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
当たりに姫織の姫織の甲高い悲鳴が家じゅうどころか、ご近所一帯にとどろいた。
なお、兄にどのようにお風呂から救出してもらったのかはあまりにも恥ずかしくて尋ねることが出来なかったそうだ。
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