第30話 授業の発表へ 応用編:発表シナリオ:視覚支援

 そこへ弓子さんが、

「でこぼこの形は、2つや3つの長方形に分けて計算し、最後にそれを足した。」

と言った。

頷いている子も何人かいる。

俺は、何の事かよくわからず、目の間に皴を作り、口をへの字に曲げていた。

すると、先生が、

「思い出した子はイメージできた。

でも、思い出していない子は、言葉からイメージできない。

弓子さん、どうしたらいい?」

と問いかけた。

弓子さんは、ちょっと考え、自信無さげに

「図を描く?」

と応えた。

先生は、

「そうだね。

見てわかるように、図を描いてあげるといいね。

弓子さん、やってみて。」

と言った。

弓子さんは、真ん中が凸な図を描いた後、

「長方形の真ん中が凸と高くなっている図形があります。

これは、真ん中の凸っと高くなった所を無視して線を伸ばすと、下の長方形と上の長方形になります。」

そう言いながら、元の辺の線を伸ばした。

「このように、いくつかの長方形に分ければ面積が求められます。」

と言った。

図を見ながらそう言うことか、俺もやったなあと思い出した。

同じように、ああそうかあという顔をしている子が何人かいた。

みんなの晴れやかな顔を見て先生が、

「前の勉強を忘れている子がいたら、どんな図を描いたり、言葉を出したりするか準備しておく。

それは、友達のためでもあるけど、自分の考えをしっかりするためにもなる。

既習事項をどう使うかが、学習の基本だからね。」

と言った。

加えて、図や図への線などを指さしながら

「言葉だけでなく、図のように観てわかるものがあると、聴き手の理解は進むね。」

と自己紹介の時に使った技術を使えばいいことを具体的に教えてくれた。

でも、自分でやれと言われたら、まだ、動けない気がした。

また、先生が例えばを作ってくれればいいのになあと思ったその時、

「今回は、先生が最初に作りません。

まず、みんなに作ってもらいます。

それを一緒に修正していきます。

とりあえずやってみて、その中で、発表シナリオの書き方を身に着けてもらおうと思っています。」

と言った。

そんな、難しいよ、俺書けないよと思ったけど、この流れはかわらないだろうなあとも思った。

だって、松下先生だもん。

決めたこと、やり通すもん、と思った。


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