第26話 サッカーでの成長

 週末は、サッカーの練習とゲームがあった。

中盤の俺の一番の見せ場は、FWへのスルーパスだ。

ボールを長く持てば、ディフェンスが寄せてくる。

FWのマーカーも厳しくなる。

だから、ワンタッチやツータッチでパスができると、成功の確率は高くなる。

でも、状況把握がうまくいかず、「状況判断しっかりしろ。」と言われ、周りを見ても今まではうまくいかなかった。

どうしたらいいんだろうと悩んでいた時、100マス九九の分習法を思い出した。

100マス九九で分習法があるなら、今、悩んでいることも分習法が使えないかなあと思った。

それには、スルーパスを出す場面を分解する必要がある。

家に帰って、スルーパスを出す流れを紙に書きながら考えた。

何度も書き直し、次のような順番にした。

① 自分の所にパスが来るタイミングを感じる。

② 自分のマーカーの位置とプレスのかけ方を見る。

③ パスが出せる見方を探す。

④ ワンタッチで出すか、複数タッチで出すか決める。

⑤ ボールによりながら、フェイントを入れ、パスやトラップの準備をする。

⑥ ワンタッチか、ツータッチでパスを出す。


次に、そのことが分かっていたか、考えてみた。

わかっていなければ、できるわけがないからだ。

❶流れの中で来るのがわかる。見方がこちらを向くのでわかる。自分で呼ぶときもある。

 これだけ書ければ、できていると言えるかな?

❷これは、あまり意識していなかった。

自分のマーカーと近くの敵を意識する。

 そうすれば、できるようになるだろう。

 やれたか自分でも確認するために、「右」とか「後ろ」など、相手の位置を言う。

 言えたらできていたことになる。

❸これは、今までも意識していた。

 CFか右のライン沿いを走る見方にパスをしている。

 両方ダメな時は、横パスを出し、次の動きに入っている。

 できているとしよう。

❹今までは、もらってから見ることもあり、複数タッチが多かった。

 ディフェンスも詰めてくるので、慌ててパスを出すことが多かった。

 もし、ワンタッチで出せたら、自分へのマークが緩くなり、良いパスが出せるかも。

そうすれば、FWのシュートチャンスは増えるかもしれない。

 難しいけど、挑戦する価値は、ある。

 いや、挑戦しないといけない。

❺もらう前のフェイントは、入れていない。

 そんな余裕はなかった。

 でも、やっている子はいる。

自分がマークに行く時に、フェイントを入れられると、マークしづらかった。

だから、ボールをもらう前のフェイントは、効果があると思う。

タイミングが難しいと思うけど、意識して挑戦していく。


 これを短い時間の中でやらなければならない。

・ボールを持っている子を見てパスをもらうタイミングをみる。・・・「いち」

・マーカーの位置を確認し、パスのタイミングとコースを決める。・・「に」

この判断が一番大事。

この状況把握とよりよい方法の選択ができていないから、注意を受けるんだろう。

・フェイントを入れてのプレー。・・・「さん」


 ノートを見ながら、椅子に座り、「いち」と言いながら左を見る。

「に」と言いながら右を見る。

「さん」と言いながら、パスを受けながらフェイントを入れ、その反動を使ってワンタッチでスルーパスを出すイメージトレーニングをやった。

何回かやったら、頭の中ではできるようになった。

椅子から立ち上がり、体を動かしながらやってみた。

体を動かしながらやるのは難かった。

でも、ノートに書いてみることで、スルーパスを出すために必要なことが、たまたま成功するのではなく、自分の工夫で成功させることが出来るかもしれないと思えた。


翌日の試合で、何回か試みた。

ほとんどうまくいかなかったが、一回大きなチャンスを作った。

試合が終わると、うまくいった場面を「修平、あのスルーパス。あの感覚。忘れるなよ。」とコーチが言った。

俺は、また注意されるのかと思っていたから、拍子抜けした。

一回だったけど、できたことをコーチが認めてくれた。

昨日、分習するために、プレーを分解し、ノートに書いて考えたから試すことができた。

自分で考え試したことを褒められ嬉しかった。

自分でも、「俺、頑張ったジャン。」と自分に言った。


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